今の自分に合った音楽の楽しみ方をしてほしい
──ある意味逞しいし図太いですよね、ライブハウスは。転んでもただでは起きないと言うか。
樋口:この手がダメならあの手があるだろうというのを常に考えてますからね。この先、コロナが落ち着いても配信というツールは当たり前のようにある手段になるだろうし、それを踏まえた上で今回はオンラインだけではなく有観客でもイベントを行なう予定なので、皆さんに合った方法でライブを楽しんでもらえたらいいなと思うんです。歌舞伎町の中心にあるLOFTまで行きたくないからオンラインを選ぶということでも全然構わないし、ライブはやっぱり生に限るよねという人はぜひLOFTまで足を運んでほしいです。感染対策は万全だし、ちゃんと20時には終わりますから。この状況下で自分に合った音楽の楽しみ方をしてもらうのが今回の企画で重要な部分なんですよ。ライブハウスはいま存続が困難な状況にあるのは確かですけど、経営的に厳しいのはどの業種も同じだし、何もライブハウスだけが特別なわけじゃない。大変なのはみんな同じなんだから知恵を絞ってやれることをやるしかない。今回のイベントはその一環なんです。
──本公演が三度目の緊急事態宣言発令期間が明けた後に開催されるのはひとまず良かったですね。【註:当初、三度目の緊急事態宣言は5月11日までの予定でしたが、取材後に5月末まで延長となりました】
樋口:宣言が延長されないことを願うばかりですけど、どうなることやらですね。でも仮に延長になっても無観客配信だけでもやりたいです。こんな大変な状況ではあるけど、だからこそ音楽を楽しめる空間をオンラインを通じて届けたいですし。状況は今も二転三転してますけど、神経がだいぶ図太くなければこんな仕事はやれませんよね(笑)。
倉坂:お金のためだけじゃ続かないですよね。どうにも暗い話になりがちですけど、去年の緊急事態宣言が明けた後にknaveへ遊びに来てくれたバンドの子らに「倉坂さん、意外と元気そうですね」とけっこう言われたんですよ。ライブハウスがいろいろ叩かれた時期だったので。でも僕らライブハウスの人間はそんなふうに飄々とした感じと言うか、「なんやかんやゆうてあの人ら楽しそうやな」みたいに思われるポジションでいたいですね。「あかん、もう無理や」と塞ぎ込むのではなく、「キミらバンドがいてくれてライブしてくれるんやったらまあまあ何とかなるで!」みたいな極力軽いノリでいきたいです。今回のイベントはknaveの地元バンドを長尾さんと樋口さんが気に入ってくれて、ツアーでお邪魔させてもらうようになれば嬉しいし、そうやって未来につながればいいなと思います。
長尾:ちなみに僕は4月の頭に体調を崩しちゃって、ライブハウスの現場に行けない時期があったんですが…。
樋口:それは大変でしたね。
長尾:おかげさまで何とか復帰できましたけど、4月はRAD SEVENが5周年で毎日イベントを組みまくっていたのに自分が現場にいられない状況がけっこう辛かったんです。でも配信の設備があったので自分のパソコンで連日のライブを観ることができて、便利な世の中になったなと逆に実感できたんです。いまライブハウスへ足を運べない人はきっとこういう感覚なんだろうなと思って、来場と配信の2パターンあることが自分の中ではだいぶポジティブなことになりましたね。ライブハウスに行けない理由は人それぞれだし、選択肢が増えるのはいいことだと思って。
樋口:私個人もRAD SEVENやknaveに行きたいけど、まだ当分は名古屋や大阪へは行けないし、長尾さんと倉坂さんの推す地元のバンドをオンラインと言えども観るのが楽しみなんですよ。オンラインであれ会場であれ、お客さんと一緒に私自身も楽しみたいですね。5月23日はどうぞよろしくお願いいたします。
南堀江knave