ライター・物書きとしてのイノマー
峯田:イノマーさんと知り合ってから、ふたり、めっちゃ仲良いってイメージあると思いますけど、どっかやっぱり仲良くなりすぎてない部分があって。距離はあるんですよ。
──あ、そうなんですか!? 意外ですね。
イノマー:そうね、そこは考えてる。ズブズブの関係にだけはならないように、って。オイラ、実はこれでもね(笑)。
峯田:お客さんからしたら“イノマー&峯田”ってコンビみたいな感じだと思うんですよね。でも、それはちょっと違うというか。
──そこは演じてるんですか?
峯田:だと思います。でもすごい好きな人だし。男の人にラブレター書くなんて(笑)。
──そこまで思いが強いと話せないですよね。
峯田:人が書く文章に惚れるってあるんですよ、多分。
イノマー:だからだと思うよ。文章からオイラに入ってきたから。完全にそれってアイドル(偶像)だからさー。峯田くんが勝手に頭ん中、妄想で作り上げた(笑)。
峯田:そうなんでしょうね。でも、一方的にだけど。『インディーズ・マガジン』、ヌンチャク解散のときのイノマーさんの「ヌンチャク解散に寄せて」っていう文章。「ザーメンまみれの男たちが旅を終えた」っていう1ページのコラムが忘れられない。本当にこんなこと書いてくれる音楽ライター……こういうところに、こういう人がいるんだな、っていうのがずっと忘れられない。
イノマー:いや、死んだわけじゃないから。
峯田:だから出会いが雑誌の中の文章だったから、いくら仲良くなってもあん時のイノマーさん。それはずっと変わんない。
イノマー:惜しい人を……って、まだ生きてるから(笑)。何かヤだな。
──その話、初めてされました?
イノマー:峯田くんとオイラ、そういう話は一切しないから。この20年。初めてだよ。
峯田:いや、イノマーさん、ちょっと弱ってるし。死にそうだからこういう話もちゃんとしないといけないな、と思って。
イノマー:死なないといけない流れに……。
峯田:本当ね、声も好きだし、曲も好きだけど、本当にこの人の文章はすげぇんだ! マジで。若い人が読んだらブッ飛ぶと思うんだよな。
イノマー:弱っちゃったな(笑)。
峯田:忙しいほうがいいよね、ちょっとくらい。
──両手空いてますからね。
イノマー:両手もチンポも空いてる。
峯田:声なんかなくったってね?(笑)
イノマー:要らないよ、そんなもん(笑)。
──書くほうもこれからすごい楽しみですね。
イノマー:まー、そうだね。第二の人生は。
峯田:一個感覚なくした人が、もう一個の残った感覚で研ぎ澄ましてやる仕事も見たいよね。
神様の悪ふざけ
──ところで、オナニーマシーンの20周年記念アルバム『オナニー・グラフィティ』が完成しましたね。
峯田:良いジャケっすね。
──これは今年の8月、ソフト・オン・デマンドに毎週通ってAVジャケットのデザイナーさんに作ってもらったんです。
イノマー:デマンドの素人モノを意識して。
──プロモーションビデオもAV監督に撮ってもらって。
峯田:発売が12月っすか?
──12月5日です。
峯田:おめでとうございます。もう何枚目になります?
イノマー:14か15枚目じゃないかな? バカだよね。変わんないよ。変わんない。全然変わんない。なーーーんも変わらない。
──20年、何も変わらず。途中、メジャー・デビューもして。
イノマー:ドーーーン! と落ちて(笑)。
峯田:メジャー行ってんすもんね。
イノマー:体感時間5秒くらい(笑)。
峯田:メジャーの洗礼がね(笑)。
イノマー:でも、よくもまー、同じメンバーでずっと何も変わらずやってきたなと思って。
峯田:すごい、本当に。いや、同じメンバーでやるって本当にすごい。
──癌になったことを最初に伝えたバンドマンは峯田さんだったそうですね。
イノマー:メールで伝えたら、次の日に電話がかかってきて。「イノマーさん、面白くなってきましたね?」って。ふたりで大爆笑。
峯田:あの時期、本当に忙しくて。ドラマの撮影で横浜行ってた夜中。撮影の合間に電話で話して。その直前にマネージャーの江口くんから聞いてたんですよ。「イノマーさんが大変だ!」って。「マジで!?」みたいな。でも俺、予感っていうか……大して驚かなくて。
イノマー:うん、驚いてなかった(笑)。
峯田:「こっからっすよね?」って。こうなるべき人だな、って。
イノマー:実はさ、スゲー落ち込んでたんだけど……そうだよな、面白いよなこれ、って。これを面白いと思わないとイノマーじゃない! って、脳ミソがパチンって切り替わる音がした。癌、バンザイ! って。
峯田:バカだなぁ(笑)。なんでこんなバカなんだろう?
イノマー:オイラも思う。バカだな、って。だってさ、なんでわざわざ癌になるのよ?
峯田:羨ましいよ。普通のバンドマンが同じ状況だったら立ち直れてないと思う。イノマーさんだから神様が「こいつバカだからこんくらいにしとこう」みたいな感じで。普通の人だったらもうヘコんで終わりで、もうバンドもやめますって。
イノマー:そう思う(笑)。神様は「20周年? 20周年はさすがに手ぶらじゃダメだろう!」って、癌っていうお土産を持たせてくれた。
峯田:だって世界中、どこ探してもこんなバカみたいなこと唄ってるバンドを20年やってる人間なんていないんだから。そんくらいの価値がつかないとね、ボーカルが。
イノマー:価値が癌かよ?(笑) 神様、見てるな〜〜。チェック厳しい。
峯田:神様っているね。ちゃんとね。バンドも生き物だから成人式迎えて、ステージをひとつ上に、するとステージ5だっけ?
──上げちゃダメですよ(笑)。
イノマー:それ、死んでるから。
峯田:これがオナニーマシーンの「ステージ5」ですよ。こんな曲ばっかやってきたんだから。そりゃまともでいらんないよ。こんだけのことになってくんねぇと。
イノマー:因果応報だね。
峯田:結果としてはなるべくしてなったっていう。