元ねごとのギタリスト、マスダミズキによるmiidaとavengers in sci-fi の木幡太郎、稲見喜彦によるThe Departmentがジョイン。新ユニット miida and The Departmentを始動。 十分過ぎるキャリアを持つ両者がこのタイミングで邂逅を果たした理由とは? デビューシングル『wind and sea』とマスダ自らが監督したMV制作の 裏側や、Youtubeに軸足を置いた活動。Loft9とのコラボカフェなどこれまでの"バンド"のルーティンに縛られない彼らの初インタビュー。
いい意味で汚せる要素があると思った
──この3人でmiida and The Departmentという活動を始めた時って、お互いに魅力を感じるところがあってスタートしたというところはありますよね?
一同:うんうん。
──「新しいことやったら何かできるかもしれないな」もしくは「これは自分たちにない部分を持っているな」みたいに思った部分があったらそれぞれ教えてもらってもいいでしょうか。
木幡:自分たちにない部分でしょう。やっぱり、miidaの音楽は、ソフトで完結す るじゃないですか。DAWの中でプラグインなんかを駆使して。この10年ぐらいモ ダンなやり方というか。ミズキちゃんはこの2000年代以降モダンなやり方で曲を 作っていて。それはもう完全に俺たちにはないところっていうか。もちろん僕らもProTools(DAW)を使ってはいたんだけど、基本録音用という か、曲を作るツールっていうよりはレコーダーっていう位置づけでしか使ってこな かったから。そこがもう確実に俺たちにはないとこだなと思っていたんだけど、 DAWからパソコン内で完結する音楽の作り方っていうのは、モダン故に、なんとい うか個性が出しにくいところもあるのかなと思っていて。それで俺たちが、何か役に立てる余地があるんじゃないのかなっていうのはすごく思って。なんか…うん。そこだよね。俺たちのアナログシンセだとかサンプラーだとかっていう要素を入れることによって、他の音楽と差別化できるんじゃないかなというところもあり。
──なるほど。
木幡:なので、結構イメージは湧きやすかったかもしれない。
稲見:ミズキちゃんが送ってくれた音源が、すごくきれいだなと思って。同じようなことを言うんだけど、汚せる要素があるなと思ったんだよね。いい意味で。俺らの持ってる機材で汚して、差別化をしやすいアレンジを入れたりできる余地を感じて。あとは他の人たちって曲を作ったりアレンジしたことがなかったんで、ミズキちゃんの作るメロディーにしてもすべてが新鮮だったかな。あとは単純にミズキちゃんのフットワーク早さじゃないですか。
木幡:瞬発力がすごいから…!
マスダ:乗せられちゃいました?(笑)
一同:(笑)
稲見:俺らは結構言われたものをやるみたいな感じで、のんびりしてて。やりたい気持ちはあるんだけど。なんかもう一歩自分たちで踏み込めない人たちなので、そういう部分でも刺激を受けるというか。新しくインプットしなくちゃなってすごく思う、いろんなものに対して。(一緒にやってると)楽しいからね。楽しいし、”がんばらなきゃな”というのがありますよ。
木幡:何がすごいって、ぶったまげたのはさ、なんにもないところから、ゼロから 生配信の機材とか突然揃え始めちゃって。生配信を自力でやっちゃうわ、YouTube チャンネルも自力で作っちゃうわ、撮影クルーを集めるわで。
稲見:知らない間に人がどんどん巻き込まれていくというか…いい意味で(笑)。でもみんなもどんどん付いてくるから。なんかすごいなって。
木幡:YouTuberですか、ってぐらいの配信環境が整ってたじゃないですか。
マスダ:そうかなあ(笑)。
木幡:自分も軽く映像をやったことはあるから、真似事というか、自作MVみたい なもの編集とか。映像ってめちゃくちゃ大変じゃん。音楽よりファイルの重さとかが段違いでさ。
稲見:(パソコンに)動画ファイル入れたら動かなくなっちゃう(笑)。
木幡:それがわかっているから、自分で編集やら何から何までやってしまうのは、なんかすごいなと思って。本当に瞬発力がすごいなっていう(笑)。
──メジャーではできなかったっていうこともあるんですかね。そこの反動というか。やりたいとは思ってたけどいろいろ制限があったわけじゃないですか。
マスダ:あー。今は、こういうふうにしたいなって思ったときにすぐにやれる環境 かもですね。思い立ったが吉日というか。メジャーとか、関わっている人が多い環 境だと、踏むプロセスが増えるので…。1人だったら1週間でできることも3カ月〜半年かかる、みたいなことが普通でしたからね。クオリティーとかは(メジャーと)比べものにならないかもしれないけど…。曲もすぐに出せるようになったっていうところもあったりして、今出したいものを出す、みたいなモードになっている気がします。昔はもうちょっと見られ方とかも気を付けていたし、慎重だったんですけど。かなりフッ軽(フットワークが軽い)になっちゃいましたね。
稲見:俺はそれを見てメジャーってこうなんだってすごい思ってたけど(笑)。
マスダ:逆に?! メジャーは一個何かを作るにしても5人ぐらいの承認が必要で…。
木幡:いちいち会議になっちゃう。
マスダ:長すぎて、何の話してたっけってなるくらい。
──何回会議しても決まらない、みたいな(笑)。それでミズキちゃんはどうして二人とやろうと思ったんですかね。
マスダ:単純にまず太郎さんと家が近かった。
──家が近かったら誰でもよかったんですか(笑)。
マスダ:いやいや!(笑) 真面目な話すると、お二人の活動を見ていて、かなり曲重視の方だな~と思ってたんです。なんというか、変わっていくことを恐れないタイプの人たちじゃないですか。バンドだったところからエレクトロになっても、別に平気な顔をしてやってらっしゃったし、それによって離れていくファンもいたかもしれないけど、気にせずやっていたと思っていて。たぶん、みんな変わることにもっと消極的だと思うんですよね。なんですけど、お二人は長くやっている中で何度も訪れたであろうターニングポイントで、ちゃんと変わっていってる感じがして。そこがまず素敵だと思っていたんですけど。久しぶりにライブで対バンしたときに、変わってる部分と変わってない部分、その両方があって、すごくかわいくてですね(笑)。元々お二人の印象はよかったけど、そんなにお話とかしてなかったので、あのライブを見て、この人たちとお話しできるかもしれないというか、話したらいろいろ面白そうだな、みたいな。
──なるほど。
マスダ:うん。曲とかが好きでもやっぱりそこが合わないと一緒にやれなかったり するんですけど、二人は一緒にやれそうな気がした。優しい(笑)。なにかふっか けても打ち返してくれるというか、一緒に作ったときに一緒に考えられるような人 なんじゃないかなっていうのを感覚的に思って。結果、リミックスをお願いした り、リリースイベントに呼んだり、Studio KiKi一緒にやりませんか、って言った り。二人だったらやってくれるんじゃないかな…と割と確信を持って声をかけました。もちろん音楽的にも尊敬してるけどそういう人間的な部分が好きで一緒にやっ てるのかなと思います。もう大人なんで、好きな人とやりたい(笑)。
稲見:俺らも他の人の曲とかやりたいと思ってたタイミングではあった。トラック作ったりとか。
──利害が一致したわけだ(笑)。
木幡:急にドライな言い方(笑)。