イライザ・ロイヤル&ザ・総括リンチがTRASH-UP!! RECORDSのBandcampからデジタルEP『The Unconquered e.p.』をリリース!
これまでエコダムド、穴奴隷などでライブハウスのステージに立ち、SMの調教師でありいくつかの媒体で文章を執筆するイライザ・ロイヤルを中心に結成された、イライザ・ロイヤル&ザ・総括リンチ。2016年に1stアルバム『おんなの独立記念日』、2019年にフランスを中心に敢行したヨーロッパツアーに向けてのシングルの日本盤『S-T(LTD EURO TOUR CD 2018)』のリリースを経て、この新作EPが素晴らし過ぎて震えている。好きにやらせてもらうから! って感じのダイナミックな演奏とそれを際立たせる音質。真ん中にそびえ立つイライザさんのボーカルの感情直結の激しさ。己の体験、己の心、そこにある怒り、絶望、情念と対峙する強さ。怒りや絶望と対峙し放出していく、これこそハードコア・パンクだし、これこそフェミニズム。女性蔑視が横行する男社会。でも、フィーメル・プロテスト・ハードコア、イライザ・ロイヤル&ザ・総括リンチがここにいる。(interview:遠藤妙子)
【MEMBER】
ERIEZA ROYAL:Vocals
RUNE:Guitar & Background Vocals
MERCURY GAKI:Bass & Background Vocals
MAYUMI:Drums & Background Vocals
【写真】アーティスト写真:Miki Matsushima/ライブ写真:小野由希子
男に搾取・消費されるトップレスはやめた
──もう、最高で完璧なハードコア!
イライザ:ありがとうございます。
──ダイナミックなガレージ感が凄くいい。マスタリングは中村宗一郎さん。
イライザ:宗ちゃんとは何度も一緒にやってるからやりたいことをとてもわかってくれていて。録音周りやデザインも含めてディレクションはBorisのATSUOさん。ATSUOさんもずっと一緒にやっていてわかってくれていて、こっちが考えるより先にどんどん考えてくれる。助かってるわ(笑)。私はわかり合える人と作っていきたいの。すべてにおいて自分の目が行き届いていること、自分が管理できることしかやりたくないの。
──配信でリリースの今作は、デジタルアルバムとして購入すれば歌詞がつきます。この刺さりまくる歌詞は英詞でも読める。
イライザ:そうなの! 歌詞は絶対に読んで欲しい。もともとはタイトルのみ英訳する予定で何人かにタイトルの英表記を聞いたら、Takeshiさん[Takeshi Evolstak(NŌ, ex.C.F.D.L)]から歌詞も送って欲しいと言われ、それを読んだ彼が「素晴らしいから歌詞を英語にしてみた」って。もう凄くありがたい!
──英詞も凄くいいですよね。
イライザ:素晴らしいですよね。私は手に取って形として残していける「盤」が大好きなんだけど、配信は海外の人にもすぐに聴いてもらえたり、いいとこがたくさんある。英詞をつけてくれてホントありがたい。
──ジャケ写もアー写もMVもカッコイイ。
イライザ:ジャケ写はキャプテン・センシブルの7インチのレコードのオマージュ。
──アー写はセクシーな4人の挑んでくるような眼差しが印象的です。だいぶ前だけどイライザさんはツイッターで、「自分がしてきたセクシーなスタイルは、男に搾取されているものだと気づいた」っていうようなことをツイートしていたと思うけど…。
イライザ:そうね、してたかもしれないわね。
──搾取されてると気づいて意識をアップデートできたっていうのも凄いけど、そこでセクシーなスタイルをやめるんじゃなく続けている。それって、男のためじゃなく自分のためだっていう意思表示なんだなと。
イライザ:そうなんですけど、トップレスはやめたってことで、匙加減なのよ(笑)。バンドを始めた20代の頃、トップレスでステージに立っていたことがあったの。イギー・ポップ、スージー・スー、スリッツとか、カッコイイ人ってみんなトップレスになるじゃない? だからトップレスでライブをやるのはロックやパンクでは当たり前って思ってたわけ。そしたら世間はそうじゃなかった。それに気づいたのは、90年代、2000年になってからかな、映画『死霊の盆踊り』のイベントがあって。関係者からトップレスのダンサーを集めてるから出てよって言われて。そのとき、あ、私はただのオッパイ要員になってるなって気づいたの。搾取されてる、消費されていくんだって。
──ライブでのトップレスとは意味が全然違うもんね。
イライザ:そう。そのイベントのスタッフも私になんらシンパシーがあるわけじゃなく、単にトップレスの女がいるとパーティーが盛り上がる、それだけの理由よね。
──卑猥な視線を送る人もいるだろうし。
イライザ:そうそう。
──でも、ロック好きでさえも卑猥な視線の人はいるかもしれない。
イライザ:残念なことにいるでしょうね。パンクのアーティストがトップレスなのは、アゲインストの姿勢があったと思うの。私もそう。そこをわかってくれてた人は絶対にいるんです。でも卑猥な視線の人もいて、搾取して消費されるものなんだって気づいた。だからトップレスはやらないって決めたの。もちろん自分がやりたいスタイルはやっていくわ。ただ私、おんなおんなしているものが実は凄い好きなのよ。人によっては女性バンドとか、「女性」ってつくことを嫌う人もいるけど…。
──男性バンドとは言わないからね。
イライザ:そうそう。でも私は全然オッケーで。女優って単語も大好き。もう特別な存在よね、女優って。女王も好き。
──イライザさん自身が女王ですからね。
イライザ:そうなの。私、王道なのが意外と好きなの。女優、女王、女性ハードコアバンド、全然オッケー!
──うん。いろいろな考え方があるってことを示していることもフェミニズムだと思います。
イライザ:そうよね。フェミニズムって一枚岩じゃないのよ。