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INTERVIEW

トップインタビュー奇妙礼太郎×塚本功【完全版】- ふたりだとそれだけでリズムが生まれる

ふたりだとそれだけでリズムが生まれる

2019.07.05

今いる場所を一気に変えなあかんなと感じる時がある

──そういえば、奇妙さんは最近、所属していた音楽事務所から独立して、マネジメントも個人で行うようになったそうですね。何かきっかけはあったんですか?

奇妙:特に何があったということもないんですけど、4年ぐらい経ったし環境を変えたいなと思って。(事務所に所属して)いろいろ勝手にやってもらってたことがいっぱいあるのと、それについて自分が何もわかってなさすぎるところがあって、そういうのが嫌やなと思ったし……うーん、なんでしょうね、直接的にこれがどうとかではなく、なんとなく何かがピークになって。僕、これまでもそんなん多いんですけど、今いる場所を一気に変えなあかんなと感じる時があるんです。

──奇妙さんのトラベルスイング楽団にしても、世間的に注目が高まってきた時に一回活動を中断するなんてこともありましたが、求められるものが大きくなりすぎると、居心地が悪くなったりとか、窮屈に感じることがあるんですかね?

奇妙:そうですよね。まぁ、たしかにやめなくていいですもんね。

塚本:それって性分みたいなものなのかな? 作り上げてきて、完成型が見えてきたなって感じになると、一気に変えたくなるというか。

奇妙:なんかバイトとかしてても、全部わかってしまったら、違うとこで働きたくなるんですよ。

──そういう感覚はなんとなくわかるかも。頑張って働くけど、バイト先で社員にならないかとかいわれたら、そういうのでもないんだよな……とか思っちゃうような。

奇妙:うれしいんですけどね。事務所との契約は3月末で終了していて、事務所にいた頃に取ってもらった仕事などが完全に終わるのは7月末ぐらいですかね。あと、天才バンドのほうも去年の夏で一回終わったので、レコード会社との契約も終了してます。

──普通のミュージシャンの活動形態も、今は何が正しいというのもないとは思うんですが、所属するレコード会社やマネジメントを請け負う事務所があると、楽っちゃ楽じゃないですか? しかも二人とも、全国各地で演奏活動を行ってるから、事務的なことなんかも面倒だったりすると思うんですけど。

塚本:僕なんかは、これまでもがっつり事務所に全部預けるって形で世話になったことはないですからね。バンド単位で事務所に世話になったりもするけど、最終的にどれを優先するかっていうのは、自分の中で決め方を作っていくってところはあるかもね。

──奇妙さんなんかはライブの本数も多いし、オファーもたくさん来てそうだから、スケジュールを管理するだけでも相当大変そうです。

奇妙:ヤバイですね(笑)。だけど、仕事のメール返すのとかも、今は楽しんでやってますね。請求書や領収書を書いたりも、今までしたことなかったので。事務所に入るもっと前は、それこそ、仕事したらその日にもらう形でやってたから。まわりからはすげぇ心配されますけどね。「聞いたよ~、独立したんだってね。大丈夫?」って、どこに行っても言われて(笑)。みんな心配してくれて、ありがたいですけどね。

塚本:意外と結構、事務的な処理もできる人だったりしてね(笑)。

──バリバリに会計ソフトとか使いこなして、毎月の収支決算とか出してたり(笑)。

奇妙:案外ね! まぁ、こういう作業がだいたいわかったら、誰か頼める人にやってもらうのでもいいし、何にも考えてないんですけどね。

塚本:一人で活動してると、こういうやり方になるってのがある程度みえたところで、任せられる部分だけ他の人にお願いするってのが理想的だろうね。

奇妙:そうですね。これからは、一緒に仕事したいなって思う人と仕事がしたいなって思うんです。なんていうか、友達みたいな距離感の人と、チームみたいな感じで進めていくのが楽しいかなって。僕は一人やと、ずっと家でNETFLIX観てるだけの人間になっちゃいがちだけど、やっぱり人と喋ってる時に楽しいことを思いついたりするから。人と会うってすごい大事なことだなって思う。

──プロモーションに長けてる人とか、ライブの企画や演出を考えたりする人とか、それぞれに得意分野を持ってる人たちが集まって、ゆるい形のチームを作るのって、ものすごく今っぽいスタイルだと思うし、実際にも少しずつ増えてきてるんじゃないかと思います。

塚本:そうかもしれないね。例えばアルバム作ろうとか、企画を立ち上げて動き出すってのも、完全に一人のフリーランスだとなかなか難しい。ヴィジョンを持ってる人と一緒にやるといいかもね。

──大手のレコード会社にいたからって、メリットが多くあるわけでもないし、逆に大きい組織だからこそ、何かを実現するには超えなきゃいけないハードルがいっぱいあって、フットワークが重くなったりしますしね。音楽を作って世に伝える手段は、今やいくらでもあるから、既存の形態に捉われなくていいんだって、いろんな人が気づきはじめているんじゃないかって思いますね。そういうスタンスで、ずっとやってたのが曽我部恵一さんなんでしょうね。

