この生きづらい世界を怒らずに明るく歌ってやる!
──新曲の「RTON FLOWER」は、「俺、一生少年説」の日常風景とはまた違って、とても開けた印象を受けました。「LOVEの形はまさにレインボー」「レインボーなコミュニティをもっともっと」とか「これは現実みんなで向き合え考えろ」とか、世界の閉塞感とか空気感をぶちやぶるようなパワーがある曲ですよね。
足浮:ふふふ(笑)。最近はコロナで社会が大変っていうのもあるけど、もともと社会問題のことを考えるのが好きで、最近はジェンダー関連の本をたくさん読んだんです。そういう本を読んで、いろんな世界を見たら、この生きづらい世界を怒らずに明るく歌ってやる!って思って作ったのが「RTON FLOWER」です!
──怒りを明るくってまさにアイドルだからできる強みだと思います。社会問題に関心をもったのはなにかきっかけがあったんですか?
足浮:『glee/グリー』っていうドラマが幼稚園から好きだったんですけど、15歳の今コロナの自粛期間で見返したら、「この人はこういうことで悩んでたんだ」とか、「これはこういう意味だったんだ」って気づくことがたくさんあったんです。もともと好きだったけど、こんなに素晴らしいドラマだったのか!と感動して、そこから海外ドラマの『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』を見て、世の中にはいろんな人がいておもしろいなって思いました。
──実際、中学校・高校で社会の閉塞感を感じることもありますか?
足浮:女の子はスカートっていうところから気になってきて、え、なんかちがくね?って思い始めちゃったんです。今は服装も髪型も自由な高校に入ったんですけど、これからの世界を変えられるのはうちらだぞ、諦めちゃダメだっていうノリです!
──自分は自由な学校に入れたからオッケー! で終わらないところが素敵ですね。
足浮:自分が楽しいとかヤダって思うのって、きっと他の人もそうだと思うから。みんなが弱いところをカバーしあって、おかしいところを指摘していって、楽しい世の中になってほしいんです。ちょっとずつ変えていけばカラフルな世界になるはずだから。
──怒りは怒りとしても伝えられるけれど、それでも自分はハッピーに笑顔に伝えるぞっていうのはなにかビジョンがあったんですか?
足浮:『RENT/レント』っていう映画のエンジェルが好きで、その話をミスiDでしたら「エンジェル賞」っていうのをもらっちゃったんです。だから、エンジェルになるしかねえ!って。
──名前がついたことでさらに自分自身にいい影響が戻ってきて。
足浮:名前ついちゃったし、賞ももらっちゃったし(笑)。わたしはりゅうちぇるさんみたいに優しく世界を変える人が好きだから、自分もそうなりたいです。
──常時エンジェルであり続けるのは疲れないですか?
足浮:そしたらそれも歌にしちゃいます、疲れた〜! って。
──すべてが楽曲の糧に! 弾き語りだけじゃなくて、「#全部ハブのせいだ」「Let’sダンゴムシ」のような打ち込み楽曲もありますよね。
足浮:ガレージバンドを使えば打ち込みもできるっていうのは知っていたので、遊びでポコポコ押してみたら「Let’sダンゴムシ」ができて、みんながめっちゃいいっていうから、これでいいの?! ってびっくりしました。これがアリなの?って思ったらどんどん曲ができちゃった!
──その引き出しの多さって、アイドル楽曲以外にもいろいろ影響を受けた人だからなのかなと思ったのですが、ふだんはどんな音楽を聴いているんですか?
足浮:最近はZoomgalsがすごく好きです! あと、女王蜂! わたしが楽譜がわからないから、ピコピコピコデンデンデンって思いついたらそのままその音を作ってるので、自分でもどんな曲になるのかわからないんです。自分の脳で思っていた曲と全然違う完成形になったりして、でもそれはそれでおもしろいからいいや〜って(笑)。
──未知数だとなんでもできちゃいますね。歌詞のストックはたくさんあるんですか?
