LOFT9 Shibuyaに欠かせない、様々なジャンルに特化した"外部ブッカー"の存在。そんな外部からLOFT9のイベントを支えて下さっている方々にお話を聞くインタビュー企画。1回目はオープン当初から映画イベントでお世話になっている松崎まこと氏に、この1年を振り返ってもらいつつ、若手映画監督たちを取り巻く現状などについてお聞きしました。【interview:石崎典夫(LOFT9 Shibuya)】
LOFT9での1年を振り返って
――LOFT9の外部ブッカーの方にお話を聞いて行こうという企画で、1回目は映画イベントでお世話になっている松崎さんです。
松崎まこと(以下:松):ありがとうございます。お世話なんて、そんな大げさな(笑)。
――松崎さんとはLOFT9がオープンする1ヶ月ぐらい前に下北沢「B&B」のイベントに僕が見に行ったのが、はじめましてですよね。
松:そうですね、「“田辺系”監督&女優大集合!~田辺・弁慶映画祭セレクション2016前夜祭~」(2016.6.2開催)ですね。あの時は山本真由美さんとか、小川紗良さんとか、堀春菜さんとか、キレイな女優さんが揃って、いいイベントでしたね(笑)。
――その前から松崎さんのお名前は知っていました。ロフトプラスワンで北野誠さんのトークライブ(『ニッポンの誠』2011年から2012年まで定期的に開催。ゲスト堀江貴文、河野太郎、上杉隆など)で、松崎さんが構成に入っていて、普通トークライブの台本って進行がザックリ書いてある程度なんですけど、松崎さんの台本見たら質問事項がビッシリ書いてあって、よく調べてるなーと。それでお名前を覚えてたんですよ。
松:あぁ、あのイベントも後半は、動員苦戦しましたけどね(笑)。
――それで挨拶も兼ねてイベント見に行った際に、失礼ながら和歌山でやってる映画祭というのもそこで初めて知ったんですけど、すごく若手監督や俳優をピックアップして育てて行こうという意識が強い映画祭なんだと感じました。
松:そうですね、和歌山県田辺市で毎年11月に開催される「田辺・弁慶映画祭」も、今年で11回目になるんですけど、始めた頃は韓国・中国映画も上映していて趣旨が今イチ明確じゃなかったんです。それが4回目から日本のインディーズ映画に特化して、そこからグランプリ獲った作品は、テアトル新宿でレイトショー上映できるという道も作られて。
――そこが明確ですよね、入賞するとテアトル新宿で上映が出来るという。
松:今年はグランプリ作品の上映だけで10日間、他の賞を獲った2名の監督にも、それぞれ6日間と5日間、上映期間が与えられたんで、合計で21日=3週間の上映! 僕はほぼ毎日司会をし、死にそうになりましたけど(笑)。
――それからLOFT9でイベントをやって頂くようになって1年経ちましたけど、やってみていかがですか?
松:特に手応えがあるのは『SHINPA』ですよね(若手映画監督10名がとっておきの短編作品を持ち寄るお祭り的イベント)。軸になっている二宮健監督を、僕は凄い才能の持ち主と思ってるんですが、インディーズ映画のイベントって、誰が旗頭になるかで全然ノリが違ってくるんですよ。いま二宮健はまさに勢いに乗ってるんで、イベント自体も盛り上がってる感じですね。
――僕も1回目の『SHINPA』で二宮監督が『眠れる美女の限界』を流した時、ブッ飛んだんですよ。何かヤバイものキメながら作った映画じゃないかと(笑)。
――このリメイク版が、二宮監督の商業映画デビュー作になるんですよね(『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY -リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』10月21日より公開)これもメチャクチャ楽しみです!
松:『SHINPA』はLOFT9を飛び出して、この秋は「東京国際映画祭」でもやりますからね(10/28 TOHOシネマズ六本木ヒルズにてオールナイト開催)。10人の監督がオール新作で臨むんで、準備がいま相当に大変なことになってますが(笑)。
――逆に、思惑が外れたイベントってありましたか?
松:んー、商業映画のイベントは、本当に難しいなとは思いました。特に『スター・トレック』50周年記念決起大会!(2016.10.19開催)は、運が悪かったですね。まさか『スタトレ』新作映画のジャパンプレミアと、日程が被るとは(笑)。まあ色々やってみて、商業映画のイベントはよっぽどやり方を考えないと、頑張って著名なゲスト入れても、お客さんは来ないんだなと痛感しました。
“可能性”を見出すことの大切さ
――そもそも松崎さんが、インディーズ映画と関わるキッカケって何だったんですか?
松:中坊ぐらいから映画好きで、学生時代は8ミリ映画とか撮ってたんですよ。それで映画の世界に行きたいって思ったんですけど、うまくいかず、結局放送作家になったんです。その後仕事上では、映画となかなか縁ができず……。で、大きな転機となったのは、やっぱり2007年に「田辺弁慶映画祭」が始まったことですね。その前の年に「映画検定」が始まって、僕はその1級に最高点で受かってるんですが、「田辺・弁慶」にはその流れで審査員として参加することになったんです。でも最初の頃は、監督たちと距離を置いてましたね。
――どうしてですか?
松:単純にファンという立場にもなれないし、かと言って、何かしてあげられるわけでもない……。でも段々、インディーズ映画の若手監督たちの“可能性”を見出すことの大切さがわかってきて、これは今後、自分が映画の仕事を増やしていくに当たっての財産にもなるんだろうなって。で、「田辺・弁慶」の第8回(2014年)からは司会も頼まれるようになるんですけど、そうなると監督たちと直接やり取りするわけだから、もっと関わりが深くなりますよね。その年にグランプリ獲ったのが、今度10月3日のイベントに出る柴田啓佑監督なんだけど、翌年テアトル新宿で1週間の上映をすることになったから、まことさんも打合せに遊びに来て下さいって言うわけです。それで顔出したら、なぜか僕が1週間司会する話になっちゃって、ちょっと待てと(笑)。
――それだけ信頼されてるんですよね。
松:相方の松崎B(映画評論家の松崎健夫)君からも言われますけど、「こんな面倒見のいい映画祭は、他にないよ」って。グランプリや入賞作品のテアトル上映に当たって、宣伝はこうした方がいいとか、そういうのもテアトルと連携して僕が関わっちゃうわけです。和歌山県の田辺市で実施されてる映画祭なのに、東京での上映も、ばっちりフォローしちゃう。「田辺・弁慶映画祭」出身の“田辺系”監督が、伸びる所以だと思います。
――松崎さんが今、注目されてる監督さんっていらっしゃいますか?
松:LOFT9には「堀春菜 Happy Birthday Event」(2017.3.20開催)で出てもらった、野本梢監督、昨年「田辺」に入選して、そこから付き合いが深くなったんですけど、どんな題材でも自分の視点を見つけてやれちゃう感じがすごい。単純に男女の感情の行き違いみたいな話もやれるし、LGBTの話とか、主人公の女の子が自閉症の話とか、重い題材のものも、コメディっぽいものもできるし、才能あるなーと。
松:あと、ウェルメイドな方面で才能あると思うのが、僕を泥沼に引きずりこんだ(笑)、柴田啓佑監督。インディーズ映画って、監督が脚本も編集も兼ねる場合が多いんですが、柴田は監督に力を注いで、脚本、編集は他の人に頼むんです。二宮みたいなエッジが効いてるタイプではないんですけど、人の才を取り入れることに躊躇しないところに見どころがあるというか。ただそろそろ、長編も撮って欲しいなと思っているんですけどね……。他にも有望株は多々居ますが、二宮、野本、柴田、この3人を激推し中です。