映画やアートや音楽の世界をコウモリのように飛び回る
──アルフォンヌは7月4日(木)にベッシーホールで開催される怒髪天の結成35周年企画『極楽元年(予想)四都巡啓〜青春データ補完計画札幌編〜』でSLANGやシェッタガーリアと共演しますが、こうしたイベントに出演することに対して、またかつての盟友たちに対してどんな思いを抱いていますか。
小磯:このイベントに誘われた時は、再結成も無事終えて、アルフォンヌを元のように封印していた時期だったので、辞退する選択しか考えることができませんでした。しかし数日考える時間をもらい、悩み抜いて決めたことが、どうせ自分には時間がそんなに残っていないのだから、こうなったらシャドーと最後までアルフォンヌをやっていこう、でした。この歳まで生きていくと、いちばん面白いのは〈腐れ縁〉のような気がします。まさかこの4バンドが今頃集結するなんて「お天道様でもわかるめぇ!」ですよね。こんな突拍子もないワクワクする事件を巻き起こすなんて、さすが怒髪天。やっぱり盟友は仲間というより、ライバルみたいなものだから、音楽はもちろん、それぞれの生き様に興味があります。
──ちょっと話が逸れますが、かつて1990年から1991年にかけて怒髪天やイースタンユース、ブラッドサースティ・ブッチャーズなど札幌のパンク・バンドが大挙上京しました。その先陣を切ったのも小磯さんで、一足先に札幌へ帰ったのもまた小磯さんでした。そうした機を見るに敏と言うべき習性は小磯さんの直感に負う部分が大きいのでしょうか。また、数年間の東京生活で得たのはどんなことですか。
小磯:東京での生活は、己の弱さをよくわからせてくれました。振り返ってみれば、ただ風に流されているだけのような気がします。カヨさんを始めたくさんの素敵な方たちが、頼りない自分に構ってくれて感謝ばかりです。
──今後、『ReguReguのパペトピア劇場』のような上映会を各地で開催していく構想はありますか。
小磯:奇特な方に声をかけていただけたらやってみたいのですが、カヨさんは絶対一緒に来てくれないし、不安ばかりになりそう…。でも去年、京都のギャラリーのグリーン&ガーデンでのグループ展に参加したら、オーナーが全力オナニーズやドリルマンのメンバーだった魅力的な方で、バンドつながりでも仲良しになったので、これから京都は特別な所になりそうだし、実際、10月に何かやりに行きます。あと、札幌の美術家たちと7年前からやっているショートムービーの企画は、傑作がたくさん生まれているので、そっちのほうもたくさんの人に観てもらいたいなんて想いもあり、ヤヤコシイ感じです。
──小磯さんほどのキャリアのある方なら、いろんな伝手をたどってReguReguの作品を各地で上映する機会を設けられるでしょうし、ReguReguの名をもっと世に知らしめる術があると思うのですが、それをあえてしないのはアーティストの本分をわきまえているからなのでしょうか。
小磯:ReguReguは始めてまだ10年なので、駆け出しのようなものです。映画やアートや音楽の世界をコウモリのように飛び回る感じをわかってもらうまでには、もう少し時間がかかるような気がします。
──最後に、『ReguReguのパペトピア劇場』を鑑賞する皆さんにメッセージをお願いします。
小磯:できることならいろいろなジャンルに穴をあけてみたいのです。近年、PCやスマホの進化で誰でもそれができるようになりました。人が苦手でも映画はつくれるし、楽器ができなくても音楽は奏でられます。なんだかまるでパンクやニューウェイヴに勢いがあった1978年みたいでしょう。どうか〈こんなやり方もあるんだ〉と僕らを味わってみてください。あと、Tシャツやトートバッグなどのオリジナルグッズを持ってゆきます。初めてつくってみたのですが、これがなかなか良い感じです。
カヨ:こんな身に余るような舞台を用意していただいたのに、私は会場には行けなくて申し訳ないです。でも心はシネマート新宿に飛ばしています。来てくださる皆さんに、ちょっと寂しい、ちょっと不思議な思い出を残すことができたら、とても嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。