足浮:たくさんあります! それを見て、これは弾き語りにしよう、とか、これは打ち込み用だなって決めてます。ギターだと結構いい曲になるんですけど、打ち込みはもうどうなるか全然わからない! アゲな感じを作ろうと思ったのにバラードになっちゃったりします。
──そういったポップアイコン的存在なのに、「万人受けじゃない世界」と歌い切るところがかっこいいですよね。たとえ皮肉の言葉だとしても、こんなにPOPな表現にできるんだな、と。
足浮:自分のことを受け入れられない場面があっても、「でも自分はめっちゃ最先端だから!」って思ってます。Zoomgalsってすごく最先端だけど、彼女たちの曲にわたしは救われたから、そういう最先端な人に刺さってほしい。
自分や他人の怒りや感情を伝える
──足浮さんから最初に受けた印象と、楽曲をじっくり聴いてからの印象、そしてインタビューでお話しを聞いての印象がそれぞれカラフルで、いろんな間口のある方だなと思いました。
足浮:ギャップを大切にしたいから嬉しいです! 最初はめっちゃふざけているのに、途中でいい曲を歌って、最後は「Let’sダンゴムシ」みたいな。でも結局は、自分の怒りの感情や、人の怒りを伝えることを大切にしたいって思っているんです。今はあまりニュースを見ないようにしているんですけど、このまえもテレビを見ていたらLGBTのことでもうー! って思っちゃって。
──簗和生衆議院議員の「種の保存」発言ですね。
足浮:そうです!!! ああいうのはもう「はぁ〜?!?!」って感じ! だから「RTON FLOWER」をもっと世界に知らしめたい! ニュースを見すぎちゃうと、おこ!!! ってなるから、ちょっとずつ入れて、「オッケー、はい次!」って思いながら順番に取り入れています。
──ライブ活動が学校の友だちにバレたりはしているんですか?
足浮:中学の仲のいい人には言いました。そうなんだ〜、いいじゃん! って言ってくれてます。
──実際の生活のなかで自分の活動が知られるとちょっとやりにくかったり、バランスは難しくないですか?
足浮:自分からは言わないので、もし知られていたらそれは口コミで広がったって思うことにします。小学校のときも、アイドルになりたいってバレたら、あいつアイドルになりたいんだってーみたいに言われることもあって、でもそういうのを一周まわらせるというか……。
──一周まわらせて、巻き込んで相手を味方につけて。
足浮:そう! 巻き込んでく! 応援してもらえるようになろうって思ってポジティブにやってきました。そしたら、なにか言ってくる人とは逆に結構仲良くなれたりして。それでもまだ言ってくる知らん人たちはもう関わらなければいいやって。あの、中学生って反抗期だからサンリオとか一時期避けるみたいなのってあるじゃないですか?
──そのニュアンスすごくわかります、もうちょっと大人になって、高校生くらいになると急にすべて許されたりする感じですよね。
足浮:そうなんですよ! わたしはサンリオのシナモンが好きだったから、いろいろグッズを身に付けていたら、全然知らない人に「シナモン!」って呼ばれて走って逃げたりして。でもあまりにも言われるから、「シナモンでーす」とかやってたら、「なにあいつ、おもしろくね?」みたいになったんです。だから、うぇい!みたいなスタンスでいたほうが楽だなって。今までまわりにハロー好きな子はいなかったんですけど、高校に入ったらモーニング娘。が好きな友だちができたんです!今度その子に自分の活動を報告しようと思っていて、今ドキドキなんです!
──親友が推しになるかもしれないって最高ですね! コロナ禍で作品や心情に変化はありましたか?
足浮:実は、コロナの期間に活動をはじめたので、声出しとかされたことないんです。だから、通常のライブがどんな感じなのかわからなくて。
──まだまだ爆発しきっていない感じがして楽しみです。
足浮:ますます自由にできるかなって思うとコロナ開けが楽しみです! お客さんを煽ることもやってみたいです。あとはファンとバーベキューがしたいんですよ。どこでライブがしたいとかよりも、まずはオフ会がしたい!