奇妙:そうですね。曽我部さんは早いなと思いますね。

──レーベルとしては会社になってるけれど、スタッフ以外のミュージシャンやクリエイターたちも参加して、曽我部さんから湧き出るアイデアを支えるチームができているというか。配信だけでアルバムを作って、配信がはじまってからも楽曲をアップデートしながら再度アップし続けて、最終的にフィジカルで売るっていう。そうしたアイデアを思いついたら、すぐ実践できるってのはすごいですよね。

奇妙:それが曽我部さんの自然体というか。インタビューとか読んでも、ホンマやなぁって思いますよ。もちろん、僕自身が同じようにしなきゃいけないわけでもないけど、みんなそれぞれ自分のやり方でやっていけばいいというのを身をもって見せてくれてる。最高やなと思います。

どんどん相乗効果みたいなことが起きていく

──話が思いがけない方向に飛んだので、ここで話題を「ふたりのビッグショー」に戻します。一緒にセッションしてみて、塚本さんは、どんなところに奇妙さんのシンガーとしての魅力を感じましたか?

塚本:たとえばライブでやってても、あらかじめ決まった曲であっても、インプロビゼーション的な要素が大きい。歌の長さや間をすごい変えていく。その場その場で空気を作っていくのが面白いと思いますね。二人でやりはじめた最初の頃なんか、一緒にライブをやるといっても、事前に一言二言しか会話しなかったしね。

──前もってリハで合わせたりもしないんですか。

塚本:(奇妙のレパートリーである)「おおシャンゼリゼ」くらいですかね。具体的にこう弾いてくれみたいなことを言われたのは。阿佐ヶ谷LOFT Aでやる時も、サウンドチェックでは本番でやらなそうな曲をやったりしますよね。浜田省吾の曲とか。

奇妙:浜田省吾は、僕が好きなんですね。

──では、奇妙さんから見た、塚本さんのギタリストとしての魅力ってどんなところですか?

奇妙:塚本さんに限らず、誰かと一緒にやる時はいつもそうなんですけど、なんか自分がどこまでやるべきなのかとか、わからないんです。だから最初は探り探りやっていくんですけど、途中から、「この人、何やっても大丈夫やな」と思えると、どんどん自由にできるようになる。そういうことって、あんまないと思うんですけど、塚本さんにはそれを感じるし、一緒にやっててめっちゃ楽しいですね。

──先ほど塚本さんもおっしゃってましたが、奇妙さんの弾き語りって、自分のリズム感で自由に伸び縮みしたり、歌っている時の感情に任せて表現を膨らませていくのが最大の魅力でもあって。そこにセッションで入ってくるプレイヤーは、瞬時に読み取れる対応性や、柔軟にプレイできるスキルがないと、なかなか合いにくいですよね。

奇妙:塚本さんは、僕が別に勝手に何やっても、良くなってるような気がするので、めっちゃ楽しいんですよ。

──そういうプレイヤーは、なかなか存在しない?

奇妙:そうですね。

──塚本さんは、それこそ様々なシンガーやミュージシャンと数多くセッションしていますよね。

塚本:セッションって、相手によっては、やってるうちに「これ以上踏み込むとまずいな」とか「ここは放っておこう」って感じる時もあって。だけど、奇妙くんと一緒にやる時は、どんどん相乗効果みたいなことが起きていくような感覚があるんですよね。

奇妙:なんかね、一人でやってる時より楽しくなるんですよね。なんか一人やと、不安みたいなのもあるんです。ちゃんと伝わってるかなぁ、いい感じにイケるかなぁとか。だけど二人やと、そういうのも別にどうでもよくなってくるってていうか(笑)。

──二人だから責任も半分半分ってわけでもないし、ウケようがウケまいが楽しければいっか、みたいな。

奇妙:なんかわかんないですけど、そういうのなくなりますね。最初から、そういう感覚すらないというか。

塚本:ずっと楽しいから、放っておいたらライブがいつまでも終わらない(笑)。下手したら永遠にやってられるしね。とはいえ、疲れてはくるから、「そろそろ終わりです」みたいなところを見せないといけない。ある時は、最後になるだろうという曲を僕が一途に弾きはじめて、強制的に終了させたこともありましたね(笑)。

──そうでもしないと、お客さんも帰れなくなっちゃいますから(笑)。

LIVE INFOライブ情報

2019年7月17日(水)奇妙礼太郎×塚本功 LIVE ふたりのビッグショーVOL.5

阿佐ヶ谷ロフトA

OPEN 18:30 / START 19:30

前売¥3,500 / 当日¥4,000(共に飲食代別)

前売はe+にて発売中!!

【出演】奇妙礼太郎、塚本功

 

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