「master+mind」が主催する年始のROCKフェスティバル【Rock is Culture 2018】にて、2月15日に開催するソロ・アーティストの2人の対談を実施!
今対談が初対面の2人だったが、"ボクシング"という意外な共通点をきっかけに、かなり深い部分も語り合い、とても興味深い内容となった。後日公開となるwebRooftopでは、前半と後半にて公開。その深さをじっくりと感じて、是非2月15日の新宿LOFTの2マンに足を運んで欲しい!
[interview:河西香織(新宿LOFT)]
音楽を始めたきっかけ
——音楽を始めたきっかけは何だったんですか?
mitsu:うちは姉が3人いるんですけど、父が姉を歌手にしたいという家だったんです。ただ音楽一家とかでは一切ないんですけど。
卓偉:何番目のお姉ちゃん?
mitsu:一番上と三番目の姉が歌が好きだったんです。「常に近くに音楽があった」みたいに言えると格好いいんですけど(笑)、ピアノがあって姉貴に釣られてピアノを弾いたりとか、スナックに行って歌わされたりとか、そういうのが小学生時代からあって、歌うことが好きだったのがきっかけというか始まりだったかなと。元々自分は格闘技でボクシングを12〜17歳までずっとやってたんですね。小学校、中学校くらいにフォーク系のユニットとかの音楽が好きになって、高校の時に軽音部が盛んな場所があって、そこに行って流れでバンドを組んだんです。最終的には文化祭でメインステージに出ることができて、その時に初めて400人くらいの前でライブをやった時に、それまでの人生で得た経験のない、未知な感覚を受けて。
卓偉:その時は、もうボーカルだったんですか?
mitsu:はい。ギターを弾く曲もありながらのギター・ボーカルみたいな感じで、その当時のメロコアや青春パンクみたいな曲をやっていて。なのでボーカルと言っても、今みたいに“歌う”というよりも、叫んでるような、盛り上げるようなものだけの感じだったんですけど。今思うと、それがきっかけですかね。
卓偉:今は、ボクシングは辞めちゃったの?
mitsu:17歳からプロになるライセンスを取れるようになるんですけど、17になる手前の16歳の時に、自分が通っていたジムにプロの方がいて、「お前は長いし、そろそろプロを考えるならやってみるか」って言われて、試合じゃないんですが、ジムの中で本格的なスパーリングをやり始めたんですけど、鼻が折れたんですね。
卓偉:鼻が! 殴られて?
mitsu:はい。元々自分の父親も格闘技をやっていて、身内にもプロでやっている方もいて、野暮な言い方ですけど「世界一になれなきゃ食っていけないから、一番じゃないなら辞めろ」って言われてたんです。自分は負けん気がすごく強かったんですけど、ちょうどバンドがすごく楽しくなってきてた時期だったので、いい機会かなって思ったんです。今まで1つしかやってきてなかったものが2つになって、初めて気持ちが揺れたんですけど、何も手が出せなかったんですね。で、その時にきっぱりと「ボクシングを辞めよう」って。多分その時点で心ではちょっと音楽に傾いていたんですけど、長くやってきたことのいい踏ん切りかなって思って。
卓偉:今でも、好きは好きなんですか?
mitsu:はい、好きです。格闘技を観るのも好きだし、ボクシングのために学校で柔道もやっていたので、1人で戦う精神みたいなのは、いまだにすごく為になってるのかなって気はします。
卓偉:いきなりいい話を聞けましたよ。うちの親父はもう亡くなってるんだけど、親父もすごくボクシングが大好きで、家にサンドバックがあったり、ヘッドギアがあったりとかしてて。
mitsu:そうなんですね! 自分も父が亡くなってるんですけど、家にサンドバックみたいな叩く物があったんです。
卓偉:そうなんだね。だから小さい頃から、世界チャンピオンの試合とかは常にテレビで観てたし。
mitsu:卓偉さんご自身も格闘技をっていうお気持ちはあったんですか?
卓偉:観るのはもちろん好きなんですけど、やるっていう感覚ではなかったですね。でも望んでないのに、グローブとかヘッドギアが家にあって。
mitsu:グローブはまだしも、ヘッドギアがあるっていうのは相当ですね(笑)。本当に好きだってことだと思います。まさか、ボクシングの話がこんなにできるとは思いませんでした。こんな共通な部分があるとは!
