理想や平和を願って始めたらゴールはない
谷ぐち:YUKARIはボーカリストの意識になってるよね。人の心を動かすことができるボーカリストになろうと。そういう意識が無自覚のうちに出てきてるんじゃない?
YUKARI:最近思うのは、立ってるだけでも、何なら唄わなくてもボーカリストって言われる人でいたいっていう。今も何やってるかわからないボーカルなんですけど(笑)。私、メチャメチャ強くなりたいって思うようになりましたね。存在として。脆いとこも気弱なとこもある。そんなにいつも元気な人でもないんですよ、もともと。でも強くなりたいって思うようになった。40歳になったし、いろんなことを経験してきてるし。もちろんもっと経験してきた人、年上の方もいっぱいいるし、偉そうなことは言えないけど。でも、私が私なりに経験してきたことがあるって思えるようになった。メッチャ脆いけど、寄りかかってもらえるような人になりたいなって。
──リミエキは戦ってると思うし、現実を見てるし。気づかないでいたほうが楽だとしても、気づいて戦うことを選んだっていう。そうやって気づいていく人が増えていけば、世の中は変わっていくんでしょうね。
谷ぐち:俺、思うのは、たとえば、こんなメッセージなんて発信しないでいい世の中になればいいなっていう言い方があるじゃないですか。平和な世の中ならパンク・ロックを唄わなくていいとか、戦争がなくなれば反戦って唄わなくていいとか。そうかもしれないし、ニュアンスはわかるんだけど、ホントはそこで終わりじゃないですよね。
──平和になってもパンク・ロックは唄っていけるし。
谷ぐち:いや、そういうことじゃなくて。平和になったと思っても、さらに先はあるわけだから。そこで何かに気づけて発信できるんなら、そっちのほうがいい。
YUKARI:まぁ、全部が解決することはないよね。
──ああ、そうだね。平和になったと思ってもホントに平和か?っていう。
谷ぐち:うん。簡単に終わる道のりじゃないし、理想とか平和を願って始めたのなら逆にゴールはないっていうか。終わりにしてはいけないっていうか。
YUKARI:もしね、「フォーメーション」の歌詞を何年か先の未来の人が読んで、こんなことわざわざ唄わなきゃいけなかったんだーって思うくらい女性が解放されてたとしても、別のことで戦ってるだろうしね。
谷ぐち:そうそう。一つ解決しても次のフェーズが必ずあるだろうなって。ただ俺が言いたいのは、次のフェーズがあるっていう困難ではなく、そこそこいい世の中になったとしてもさらにいい世の中に向かっていくことができるってことだから。
──さらなる解放へって感じか。凄いなぁ。勇気が出ます。
谷ぐち:まぁ、でもね、偉そうなこと言ってるけど、普段は2人でしょっちゅうケンカしてて。YUKARIは頭にきてるから「バンドやめる!」とか言ってる。そしたら共鳴が俺のとこに来て、「パパの言い方が悪い。ああいう言い方は良くない」って。YUKARIにも「そんな簡単にバンドやめるとか言うもんじゃないよ」って(笑)。
──共鳴くん、凄い!
谷ぐち:うちでは共鳴が一番の人格者だから(笑)。