女性であることは紛れもなく自分のアイデンティティ
──ニーハオ!!!! を結成した時も「女の子が集まって楽しいことをやりたい」ってことだったわけだけど、それは今と同じ?それとも、女の子とやりたいっていう、その理由が変わってきた?
YUKARI:ああ、変わってないとこと変わったとこと…。結成は大学のサークルで、圧倒的に男の子が多くて。なんとなく女の子は下に見られてる空気はあったかも。わたしが楽器を始めたのは大学に入ってからで全然弾けなくて、余計にそう感じたのもあるけど。で、そんなこと気にせずやりたいことをやろうって始めたのがニーハオ!!!!。
──周りの評価なんかどうでもいいじゃんって。
YUKARI:そうそう。今も基本的に変わらないんだけど…。昔は女の子であることがちょっとコンプレックスだったんですよ。だから、そんなこと気にせずやりたいことやろうって。わたし自身も当時は気づいてなかったけど、圧倒的に男性の多いバンド界隈で女の子であることによって感じる違和感がそのコンプレックスの原因だったのかも。いつの間にか植えつけられていたコンプレックス。それが今はプライドになったんですよ!
──うんうん。誇り。
YUKARI:そこはアイデンティティだから。女性であるってことは紛れもなく自分のアイデンティティ。特に今自分がいる音楽のシーンにおいて、女性っていうことが自分のアイデンティティだと思うので。今の自分に誇れるのは女性であるっていうことで、そういう意識でバンドをやっている。それでいいんじゃないかなって思ってます。私が女性であることによって気づいたことは、他のセクシャリティ、人種、いろんな人がそれぞれ考えて辿り着いたアイデンティティと繋がるものだと思うし。人によっては、女性だからって嫌な思いしたことがないし、差別されたことがないって人もいると思うんです。それでもいいと思うんです。でも女性だから辛い思いをした人、マイノリティだから辛い思いをした人もいるわけで。そういう人とわたし自身も繋がってるし、切り捨てることはできない。傷ついてる人を見なかったことには絶対にできない。だって女性であるっていうアイデンティティがプライドになったのは、そういうことに気づいたからですもんね。
──うんうん。女性としての痛みに気づいたことによって、人間としての痛みを知ったっていうか。
YUKARI:そうそう。女性としての経験によって、自分とは違う人を知ることができたっていう。自分のアイデンティティを自覚したんでしょうね。自分の中にもいくつかのパーツがあるけど、バンドをやるにあたって女性っていうアイデンティティを出していきたいんです。
──ニーハオ!!!!の歌詞は意味がないように感じられるかもしれないけど、絶対にメッセージがあるしね。
YUKARI:ありますね。意識しないで自由に書きたいとは思ってるんですけど、でもやっぱり今の時代だからできた歌詞ですよね。それも女の子でやってるっていうプライドですよね。自分たちの存在を出さなきゃ…、出さなきゃじゃないな、出ちゃいますよね。
──たとえば同じ言葉で唄ってても、その言葉に思いや意志が宿ってるんだよね。
YUKARI:今の時代の流れとか世の中の動きに敏感でいたいなって思ってます。政治的なこと、政治的っていうか、自分が生きてる社会のこと、それも歌詞に入らないと嘘かなって思い始めて。私は少なくとも今ここで生きていて、だから感じることもあるし。作ってる時は全然意識してないんですけどね。でもメッセージのないものを作ろうってフェーズではないってことなのかもしれない。自分の考えや立場は表明しておきたい。自由に楽しんでもらうためにも。今エンタエさんが言ってくれたように思いや意志が宿ってるって、ホントそうかもしれなくて。昔は「楽しいよ」ってそれだけで成り立ってたし、どう解釈してもらっても良かったけど。今は「楽しいよ」の中に「私は楽しいことを持っている」かもしれないし、「楽しいことを続けよう」かもしれないし、「誰もが楽しくある」かもしれない。そこに感情やメッセージがあるんです。それは出そうとしてじゃなく、自然にそういうものであってほしいんですよね。
──うんうん。それが表現の深みっていうか真摯さっていうか、表現の面白さで。ホント『FOUR!!!!』は感情と肉体のある歌詞だしサウンドだと思う。強烈でワクワクする。ライブハウスでのライブも早く見たいです。
YUKARI:ライブハウスで女の子や子どもがライブを見てたらどんどん前に出てきた、なんてことがあったら凄い嬉しいですね。
──ああ、女の子が前に出てきたり子どもが踊ってたり、そんな景色が浮かぶ今作は、未来なんだよね。遠い未来じゃなくてリアリティある、自分の手で作れそうな未来。そういう世界を感じる。
YUKARI:あ、うんうん。明日よりもちょっと先の、子どもが大人になるくらいかな、そんなところまでくらいの未来に向けてますね、確かに。リミエキは今の時代だったり瞬間のカオスだったりするけど、ニーハオ!!!! は確かにちょっと先の未来に向かっていってます。未来を作っていきたいですね!