お客さんの期待をさらに裏切りたい
──ここからは2020年のことについて聞いていければと思います。まずはクラファンを経て、新アルバム『ALICE』はどんな作品になりそうですか。
田中:作家陣と詰めているのは、アリスという女の子が好奇心とか妄想とかイマジネーションから得た刺激を、音から感じられるような作品にしたいというところで。スマートにかっこいいトランスだけではなくて、もっと皮肉に満ちているというか。原作は当時流行っていた童謡とか言い回しをあえて皮肉にすり替えた言葉遊びがたくさん詰まった、ある意味下品な世界で。音からそれを感じられるように、とにかく捻くれまくって、でも全体を通して聴いてみると凄く美しいものにできればと思っています。なので、今までよりも実験していると思います。アリスが大きくなったり小さくなったり別世界に行ったりするように、音楽もそれだけとんでもないところに行ったり混乱の中でゴールに向かっていけるのか。今までで一番満足のいくアルバムになるんじゃないかと期待しています。
──クラファンがあって、お客さん側の期待値も可視化した上での作品作りというところで、意識されたものはありましたか。
田中:めちゃくちゃあります! 毎回毎回こうやってお客さんを裏切っていこうとか、この展開の中にこれが入ってきたらびっくりするよねとかを話し合って作ってはいるんですけど。今回は、さらにとんでもない経験をしたい方々が支援してくださったんだと考えていました。だからこそ、とんでもない経験をしたい方々がミシェルに支援してくださったということなんだと、そういうふうに思っています。お客さんはこういう曲を欲しているんだろう、で進んでいるんじゃなくて、その期待をさらに裏切りたい。
──新曲を提げた3月から始まるツアー『SIX ALICE REMIXED TOUR』の意気込みも伺えればと思います。
ミミミユ:ツアーとかアルバムでいろいろな人にもっと知ってほしいです。クラファンとかあらゆる期待を感じるから、それを超えるようなパフォーマンスで応えていきたい。あとは、もっとグループを大きくしていきたいです。なので、ツアーを観た人はいっぱい広めてほしいですね。新曲が10曲も増えるので、ツアー中はさらに世界観に深みを出していきたいです。
ブラジル:クラファンのパトロン数とか金額からも分かるように、……論文みたいな言い回しになってしまう(笑)。かなりの期待を背負ってはいるんですけど、それを圧倒的に上回るような結果を出していきたい。将来的には、世界中のフェスに呼ばれて踊れるようなグループにしたいので、アイドルファンではない人だったり、海外の方にも見つけてくださるようなきっかけになるようなツアー、アルバムにしたいです。今『ALICE』の世界観を理解するために、ルイス・キャロルの英語の原文を読んでいて。それもパフォーマンスに昇華できるように頑張りたいです。
一同:凄……。
田中:さすがに誰もまだ原文は読んでないよ(笑)。ちなみに日本で初めて発行された『不思議の国のアリス』の日本語版(明治32年)は、主人公の名前が「みいちゃん」(ミミミユのあだ名)です。
一同:みーちゃん!?
田中:それも調べていて面白かったな。
ミミミユ:これからアリスって呼んでください(笑)。
楽曲もお客さんの期待も全部を武器に
──ツアーというだけではなく、2020年という視点ではどうでしょうか。
ユブネ:今は人から人に凄く伝わっていきやすい時代で、ツアー中もミシェルをめちゃめちゃ良かった、なんなら他の地域に観に行ってみようかなと言わせるくらい、心に残るようなレイヴをしていきたいです。神奈川・川崎CLUB CITTA'ではクラファンの力をいただいて、会場をサイケデリックにデコレーションするんです。私たちもまだ想像できていないんですけど、CLUB CITTA'に異空間を作り出して、ぶちかまして、その先も期待していただけるような姿を見せつけていきたい。メンバーの絆が深まった分、自信もあります。2020年は楽しく全力で駆け抜けて、1年終わって振り返った時に目まぐるしく駆け抜けられましたって2021年に向かっていけるように、次の年も見据えて6人で頑張っていきたいです。
レーレ:ツアーは全国9カ所を回るんですけど、自分たちの現状も見られると思っていて。地方だとどれくらいの人が来てくれるのか、実感できると思うので。ツアーファイナルに向けて、勢いつけて登っていく感じができればなと。海外の方にももっと知っていただきたいし、日本にもミシェル好き予備軍がたくさんいるって最近サイケのフェスに行って思ったんですよ。昨日、サイケのフェス『OZORA Tokyo 2020』に行ってきて。日本に住んでいる海外の方がたくさん来ていて。ミシェルも、曲を作ってくださっているタニヤマさんも凄いんだぞってことをもっと知ってもらいたい。将来的には、PerfumeさんとかBABY METALさんのように海外でも活躍していけるようなグループにしていきたいです。だから、2020年はその次の年にどんなチャンスが来ても取っていけるような土台作りとしても頑張りたいなって思っています。
タマネ:せっかくツアーでいろんな地方に行かせていただくので、1ステージ1ステージを大事にして、新曲も楽曲ごとの世界観を大事にしながらファイナルに繋げていきたいです。いろんな人に知ってもらいたいし、知ってもらった方との出会いを大事にしたいです。もっと期待感を突き抜けるようなスピード感を出していきたい。あと、2020年、2021年、その先の将来を考えた時に、これだけは今日絶対に言いたいと思っていたんですけれど。妹が友達に「ミシェルって知ってる?」って訊いた時に、その友達が「もちろん知ってる」って答えてくれて、妹が「それ、私のお姉ちゃんなんだよね」って言ってびっくりされるくらいになりたい。
ブラジル:前は、「私のお姉ちゃん、タマネなんだよね」って言っても信じてもらえないくらいになりたいって言ってました。
タマネ:それです!(笑)
──そうなるための道を今着実に歩んでいるということですね。ナーナナラさんはどうでしょうか?
ナーナナラ:今、凄く期待していただけているのを感じるし、ファンの人も「これは、ミシェルくるぞ!」って言ってくださるのを見ているからこそ、ツアーが終わった時に、後から「あのツアーがピークだったね」って言われたくなくて。今勢いがついてるのも分かっているし、期待されているのも分かっているけど、期待以上を出さないと「きてたよね」で終わっちゃう。これからいろんな場所に行けるし、10曲も新曲が増えるのは、大きな武器になると思うので、それを大事にしていきたいです。2020年はオリンピックもあるので海外からたくさんの人が日本に来るし、そこで絶対目に止まるようなグループにならないといけない。私はこのメンバーならそれができるって思っているので。タニヤマさんの凄い曲も、お客さんの期待も全部を武器にして、唯一無二の存在になりたいです。そのために自分たちを鍛えて、みんなも言っていたけど、土台を作っていくのは大事だなと思うので、そういう1年にしていきたいと思っています。
田中:2019年って、メンバー全員が揃う機会が全然なくて。お客さんはバンバン露出してもおかしくないのにって思ってくださっていたんですけど、実はメンバーはレイヴとレッスンで精一杯で。針の穴を縫うような日程でした。余裕のない中でやってたんですけど。その中でも、勢いを衰えさせることなく、むしろ上げていけたのは、完全にメンバーの力だと思います。本当に感謝しかないです。今年は、さらに企画をどんどん打っていってプロモーションもかけて、やることやりまくって、去年にはない加速感を出していきたいと思っています。
写真:稲垣謙一