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トップインタビューエル・カブキ - 『藝人春秋』に救われたふたりが語る漫才とお笑い!「今のエル・カブキはウケていると言っても過言ではない」

『藝人春秋』に救われたふたりが語る漫才とお笑い!「今のエル・カブキはウケていると言っても過言ではない」

2021.06.26

 いや誰がわかるんだよ!
 時事ネタ漫才をYouTubeにUPし続けている芸人がいる。毎日。毎日!? そう、毎日、だ。
 過激な風刺と、豊富な知識に基づいた精密な例え芸、「いや誰がわかるんだよ!」というセルフツッコミの通り、見る側にもリテラシーと知識を要求する一本気なスタイル。本人が喜ぶとは思えないが、ここであえて"いかにもロフト的"と言わせていただきたい芸風のこのコンビは、ここ数ヶ月、店をまたいでロフト系列に異常な頻度で出演しているのだ。
 阿佐ヶ谷ロフトAにおいては、浅草キッド・水道橋博士が立ち上げたシリーズイベント「ASAYAN」で膨大な下調べに基づいた的確な"ガヤ"として存在感を発揮しており、LOFT9 Shibuyaではエル・上田が柔術歴12年(白帯)、田村潔司信者という若干偏った格闘技知識をベースに始まった格闘技イベントを皮切りに、さまざまなジャンルのイベントで司会を務めている。
 ロフトがきっかけで売れた芸人というのがどれだけいるのかは定かではないが、ぼんやりとしたブレイクの兆しが、徐々にくっきりしつつある『今』を、本人たちはどう捉えているのかを聞いた。(interview:齋藤航 [阿佐ヶ谷ロフトA店長] )

『藝人春秋』に救われたふたり

──エル・カブキのおふたりは、Rooftopへは2018年6月インタビュー以来のご登場です。最近はロフトプロジェクトの各店舗に出まくっていますよね。阿佐ヶ谷ロフトでは水道橋博士の「阿佐ヶ谷ヤング洋品店(以下、アサヤン)」に出演されていますが、きっかけはなんだったんですか。

上田:2017年の年末にたけしさんの特番に出たんですけど、水道橋博士の運転手をしているマッハスピード豪速球のガン太ってやつが一緒に出演していたんですよ。ほんとうは軍団さんに挨拶をするのは禁止されてたんですけど、ガン太は僕が博士のことを大好きだと知っていたんで、挨拶に行かせてくれたんです。そしたら、博士がエゴサをしすぎていて、よく博士のことをツイートしていた俺のことを知ってたっていう(笑)。それで、「"マセキ芸能社の浅草キッド"って言ってる人でしょ? どんどん言って!」って言われたんです。そのあと、僕らが始めたYouTube「10分おろし」のヘビーリスナーでいてくださって。YouTubeは3年半毎日投稿をして、登録者1900人までいきました。

林:キタよねー。1年で600人ずつ増えたからね!

上田:そんな増え方はエル・カブキかひろゆきかって感じです。

──そもそも博士のことを知ったのはいつだったんですか。

上田:これは相方がきっかけなんです。まず、僕と相方は爆笑問題が好きっていうところで意気投合しているんですね。僕は東京NSC8期生なんですけど、8期生ってM1グランプリ2001が終わった次の年の募集だったのでめちゃくちゃ人数が多くて、同期が1000人くらいいるんです。だけどそこでも、「爆笑さんがいちばん好き」っていう人はいなかったんですよ。そんななかでバイト先の人が、「芸人を目指している人がいるんだけど」って林を紹介してくれて、「どういうお笑いをやりたいんですか?」って聞いたら、「爆笑の太田さんみたいな子どもっぽいボケをやりたい」って(笑)。爆笑さんの名前を最初に出した人は初めてだったんです。

──しかも爆笑問題の風刺的な方面じゃなくて、太田さんの子どもっぽいところを(笑)。

林:はちゃめちゃなものが好きなので(笑)。たけしさんも好きだったんですけど、たけしさんが田中康夫さんの首を絞めあげるっていうのが好きです。

──スラップスティックなお笑いですよね。

上田:スタンダップコメディみたいなものが好きなんですよね。たぶん彼は、ほんとうは政権批判とかやりたいと思うんですけど。

林:ちがうよ、そうじゃないよ!

上田:でも僕も錦鯉の隆さんに、「おまえは全社会に中指を立てて行け」って言われてるんで。

──先輩にそれを言われたら呪いにもなりますよね。

上田:だからそのうち『中指タイタニック』っていう映画を撮ろうと思って。

林:『親指タイタニック』ならぬ『中指タイタニック』ね(笑)。

上田:そんな流れでコンビを組みました。2012年に水道橋博士が『藝人春秋』っていう本を出されたんですけど、相方が、「この本、良いから読みなよ」って頼んでもないのに持ってきて。いや、そんなのめずらしいことだったんですよ!

林:普段、本はぜんぜん買わないのに魔がさしたのか買っちゃったんですよ(笑)。ただ表紙がカッコいいなと思って読んだら……まぁ名著で!

上田:博士って、芸人っていうよりもライターの人だったんだ! って感動しちゃったんです。エル・カブキって、初期のころはひとりの芸能人を掘り下げるっていうネタを作ってたんですよ。これがどこにいってもウケて、マセキ芸能社にもいい感じに入れたんです。売れた! って思いましたね。でも芸能人の情報につっこんでるだけなので、「それってボケてないよね」「誰でもいいよね」とか言われることもあって。それでちょっと悩んでいたんですけど、『藝人春秋』って博士があまり出てこないし、対象をすごく覚めた目で見ていて、これがありなのか! って驚きました。

──分析芸人としてということですよね。

上田:そうですね。こういう形で成立させている人がいるのか! って驚きました。

林:僕はほんとうは分析型ではなくて直感型なので、正反対だからこそ『藝人春秋』に惹かれたのもあると思いますね。

上田:『藝人春秋』を読んでなかったら漫才を辞めてたかもしれない。だいぶ救われましたね。浅草キッドさんのことはもちろん知っていましたし、格闘技が好きだからテレビでもよく見ていましたけど、特別すごく好きっていうわけではなかったんですよ。だけどこの本でびっくりして。

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