ポップな芸風が特徴的だったよしもとのトリオ芸人「Bコース」。トリオとして活動中の頃から、ギャガーとしてその頭角を現し、『あらびき団』などに出演。タイツの限界に迫る"タイツ芸"を編み出し、数々のギャグを生み出してきたハブサービス氏が、年に1度開催しているのが「ハブ1 GP」である。その年に生まれたギャグの中で、最高のものを決める。これまでに59回開催をして、59連覇を成し遂げてきたという氏と、59回中58回MCを務めてきたキクチウソツカナイ。氏に、これまでの軌跡について振り返ってもらった。[interview:石崎典夫/text:マツマル(LOFT9 Shibuya)]
もともと脱ぐのが好きだったんですよね
――僕は何度もハブさんのステージを見ていると思うんですけど、いつの間にかタイツ芸になっていたイメージがありまして(笑)。そもそもタイツ芸を始めたキッカケって何だったんですか?
ハブサービス(以下ハブ):ルーツ的にはけっこう小さい頃からかもしれないですね……。昔から無意識でチンコ出すような子供だったので。同窓会で再会した友達からは「マジで何も変わってないね」って言われて(笑)。もともと脱ぐのがすごく好きだったんですよね。
――「ネタ」としてやり始めたのって、いつからなんですか?
ハブ:ネタとしてだと、トリオ(Bコース。2012年解散)の時ですかね。当時、毎週ネタを一本作らなきゃいけなかったんですけど、昔の相方はどちらも脱ぐのを本気で嫌がっていて。一回だけ、ストレスが溜まっていた時に、「裸に見えるようなパンツを穿いてたら脱いでもいいんじゃないか」と思いまして。当時付き合っていた彼女の生理用パンツがちょうど裸に見えるようなやつだったので、それを試しに穿いたときに“パチッ”とパズルのピースがハマった音が聞こえたような気がして(笑)。そこからネタとしてやりだしたのかもしれません。
――そうだったんですね、初めて知りました(笑)。
ハブ:あとはとんねるずさんの『細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』に出場した時に、オーディションで受かるためにタイツを使ったのが今のタイツ芸の始まりかもしれないです。たしか「手羽先」のモノマネをした時ですね。
――前に読んだインタビューで、Bコースでやっていた時、徐々にハブさんの作ったネタがあまり採用されなくなってきたことにジレンマがあった、と書いてありましたけど。
ハブ:最初はそうでもなかったんですけどね、トリオを続けているうちに、だんだん僕がネタを持ち込む量が多くなっていったんですけど、あくまで「平等に」ネタを採用していたので、僕のネタは自然とボツになる率も高くなってきていて。それで我慢できなくて『あらびき団』にネタを持ち込んだりしたんですけど、ありがたいことに何度も採用されて。その辺からバランスが崩れて、解散したと(笑)。
――そうだったんですね。
ハブ:そう思うとタイツ芸に味を占めたあたりから、解散のカウントダウンは始まっていたのかもしれないですね(笑)。
――他にもピン芸はあったと思うんですけど、タイツ芸が一番しっくりきた感じですか?
ハブ:うーん、ギャグの大会とかにはけっこう出場してたんですけどね。そこでも入賞したりして。「ピンの方がうまくいってんじゃん!」みたいなおごりが出ちゃっていたのかもしれないですね。「ほぼ裸みたいなもんだし、俺が一番リスクあんだぞ!」みたいな。
――キクチさんから見て、ハブさんはどんな風に見えていましたか?
キクチ:ぼくもトリオ(ポテト少年団。2015年解散)をやめた身なんですけど、「トリオ内の戦い」っていう意味では全然違っていて、僕らは「無い知恵を絞って戦う」タイプだったのに対して(笑)、Bコースさんはそれぞれ異なった才能の持ち主だったんじゃないかなと。正直Bコースさんには「復活してほしい」っていう気持ちはあったりしますね。
キクチウソツカナイ。
深刻なる色つきタイツ不足
――「タイツ芸」にも遍歴というか歴史的なものってあったりするんですか?
ハブ:歴史っていうか“流行り”がありますね。「食べ物」ばっかり作るときとか、「キャラクター」ばっかり作るときとか、「地下鉄の駅」シリーズとか。ちなみに今は「顔面」を作るのにハマッてますね(笑)。
――顔面ですか、たとえば誰のですか?
ハブ:加藤一二三さんとか、布袋寅泰さんとか(笑)。あとは新しい色のタイツを手に入れると、急にネタの幅も広がるんですよね。
――なるほど。
ハブ:いつも『靴下屋』さんでタイツを仕入れていたんですけど、気づいたら一気にカラーが減っていて。今もう白・黒・肌色の三色くらいしかなくて。全く世界が広がらなくなってしまったんですよね……。
――たしかに、ハブさんの「エビ」もできないですね。
ハブ:昔、新宿ルミネの『靴下屋』さんに通っていた時、最初は変な目で見られてたけど、だんだん店員さんが「いい色、入荷しましたよ!」とか話しかけてくるようになってきて(笑)。
――寿司職人と魚河岸の関係みたいな。
ハブ:それでけっこう調子に乗って、『靴下屋』さんに「吉本とコラボCM作りませんか?」と話を持ち掛けたんですが、「タイツは被るものじゃなくて履くものなので嫌です」とあっさり断られてしまって……。
キクチ:正論ですね。
ハブ:だからその辺から『靴下屋』さんも僕という存在が怖くなって、タイツの色を減らしたんじゃないかと疑ってるんですよね。
――そうなんですか。
ハブ:今、ホントにどこにいっても黄色のタイツが売ってなくて……。黄色の60デニールが手に入るのであれば5000円払うので、ぜひ譲ってほしいです!(笑)。