ゆるい世界でゆるく宇宙という夢に向かって進んでいくアニマルたちを描いた『宇宙なんちゃら こてつくん』。原作・にしむらゆうじさんのこのゆる世界を"なんちゃって"でいざなってくれるナレーションとDAXAくん。このゆるさの化学反応を演じられたムロツヨシさんにお話を伺いました。[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]
準備してきたものが全く通用しませんでした
──DAXA(ダクサ)くんを演じるうえで作田(ハズム)監督からリクエストはありましたか。
ムロ:最初は可愛くやる方向で考えていたのですが、最初の現場で原作者の方や作田監督から「DAXAくんはDAXAで働いているおじさんが着ぐるみか何かを着て子供たちに豆知識を毎回1つ与えて、子供たちにわかるように高い声でしゃべる人です。」と言われたんです。まぁまぁ、ピンポイントできたなと思いました。
──キャラクターとしては出来上がっていたんですね(笑)。
ムロ:キャラクター然としていない無理しているおじさんということで、その裏設定を活かしてちょっと無理しているおじさんが出るのか出ないのか分からない高い声でキャラクターをやっている人という風に演じました。だからDAXAくんの話し方は地に足がついていない感じになっていますが、それは全て計算通りだということはお伝えしたいですね。
──現場に入る前は可愛く演じることを考えられていたとのことですが、リクエストがある前にどう演じるかムロさんの中で具体的にイメージしていたもの・モデルにしていたキャラクターなどはあったのでしょうか。
ムロ:ナレーションとの違いがあった方がいいのか、ナレーションと全く同じ風に演じた方が面白いのかは考えましたね。正直そこをどうやって演じ分けようか悩んだ部分はありました。
──確かにモノローグではなくナレーションですから、同じ演じ方だとDAXAくんが話しているのかナレーションなのか混乱してしまうかもしれませんね。
ムロ:ありがたいことにNHKのドキュメンタリーでナレーションをやらせていただいたことがあって、そこのディレクターさんからも褒められた経験があるので、ちょっとした自信を持っていたんです。そんな中で『宇宙なんちゃら こてつくん(以下、こてつくん)』のナレーションに臨むと、とにかく「なんちゃってナレーションの“なんちゃって”感が大事なので上手くやらないで、肩の力を抜いて欲しい。」と言われ、準備してきたものが全く通用しませんでした。
──ナレーションも設定が固まっていたんですね。
ムロ:そうなんです。演じ分けをどうしようかなというところはキャラクターもナレーションもハッキリとした設定があったので、最初の現場でその悩みはなくなりましたね。どちらかと言うとなんちゃってナレーションの方が難しかったです。ナレーションを経験してしまったばかりに、どうしても肩の力を抜いたお芝居をしている感じになってしまうんです。演じているみたいになるのが嫌だったので『こてつくん』では今までの経験を捨てて、でも内容は伝えないといけない、その加減が難しかったですね。逆にDAXAくんの方はおじさんがちょっと無理した高い声でやるという設定をもらえたので、思う存分できました。でも、力を入れてやりすぎて「ちょっとそれはやりすぎです。」と怒られることは多々ありました。
──多々だったんですね(笑)。
ムロ:4話以降で飽きてきたんでしょうね。力を入れてやりすぎると、作田監督に第1話を聞かされて「これくらいでやってください」と言われました(笑)。
──正しい形は第1話のものと。
ムロ:そうですね。第4話ぐらいで設定を忘れて高い声でしゃべるムロになってしまったんです。