オナニーマシーンが結成20周年。古巣のLOFT RECORDSからその記念アルバム『オナニー・グラフィティ』をリリース。全曲新曲の録りおろし作品は、ファースト・アルバムから何ら変わらない小学生レベルのウンコ&チンチン・サウンド。
「ふふふ、イノマーさん、面白くなってきましたね? これからッスよ」というCD帯コメントは、ボーカル&ベース・イノマーの盟友である峯田和伸(銀杏BOYZ)によるもの。イノマーが今年の7月21日に口腔底癌のレベル4であることをカミングアウトした際、ふたりの間で交わされた言葉から。
癌の治療中ということで上手く喋れないイノマーと、それを温かく見守る峯田和伸による、どこかほっこりとする対談(?)。ゆっくり、の〜んびりとイノマー&峯田がぽつぽつとこの20年を振り返りつつ、未来を語る!(interview:大塚智昭 / photo:丸山恵理)
ふたりの出会い
峯田:こんなことになるとわかってたからな、どっかで俺。
──癌の話を聞いたときからですか?
峯田:いや、もう全然前から。もっと酷かったから。酒、酷いときとか。
イノマー:アルコール依存症のダメなオイラを知ってるからね、峯田くんは。
峯田:野垂れ死ぬんだろうな、みたいな(笑)。10年前とかね。
イノマー:峯田くんと一番よく会ってたのは10年前くらいだけど、当時がいちばん酷かったよね。
峯田:やりたいこと全部やってましたよね?
イノマー:10年前、今の峯田くんの年齢くらい。廃人への準備期間みたいな。
──そもそも、ふたりの最初の出会いはいつ頃だったんですか?
イノマー:出会いだけだったら、スッゲー昔(笑)。オナマシをやってなかったかもしんない、出会ったばかりの頃は。『恋のABC』(2002年4月)を出す前だもん。
峯田:ゴイステが『さくらの唄』(2001年7月)っていうアルバムを出す前です。だから、会ったのは2000年くらい?
──イノマーさんがオリコン時代ですか?
イノマー:たぶん、そうなる。
峯田:まだ辞めてなかったんじゃないかな。
──仕事で会ったんですか?
イノマー:仕事、仕事。でも、その後に、オイラの2度目の結婚式のパーティーに峯田くんが来てくれて。呼んでもないのに(笑)。
峯田:あはははは。
イノマー:その会場のステージの上で、なぜかぶ厚いラブレターをもらった(笑)。
峯田:結局、奥さんとは別れたんだけどね。
イノマー:うん、離婚した(笑)。
理想と現実
峯田:高校3年生でイノマーさんが作ってた雑誌『インディーズ・マガジン』(1995年創刊)を知って、イノマーさんの文章と出会って。面白いライターというか、面白い文章書く人だなぁ〜〜って。
──会いたいな、と思っていた?
峯田:ずっと会いたかった。俺、だからバンドやって、いつか自分の出したCDとか、イノマーさんにレビューとか書いてもらうのが理想、憧れだった。
イノマー:でも、実際に会ったらこんな男でね(笑)。申し訳ないよ。
峯田:いや、実際に会ったら本当に面白くて、良くしてもらって。
イノマー:いや、何もしてない(笑)。
峯田:で、イノマーさんが『STREET ROCK FILE』(2001年創刊)って雑誌を新しく作るってときにまたお世話になった。長崎にもね、来てくれて。表紙の撮影して。
イノマー:そうそうそう。あれは楽しかったし、衝撃的だった。『さくらの唄』のツアー、九州方面に密着させてもらって。あんときのね、ゴイステのライブがハンパなかった。負けてらんねー! ってゲンコー書いたもん。
峯田:あはははは。
イノマー:離婚してオリコンも辞めて、生命保険とか解約して、それを元手にやることもないのに下北沢に事務所作って。ひとり引きこもって事務所でオナニーばっかしてた。
──仕事がなかったんですか?
イノマー:うん。ま、どうにかなるでしょ、って思ってたら、『STREET ROCK FILE』(宝島社)を創刊することになって。
──オナマシはもうやってたんですか?
イノマー:オナマシの初期ね(笑)。音源も出してなかったもん。当時、ギターのオノチンとずっと一緒にいた。オノチンも暇でやることないから、事務所で音楽聴いたり、お菓子食べたり、お絵描きしたりして。
──小学生みたいですね。
イノマー:いや、中学生かな? 恋バナばっかしてた。SMAPの「らいおんハート」とか聴いてた。オノチンに好きなコがいて「告っちゃえよー!」とか言って電話したりして。オナマシはその延長だから。
峯田:吉祥寺とかでライブやってましたよね?
イノマー:そうそう、オイラに黙って峯田くん、観に来てくれてたみたいで。
──なんで黙ってたんですか?
峯田:自分から声かけらんない。そんな仲良くなりたいとか……ムリ。
イノマーはすごいボーカリスト?
──何だか今日は貴重な話が出てきますね。
イノマー:貴重なのかな?(笑)
──憧れてたイノマーさんとよく会ったりするようになったのは?
峯田:雑誌『STREET ROCK FILE』で、ふたりがダラダラ喋るコーナーがあって、その取材のたびに下北とかで会って。
イノマー:オイラはお酒、峯田くんはジンジャーエール。ゴハン食べながら、ずっと女のコの妄想話をするだけの時間。
峯田:『真夜中のふたりごと』って単行本(2002年刊行)を出すためにいろんなとこ行ったもんね? 女の子に会いに行って。あと、ラジオもやって。
イノマー:週の半分くらい会ってた(笑)。
──峯田さんがオナマシを生で初めて観たのはいつだったんですか?
峯田:『さくらの唄』を出す前だから、2000年くらいじゃないかな。吉祥寺のライブハウス。
イノマー:その辺のことは峯田くんがオナマシの『彼女ボシュー』のライナーで書いてくれてる。
峯田:当時、付き合ってた彼女がけっこう音楽好きな人で。彼女の部屋に遊びに行ったら『彼女ボシュー』があったんですよ。で、なんでこんなの持ってんの!? って。
──こんなの(笑)。
イノマー:あんなの(笑)。
峯田:こういうのを聴くタイプの人じゃなかったんで、びっくりした。
イノマー:良い話だ。
──峯田さんから見たオナニーマシーンはどうだったんですか?
峯田:いやもう最高すぎる。最初から印象変わんなくて、みんなどう思うかわかんないですけど、ボーカリストとしてすごいんですよ、イノマーさんは。
イノマー:さすが。わかってる!(笑)
──どういう部分ですか?
峯田:上手い下手とかじゃなくて。あんだけオノチンさんのうるさいギターの中でちゃんと埋もれない、通る声を持ってる。どこにもいないタイプのボーカリスト。本人はボーカルとも何とも思ってないけど。
イノマー:やっぱり、峯田くんは違うな。そういうこと、わかっちゃうんだな。オイラが言わなくっても。バレちゃう(笑)。
峯田:一度聴いたら、残る声なんですよね。
イノマー:もういい、もういいよ(笑)。オイラが言わせてる感が。あははははは。
峯田:いや、でも、音程も外れてるしさ。上手くはないのに。でも声がすごい。喋っててずっと思ってた。
イノマー:言ってよ〜〜、もっと早く。舌切っちゃたよ(笑)。