障害なんてないほうがいいに決まってる
──「障害」のなかでの、"障害なんてないほうがいい" と言える正直さは、当事者であり、自らも現場で働いているからこその言葉だと思います。"障害もあなたの個性だよ" という風潮もありますが、どうして "ないほうがいい" と思ったのでしょうか。
iidabii:当事者にとってみたら、たまったもんじゃないですからね。自分自身にも、「障害なんてないほうがいい」って思っていることもありますし、当事者たちからなる障害者団体からも、同様の意見を聞いたことがあります。なんでも "いい話" にしようとすんなよって思います。
──いや、ほんとうにそうですよね。個性では片付けられない現実がありますし。
iidabii:実際の障害者の方の人生や、その人の気持ちを考えたら、障害なんてないほうがいいっていうのは当たり前じゃないかな。でも、それでもどうにもできないところがあるから切ないわけで。それに、美談にしたがるのはいつも現場の外にいる人で、そういう人たちが「障害は個性だ」って言いはじめる気がするんです。でもね、そんな甘っちょろい話じゃないぞ、と。
──一貫してプロテストソングだなと思いました。
iidabii:ありがとうございます。きっと、当事者や現場にいる人だったら、この詩の言葉は通じると思っています。
──今回のアルバムのテーマになっている宗教・吃音・生きづらさにまつわる言葉は、広く共感される実直さがあると思っています。これからやっていきたいことはありますか?
iidabii:「虐待の証人」にいろいろな反響をもらったので、そこに付随した曲はまだ出さなくちゃいけないなと思っています。でも、最近、真面目なことばかり曲にしているので、それがすべて終わったら、すごくくだらない曲を書きたいです(笑)。そうやってバランスをとらないと。だけど、もうちょっとは真面目な曲をがんばります。
──「虐待の証人」が公開されたときにも、「聴いてもらえることは嬉しいけれど、このテーマが受け入れられる世の中はどうかと思う」とおっしゃっていましたよね。けれど、まだ宗教というテーマについては書き続ける必要性を感じているんですね。
iidabii:はい。自分がいちばん言いたかった、強制・暴力・虐待を許さないぞっていうことは書きましたけど、まだその視点以外のところが書ききれていないんです。宗教批判にはならないようにしつつも、自分以外の宗教2世の人生とか、2世に生まれてしまった苦しみをテーマにしないといけないなと思います。
──見過ごされている部分がまだたくさんありますもんね。そのあとの、"くだらないテーマ" っていうのはどういった内容になるんでしょうか。
iidabii:ブサイクでつらい!とか書きたいです(笑)。ポップな感じでいこうと思います。
──それはそれで明るくて必要とされそうですね。両面見られることを楽しみにしています。
iidabii:がんばります!
──では、最後に、トークイベントでiidabiiさんを知った方や、これからアルバムを聴く方へのメッセージをお願いします。
iidabii:音楽と思って聴いてほしい、っていうとちょっと違うし、エンターテイメントとして聴いてほしい、っていうのもちょっと違うし、難しいな。ひとりの人生だと思って、ちょっと我慢して30分聴いてみてほしいです(笑)。ちょっと聴くのがつらいかもしれないけど、どうか聴いてほしい、こういう出来事やこういう人生もあるんだよということを知ってほしいです。