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トップインタビューエル・カブキ - 『藝人春秋』に救われたふたりが語る漫才とお笑い!「今のエル・カブキはウケていると言っても過言ではない」

『藝人春秋』に救われたふたりが語る漫才とお笑い!「今のエル・カブキはウケていると言っても過言ではない」

2021.06.26

漫才をやめることが漫才だと思った

──コロナ禍で芸人仕事にはどんな影響が出ていますか?

上田:営業メインで食っている人は大変って聞きますね。アマレス兄弟さんが大変みたいです。

林:名前を出すなよー! でもたしかに収録が飛んだって言ってたな。

──あははは(笑)、具体的!

上田:僕らは営業もテレビもないから、正直に言うと影響なしですね。ただ「アサヤン」に出てから、お笑いのライブや漫才を毎日やるのはやめなきゃいけないなって思ってたんですよ。だからコロナを機に、今だ! って思って。無理してネタを作ってまで出ることは一回ちょっとやめてみようと思って、ライブには出ないようにしています。

林:毎日毎日同じネタをやり続けて、多い日は1日2回やったりしているとよくわからなくなってきちゃうんですよ。正直、僕は漫才に対するやる気のない態度を出していたんだと思いますよ。

上田:僕も違うことしなきゃいけないって思ってはいたんですけど、それまでは違うことをしながら漫才も続けようとしていたんですよ。でも実際は難しくて。もちろんそれができる人もいると思うけど。

──今はやりたいと思ったらロフトですぐになんでもできますからね。今後、プラスアルファでやりたいことはありますか。

上田:お笑いや人前に出る仕事で飯を食いたいですね。まだバイトをしているんで……。「アサヤン」に出て、ゲストの方に話しを聞いて補佐をするっていうことをやりはじめたら、漫才をやるよりもこっちのほうが断然お笑いだなって思うようになったんです。お笑いファンの方のなかには、様式美みたいなものを求めてくる人もいるんですよ。それを正式に極めていくと人気が出るお笑いシーンだったら気持ち悪いなって思ってしまっていて。こっちからしたら1日になんども同じネタをして新作を作って、っていうことを毎日繰り返していたら解散するしかないじゃん! って思ってしまうんですよね。だってお笑い自体が進化していかなきゃいけないのに。

──「アサヤン」は下調べと瞬発力ですからね。それで漫才が鍛えられた部分もありますか。

上田:漫才は完全に変わりましたね。もともとエル・カブキはめっちゃ調べて形を決めていく漫才だったんですけど、テレビに出るようになってからそれはやめてたんですよ。でも今、あのときにやっていたことは間違えてなかったんだなと思ってます。だから、『藝人春秋』で救われて、『藝人春秋』を書いた人に漫才を肯定されて救われた…みたいな。本人には伝えてないですけど。

林:同じ時事ネタでも、ひとりの人物を徹底的に掘り下げるような感じになったよね。

上田:柴田勝頼が新日本プロレスをやめるときに、「辞めることが俺の新日本プロレス」って言ったんですけど、そんな感じです!

林:わかんねえよ(笑)!

上田:漫才をやめることが漫才だと思ったんだよ!

──「アサヤン」に出てゲストと対話をして、予定調和じゃないことへの面白さっていうのもあったんでしょうか。

上田:そういうのはありますね。漫才をやっていると、結局はエル・カブキを知っている人たちが多少いるっていうところから抜け出せなかったんです。だから、自分たちを全然知らない人ばかりの「アサヤン」に出てみたら、ボケるのがめっちゃこわくて! 前田さんのときは一切ボケなかったんですよ。でもしみけんさんがゲストの回には漫才をやらせてもらって、「知らないお客さんの前でやるのはこんな感じだったな!」って思い出しました。それはすごく楽しいことですよね。

林:感覚的には人間っぽくなった気がします。同じセリフを言っていても、表情とか言い方とか。

──時代の流れとうまくタイミングがあっている感じがしますよね。

上田:新ネタをやっていなくてはだめだ、っていう風潮もありますけど。毎月1個新ネタを作らないといけないっていうサラリーマン発想って、明らかにアーティストと真逆だし。10年前に作ったネタが今ウケたりしても、そんな昔のネタやってちゃだめだよとか怒る人がいるんですよ。そういうところへの疑問はすごくあったんですよ。1年に1本すごいものを作る人だっているのに。でも、今はまわりのことはどうでもいいんです。全部「アサヤン」のおかげですよ、あれに出てからまわりを気にしなくなった。

林:客席から見ていても喋りがうまくなってるなーって思ってますよ。このままいったらすごいことになりますよ。

上田:でもこの前、久しぶりにふたりで漫才を撮ったらこいつはめちゃくちゃ下手になってました。

林:みんなから「どうしたんだおまえ?!」って(笑)。最近なんて、飲んでないのに酔っ払ってる? って聞かれますからね。

上田:まぁ、ふたりともうまくなっても面白くないから。

──いろいろスタイルを変えた結果、原点でやってきたことが肯定されるのは強いですね。単独ライブは現状の落とし所としてのエル・カブキっていう気しますね。

上田:あ、はい。

林:うん…。

──え、そうでもないですか(笑)?!

上田林:あははは(笑)。

上田:なんだろうな、単独ライブは、「ああ、ちゃんと何年も芸人続けてるんだな」って感じになると思います。

林:はぁ、お上手ね、みたいな。

──あらー、長くやってはるな、って(笑)。

上田:どのくらい伝わるかわからないですけど、内面的なところは違うんですよ。昔と同じことをやってるのに、今はすごいウケます。

──一回やめたことだけどそれが間違っていなかったという確信があるんじゃないですかね。

上田:それはあるかもしれないですね! インディーズ芸人で誰が無法松さんの隣で喋ったことあるか? って。おまえらミニスカ履いてこいよって。

林:段階をひとつずつ踏んできたからかなぁ。ひとりを掘り下げていたときは感情を出さないで無機質にやっていたけれど、そこから時事ネタになって、さらにフリー漫才になって……。今はチョイ決めとフリーの間でやっている感じですね。ポジションは変わらないけど戦術は変わっているのかなって思います。

──今はとにかくウケる自信がある、と。

上田:いやウケてます。ウケていると言っても過言ではないです。

林:2回目はもうダメだよ(笑)。

 

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