4人バンドとしてやりたい音にかなり近いものができた
──改めて、ニーハオ!!!! は結成から20年くらい経つ?
YUKARI:経ちますね~。たぶん結成が2000年ちょうどです。
──私のイメージかもしれないけど、最初の頃はオルタナなバンドではあったけど、ユニット的だったし、サブカル的な感じも…。
YUKARI:そうですね。音楽がやりたくてバンドを始めたわけじゃないので。楽しいことをやろうって思ったら、それが音楽だったっていう。遊びチームみたいな。遊びよりは真剣だったけど。なんていうか、人生楽しむぞチーム(笑)。女の子が集まって楽しいこと、やりたいことを好きにやる、そのツールが音楽だった。今もそうですね。ニーハオ!!!! は何かを決める時、面白いことっていうのは絶対条件で。
──音楽がツールってのは変わらないだろうけど、音楽がド真ん中にあるって感じに変わってきてるよね。特に今作は強烈で強力なバンドサウンドだし。
YUKARI:メンバーのお陰ですね。結成当初、ARIKOとYUKARIともう1人いて3人だったんですけど、二十歳そこそこだったし何も考えてなくて。考えてなくても楽しかったんですね。その後、ARIKOと2人になって、面白いこと楽しいことをやりたいから、そのためにニーハオ!!!! をやってるんだよなって確認し合って。で、その極致が、L.A.在住の双子をメンバーにして作った『NO RESPECT』(2015年)。あのアルバムは面白いことをやろうってことの極致じゃないですか。
──確かに。L.A.の双子はほぼ初心者だし、メンバーの集め方から活動のやり方からしてね。だからこその自由度の高さといったら!
YUKARI:そうそう。実際、アメリカツアーもしたんですけど、でも長続きするわけないですよね(笑)。あのアルバムは面白さ追求のMAXでしたね。そこから4人でやるのが楽しくなって。でも双子はL.A.在住だから続けるのは無理。で、その後、メンバーチェンジがあって今のメンバーになった。今の2人、ミーちゃん(YELLOW MIWAKO:bass, vocals)とカオリちゃん(PURPLE KAORI:guitar, vocals)はミュージシャンだったんですよ。バックボーンも演奏力もあるミュージシャン。そしたら音楽ってものがもっと楽しくなってきたし、演奏ってとこにも力が入りますよね。頭の中で思ってた音が表現できる。今までは、やりたいことがあってもちょっと演奏が追っつかなくてローファイとかスカムになってたけど、今なら思ったことができますからね。ガレージやロックンロールに近いこともハードコアも。思ったことができるっていうのは凄く楽しい。
──そこでたとえば、普通のバンドになっちゃうんじゃないかっていう不安はなかった?ニーハオ!!!! の曲作りの発想は、他にないものをやろうとか奇をてらってやろうとか、そういうのは?
YUKARI:もともとわりとストレンジな音楽だとは思うんだけど、奇をてらうつもりはなくて。たぶんね、上手く表現できないから変化球になってたんですよ、ホントはストレートを投げたいのに。今はストレートを投げたければ投げられる。でもニーハオ!!!! らしさは残したいから、2人ドラムとかARIKOのわけわからんサンプラーのリズムとか。そこはニーハオ!!!! らしさとして意識はしてますね。だから昔もわざとヘタウマみたいにやってたんじゃなくて、一生懸命やってアレ(笑)。子どもが描いた絵はなんかいいね、みたいにとってもらえれば(笑)。
photo:中野賢太
──確かにストレンジではあったけど、捻くれたとこは全然なかったもんね。
YUKARI:でもね、ちょっといろいろ意識した時期もありましたけどね。海外ツアーに随分行った時期があって。日本のバンドってキテレツな感じを求められたから、ちょっとそこは意識した時期もあったな。
──そんなことを経ての今作。ストレートなんだよね。音だけじゃなく、思ったことがバシッとやれてるって意味でも。自信が音に出てるし。
YUKARI:4人になってから『NO RESPECT』、『PAYDIRT』(2016年)と作ったんですけど、その2枚はローファイで音源としての面白さとかを出したものだと思うんです。今作はライブ感やグルーヴを出せた。ホントは前からライブ感やグルーヴのあるものを作りたかったんだけど、ドラムやサンプラーが特殊なセッティングだから録音が難しくて。ストレートな音を作りたかったのにストレンジになっちゃってた。それが今回できたんですよ。4人バンドとしてニーハオ!!!! がやりたい音に、かなり近いものができた。ARIKOもわたしもやったことない楽器でこの編成を始めたんだけど、いつの間にかやれることがどんどん増えて上手くなってるんですよ(笑)。メンバーが4人になる時、人数増えたら自由度なくなっちゃうんじゃないかなって思ってたけど全然そんなことなくて。今作なんかホント自由で。拍とかメチャクチャでもできるし、独自のタイム感を作っていけるし。
──3曲目の「ちょちょちょちょ」のリズムのタイム感、凄くいい。
YUKARI:ミーちゃんをフィーチャーしていく曲ですね。
──各々のカラーが出てるのもいいよね。
YUKARI:ミーちゃんのガレージロック、カオリちゃんのハードコア。
──そこにクラーク内藤さんが「MATSURI-SHAKE」と「FUTURE」のトラックで参加。「FUTURE」のギター凄い。
YUKARI:凄いですよね。アルバム作るにあたって、ライブ感のあるものにしたいっていうのは最初からあって。そこに緩急が欲しかったんですね。同時にクラーク内藤さんと何かやりたいって思いも前からあって、タイミングも良かった。クラーク内藤さんが仕上げたトラックの上に、わたしたちの演奏をどう絡めるか、その作業が面白かった。
──なんかさ、ニーハオ!!!! の存在はリミエキの曲の「フォーメーション」を具現化してるような感じがして。いろんな女性が一つのバンドにいるっていうのが。
YUKARI:メンバーの中でわたしだけが女なら、私が女の代表みたいになっちゃうじゃないですか。だけどニーハオ!!!! はアリちゃん、ミーちゃん、カオリちゃん、わたしが横に並んで、わたし1人じゃない。4人いたら4種類の女性、違う個を持つ女性がいる。それって良くないですか?
──いいいい! 一括りにされてたまるか! っていうか、一括りにできないしね。
YUKARI:「パワーパフガールズ」みたいなのがいいなぁって。
──いいねぇ。で、「女の子」とか「女性」ってことにこだわりがあるわけで。多様性を考える時、「性別なんか関係ない」っていう考え方もあるじゃん。
YUKARI:ニーハオ!!!!に関しては「女の子」とか「女性」にこだわりがありますね。女の子ならではの音を出したいって意味ではないんですけど…。でもガールズバンドとかフェミバンドとか、女の子バンドのカテゴリーとして敢えてやってます。