作詞作曲編曲からMV制作まで、そのすべてを自己プロデュースで活動するスーパー15歳・足浮梨ナコ。POPでポジティブな印象をうける彼女だが、自作のドキュメンタリーで「実は人見知り」と吐露し、新曲では虹色をバックに「万人受けじゃない世界」と歌う。
世界の閉塞感や、息苦しい空気感をぶちやぶるようなパワーはどこから生まれるのか。「人見知りの足浮さん」から「アイドル:足浮梨ナコ」になるまでをじっくりお聞きしました。[interview:成宮アイコ]
好きなアイドルが引退しちゃって悲しくて、「じゃあ自分がアイドルになろ」って思った
──YouTubeにアップされている「俺、一生少年説」は本当に名曲でした。いま、足浮さんのことが気になっている人はとても多いのではと思います。
足浮:うれしい!ありがとうございます!
──足浮さんの活動のきっかけを教えてください。
足浮:もともとはグループのアイドルをやりたかったんです。でもよく考えたら、グループに入るよりも、自分の着たい衣装を着てやりたい曲をやったほうが楽しそう!って思ったんです。「ガレージバンド」というソフトがあれば曲が作れるっていうのを知ったので、じゃあやってみよ〜!って思ったら曲が作れました(笑)。
──やってみよ〜! で曲が作れちゃうのは才能とタイミングがぴったりだったんですね。理想のアイドルさんはいたんですか?
足浮:モーニング娘。さんがずっと好きなんです。主にハロー!プロジェクトさんが好きです!
──ちなみに”推し”はどなたですか?
足浮:今だと、小田さくらちゃんと佐藤優樹ちゃんが好きです。
──まーさく!歌が上手なペア!
足浮:そう!歌が上手なペア!!! 好きです!
──足浮さんはそこに負けない個性がありますが、実際、ハローに応募はしなかったんですか?
足浮:15期に応募したんです。オーディションを受けたのはそれが最後かな。育成所にも入ったんですけど、そこでいろんな子を見ていたら、自己プロデュースをしている子がたくさんいて、グループでやるのも楽しそうだけどひとりでやったほうが自由にできそうって思って、曲を作ったら以外とできちゃって、「やったできちゃった〜!」ってそこから3ヶ月くらいはずっと作り続けました。ライブをしたことはなかったんですけど、南波一海さんの「アイドル三十六房」に突然メールを送ったんです。
──ライブもまだしていない時期にすごい行動力!
足浮:だから10円玉で決めたんですよ(笑)。表だったら送る、裏だったら送らないって。そしたら表だったので送りました。
──10円玉に託したのは緊張や不安もあったからですか?
足浮:それもあったのかもしれないです、だから、もう10円玉で決めちゃお〜って思って。
──アイドルになりたかったのに、突然、楽曲制作に目覚めて。その3ヶ月の間にどのくらいのストックがあったんですか?
足浮:10曲くらいは作っていて、「俺、一生少年説」もそのときに作りました。見た目がかっこいいからギターをはじめたんですけど、今もコード6個くらいしかわからないです。でも、弾いているうちに、弾き語りできそうじゃない?って思ったんです。わたし、アイドルオタクのおじさんがすごく好きだから、じゃあおじさんの歌を作ろう! って。
──そこが面白いですよね(笑)。なぜおじさん側に共感しちゃったんでしょうか。
足浮:もう活動していないんですけど、めっちゃ好きなアイドルさんがいたんですよ。もうその方が大好きすぎて、ああ、おじさんもたぶんこういう気持ちでアイドルを応援しているんだろうなって急に思ったんです。アイドルって不思議で、いろんな形があるけど同じ目標があるっていうか。
──アイドルって、音楽のジャンルも違えば、ライブのやり方や、キャラクターの作りこみ具合とか、みんながバラバラなことをしているけれど同じ「アイドル」というテーマは共通していますよね。
足浮:そう、同じテーマがあるんです! ジャンルが違うのにちゃんと同じ! そんなアイドルによっておじさんが笑顔にされているのが好きなんです。
──その関係性、たしかに美しいですよね。そういったお話しを聞いていると、足浮さんってアイドルになりたい人ではあるけど、アイドルグループのプロデューサーさんぽくもあるなって思いました。
足浮:そうそう、そうなんです! 自分もなりたいけど、見ていたいし、そのライブの雰囲気を作りたい!
──アイドルに救われた人が、自分もアイドルになって救う側になりたいって思うのはかっこいいですね。
足浮:ありがとうございます。自分の好きなアイドルが卒業したときに、めっちゃ悲しくて、「もうやだ〜!」ってなったんですけど、その1時間後くらいに、「じゃあ自分がアイドルになろ」って思ったんです。それがはじまり。だから自分は音楽をずっとやっていたいし、残していきたい。
──アイドルって存在自体だから、オケで歌ってもいいし弾き語りをしてもいいしなんでもできますもんね。
足浮:それがアイドルの好きなところです! なにをしてもみんな全部アイドル! それが好き。
──さっきハロー!プロジェクトさんが好きっておっしゃってましたが、つんく♂さんの洗礼を受けたから世代を限定しない歌詞の引き出しが多いのかなとも思いました。
足浮:つんく♂さんの逆バージョンみたいな(笑)!つんく♂さんは心の中の少女を歌うから、わたしはおじさんを歌ってる感じです。
──自分の中のおじさんは足浮梨ナコには救われていますか?
足浮:救われてると思います! ……わたしは前世でおじさんだったのかもしれない。