自分の目で宇宙から地球を見るという経験をしてみたい
──『ニノ国』や『ボス・ベイビー』などでも声のお仕事をされていますが、普段の俳優として出ている時と声のお仕事の時では入り方・気持ちの入れ方の違いはあるのでしょうか。
ムロ:やはり声だけの仕事は難しさを感じています。通常のお芝居とは全く違うアプローチや構え方だと思っています。普段お芝居をする時は顔・姿とともに話しているところを見てもらうので、佇まいも情報として入るんです。あるお芝居の考え方だとセリフに意味を持たせるなという考え方もあるんです。演劇論にもよりますが立っている姿・向き・目線を大事にして、棒読みとまでは言わないですけどセリフに意味を持たせないで淡々としゃべることが良いとされているお芝居の種類もあるんです。
──アニメと実写や舞台では役者から発信される情報が違ってきますからね。アニメでもキャラクターが絵として情報がありますがデフォルトされていますから。
ムロ:そうなんです。お話しした演劇論を声だけのお芝居でやると全く何も伝わらないことになるんです。僕はその訓練・経験値を増やしてしまったがために、それを捨てられない自分がいるのが難しいところです。キャラクターのアニメの口に合わせてセリフを言うことが出来たとしても、伝えなければいけない情報量がまだ足りていないと感じることが多々あります。他の声優の方の演技を聞くとやっぱりいろんな情報が入っていて、その時のキャラクターの感情やバックボーンも入っていたりするんです。そこが課題でもありますし、逆に俳優だからこそ伝わることもあるのかなと思いながらいろんなことを試しています。ただ、今回の『こてつくん』に関してはそういうことは一切要らない、なので今までの声優のお仕事とは全く違う場所に居ますね。
──なるほど。ムロさんはご自身の声でここに自信があるという部分はありますか。
ムロ:よく僕の鼻づまりの声を使うなと思うくらいで、自信は全く無いです。今でも自分の作品を観て「なんでこれがOKなんだろう」と思うくらいです。「良い声だね」と言われたことはありますけど、鵜呑みにしないようにしています。
──ムロさんの声は良い声だと思ってます。
ムロ:ほんとですか。僕自身は声に個性がないと思っていたんですけど、友人とタクシーに乗る時に「マスクをしててもムロさんとわかるからしゃべらないでくれ」と言われたことはありますね。「嘘つけわからないだろう」と言い返すんですけど、友達からしてみると「声とか話し方で、店に居てもすぐに分かりますよ」って言われました。
──分かります。ムロさんの声・話し方ってインプットされています。
ムロ:わかるんですかね。良いのか悪いのか解らないですけど、そんな声でも今回の『こてつくん』もそうですし、他の作品でもナレーションなどでお声がかかるので自信を持とうかと思っています。
──ナレーションの楽しみはどんなところにありますか。
ムロ:ドキュメンタリー作品のナレーションは説明とかに自分の感情とかを入れられるのが楽しいですね。セリフとは違って自分の思い入れを入れられるんです。本当はナレーションに感情を入れちゃいけないんですよね。でも、僕は入れちゃうタイプなんです。
──それが味となって、映像とマッチしてインプットされているんだと思います。
ムロ:ありがとうございます。
──ムロさんは自分の声には自信がないとのことですが、そうなるとオファーが来た際に驚きがあったのでしょうか。
ムロ:今回のオファーに関しては凄い嬉しかったです。偉そうな意味ではなく自分が選ばれたことの意味も解りました。子供の目線を持ちたいという気持ちを昔よりも強く思い始めていた中、Eテレの子供向け番組の中に自分が居れるというのが嬉しかったです。
──ゆるいとはいえ、DAXAくんは宇宙の知識を伝える役になります。ナレーションの部分も含めて宇宙の知識でびっくりしたことがあれば伺えますか。
ムロ:本当に知らなかったんですけど、宇宙に行って帰る時に出来るだけ軽く帰るように物を置いていくそうなんです。僕は記念に置いて行っていると思っていたんですけど、あれは軽くするためなんです。
──そうなんですね。
ムロ:その理由が帰りの機体を軽くするためで、それは凄く単純な発想じゃないですか。帰りを安全に無事に帰るためにそういうことも必要で、そうすることを前提で探索に行くというのは勉強になりましたね。行くたびに物を置いて行っていたら月は怒らないのかなとか思いますよね。
──そうですね(笑)。月からしたら持って帰ってくれよってなりますよね。
ムロ:そうそう。あとは、昔の天文学は星占いも勉学の一部なっていたというのは驚きました。星の軌道を予測するという行為の中で未来を予測するという形がもう入っていて、昔の天文学者の人たちは占いもできたそうなんです。
──占いも学問で、ある意味で科学が入っているんですね。
ムロ:占いというのが統計学でその統計学に歴史があるのだとすれば、信用せざるを得なくなってしまいますよね。
──確かに、ただの占いと思えなくなってしまいますね。
ムロ:星占いはこれから見ないようにします、信じてしまうので(笑)。
──宇宙飛行士と聞いてイメージすることはありますか。
ムロ:オレンジ色ですね。
──オレンジというのは。
ムロ:宇宙飛行士の方はオレンジの服を着ているイメージがありますね。こてつくん達も着ていますから。
──確かにキービジュアルではオレンジの服を着ていますね。宇宙飛行士の服というと青もありますよね。
ムロ:確かに、こてつくんを見ているからオレンジのイメージが強いですが青もありますね。あとは訓練が凄くきつくて、それを乗り越えた選ばれた凄い人達というイメージがあります。まだまだ簡単に誰でもなることが出来ない職業というイメージです。
──ムロさん自身、宇宙への憧れはありますか。
ムロ:自分の目で宇宙から地球を見るという経験をしてみたいですね。飛行機に乗っても地球の輪郭を見ることはないし、地球は本当に青いのかなと思うこともあるので、その経験はしたいなと思います。