卓偉:そうだね(笑)。
mitsu:卓偉さんのライブ映像をかなり観させて頂いてるんですけど、動きのキレを観ただけで、何かやってるんだろうなって思ってたんです。
卓偉:ボクシングをやってるわけではないよ(笑)。
mitsu:意識だと思うんですけど、細くて体つきがいい人でも、格闘技を観てるかどうかとか、ダンスをやってるかとかって、何となく動きのキレとかに出ると思うんです。例えばキメの一発でも、僕は格闘技をやっていたので、ただの音楽のノリっていうよりは、動きもキメが入る気がするんです。だからそれを感じていたので、「あー、そうなんだ!」って、今裏付けを感じた気がしました。
卓偉:でもボクシングって、基本リズムじゃない?
mitsu:そうですね。
卓偉:ヘビー級とか海外の黒人って、基本的にヒップホップを聴きながらやってるっていうくらいね。だからうちの親父も、「ステップとかっていうのはリズムなんだ」って。めちゃくちゃジャズが好きだった人だったりしたから、子供ながらに、打楽器にしてもリズムが鳴ってるものの方に興味があったんで。だからボクシングが好きだった理由は、縄跳びをするにも早く縄を回さなくてもいいから一定に飛び続けるんだとか、決してペースを落とさずに走り続けるとかっていうのがあって。それは今も活きてて。だから大きい筋肉の人よりも、バンタム級とかフライ級くらいの無駄のないすっきりとした筋肉の付け方をしてる人が好きなんですよね。
mitsu:なるほど。自分は今だらしない状態なので、あんまりその辺りの話は広げたくないかなって(笑)。
卓偉:いやいや(笑)。でもやっぱり、ボーカリストはそういう鍛え方を知ってる人の方が、体力もありますし、声も出ますしね。
mitsu:それはあるかもしれないですね。いや〜、嬉しい話でした!
卓偉:音楽を始めたきっかけに、歌と同時にボクシングがあるっていうのは、すごい魅力的な話ですよ。勉強になりました。
mitsu:ボクシング自体が音楽のきっかけだっていうよりかは、音楽をやるための決別に近かったんですけど、今のお話のおかげで、そういう共通してる所があったのかなって。
卓偉:いい話ですよ。僕もミュージシャンになりたいって思う前は、美容師になりたいって思ってて。親父にも「美容師になりたいから、高校には行かずに美容学校に通わせて欲しい」っていうOKが取れてたのに、mitsuくんと同じように、中学生の文化祭で初めて人前で歌って、“歌う”っていう快感というか、自分の中の殻を破った感じが初めて分かって、それで「美容師じゃない」っていう決別があって、ミュージシャンになろうと思ったんです。美容師を目指すのは辞めたけど、今でも美容的なことは好きなんですよ。ファッション雑誌とかを見るのも好きだし、ヘアメイクも全部自分でやるし。
mitsu:普段から卓偉さんの服装を見ていて、他のアーティスト以上にここまで服装でイメージをちゃんと作っている人ってあんまりいないと思うんですよ。ジャケットを着るし、セットアップといえば自分の中では絶対に卓偉さんが出てくるし、ストライプとか、ちょっと海外の形の要素がすごく入っていて。最近のアーティストさんだと、自分はそこまでイメージが湧かないので。
卓偉:自分は来年40歳なので、最近の20代、30代の方は分からないんですけど、自分が好きなブリティッシュ・ロックっていうか、60年代、70年代のロックをやっていた洋楽の人たちっていうのは、とにかく音楽とファッションっていうのが、常にイコールで。
mitsu:繋がってますね。
卓偉:こういう音楽をやる時は絶対にこういうファッションだったってみたいなのが、過去にそういうものが残ってるんで、ファッションだけ見てても音が聴こえてくるような感覚がティーンネイジャーの時からあってですね。
mitsu:それはすごいですね!
卓偉:もちろん、ギャップもあるんですよ。すごいドレッシーな格好をしてても、実は曲はすごいポップだったりとか、その真逆もあるわけなんですけど。それを見て育ったっていうのもあったり、年齢を重ねることによってフォーマルとかもそうだけど、ちゃんとした格好で音楽としっかりイコールになっているっていうところに、自分で行きたいと思ってるんですよね。