西新宿時代の新宿ロフトの香りも残しておきたい(樋口)
樋口:今回、新宿ロフトをイメージしたコーヒーをブレンドしてくださったこともあり、「これ新宿ロフトだよね!」とイメージが浮かぶようなパッケージにしたいというのはデザイナーさんに伝えていました。そういった意味では、デザインとオリジナルコーヒーがちゃんとマッチしたと思います。西新宿時代の新宿ロフトの香りも残しておきたいという思いもあったので、当時から足を運んでくださった方、青春時代を過ごしてくださった方にも喜んでもらえたら良いなと思います。前回、オリジナルマスクを制作した際に80年代、90年代のロックシーンをリアルタイムに聴いていた方にもたくさんご支援して頂いたこともあり、そういった方々にも感謝を忘れたくないなと思っています。
細野:バブルの絶頂で日本は無敵でした。BOØWYの『JUST A HERO』が出た時がバブルの始まりで、あの当時の歌詞は色んなアーティストがそうだけど、ゴージャス過ぎて何を歌っているのか分からないんですよね(笑)。80年代は、めちゃめちゃ日本は勢いあるのだろうけど、どっちに持っていいのか分からないエネルギーみたいなのがそこら中に溢れていましたね。音楽も実験的なものが多かったと思いますし。
樋口:歌舞伎町に新宿ロフトを移転したのは99年で、まさに新宿ロフトは過度期でした。当時の社長が歌舞伎町は西新宿ロフトよりも3倍近く大きい会場だし、今までのやり方だと会場を維持することはできないから、もうちょっとジャンルの間口を広げた方が良いのではとなりました。私の世代から、「新しいものを出してやるぞ!」という意気込みで取り組みましたね。それが00年代で出来たと思っています。00年代で作った基礎が10年代でまた変わって20年代でこのコロナなので、歴史を紡いできた新宿ロフトをコロナに負けじと守っていきたいです。
今回の新宿ロフトのコーヒーブレンドで甘みのパーツを見つけたという感じですね(細野)
樋口:昨年は新宿ロフトの代表がロフトの歴史本や自身の恋愛をベースにしたストーリー仕立ての小説を出版しましたが、その本を読んだ上でのブレンドポイントはありますか?
細野:もちろんありますよ。コーヒーに少し甘みをつけようと思ったのは、代表の方のとても素敵なロマンチック感ですね。リアルを知っているけどロマンチック感はずっと持ってくれればいいなと思いました。
樋口:自分はどんな会社で働いているのかを改めて知る上でも読みました。創業50年もやっている会社なのだということを実感させられましたね。
細野:その歴史本を読んで僕がわかるのは後半の1/3ぐらい。前半のロック黎明期は分からないです。自分がとても憧れていた新宿ロフトは、ページ後半ぐらいだなと感じたんですよね。
樋口:ライブハウスの歴史が1冊の本にまとまることに驚きました。あそこに書ききれてない珍事件はめちゃめちゃあると思うんです。自分が関わった97年から今に至るまで、覚えている限りでもたくさんあるから。あとは代表の恋愛本を読んで、結構ロマンチストな人だということを知るきっかけにもなりました(笑)。
細野:僕も読みながら、「切ないな」って2回ぐらい言いました(笑)。大人になるっていろんなことを忘れていくのだけど、そういう感情は絶対必要ですよね。そこに、新宿ロフトのコーヒーブレンドで甘みのパーツを見つけたという感じですね。甘みはオリジナルコーヒーに必要だなと、代表の小説で気づけて良かったです。
樋口:代表の書籍やオリジナルブレンドコーヒーは、今回のドネーショングッズに繋がった感じがします。
細野:僕の中には新宿ロフトといえばハードなイメージがすごくありましたが、それは若い頃の刷り込み。それから出身アーティストを見ていても、新宿ロフトに行くという話になった時もやっぱりハードなイメージは東京にもありました。池袋、新宿、渋谷の並びですよね。並びのなんともいえない迫力。そこで醸成されていくものがあって、自分の田舎者の部分が出てしまってつい、「東京ってクール!」だと連想してしまうけれど、あの代表の恋愛本が甘みを出してくれました。隠し味レベルの甘みじゃないと思いますね。
ちょっとしたドキドキ感を味わった時の自分を思い出してもらえたら(細野)
樋口:今回のオリジナルコーヒーは、コーヒーをそんなに飲まない方でも楽しめますか?
細野:いけると思います。飲む人によって印象は変わるんじゃないかな。新宿ロフトに行くきっかけにもなればいいし、応援にもなればいい。今は遠くに住んでいるけど、「昔、行った新宿ロフト!」みたいな人たちが飲んだ時に、涙を流しちゃうのもいいし。 間違いなく日本の文化ですから、やっぱりロフトには頑張ってもらわないと!
樋口:オリジナルコーヒー購入者の方にはどんな風に楽しんでもらえたらと思いますか?
細野:音楽と一緒で、好きに飲んでもらえれば良いのですが、最初にライブハウスに足を踏み入れた時やコンサートに行った時のわかっていないドキドキ感。そういう感情に近いものを思い出してもらえたら良いかな。ライブハウスに行って、チケットをもらってフライヤーをもらって、そういう一連の流れに慣れる時があるけど、一番最初に足を運んだ時って本当にドキドキしますよね。なにが起こるか分からない、どんな味が飛び出すか分からない…みたいな。そういうちょっとしたドキドキ感を味わった時の自分を思い出してもらえたらな。そんなイメージでコーヒーをブレンドしました。
樋口:今回、販売をしているドリップパックやペットボトルをおいしく飲むコツを教えてください。
細野:単純に濃さの調整は、コーヒーの量の多い少ないで出来ると思うのですが、まずブラックで飲んでみて、淹れ方に関しては普通にペーパードリップやコーヒーメーカーで淹れてもらって。ドリップパックは熱いお湯を使ってもらいゆっくり落とす、と。