唯一無二の声と個性を持った2人のボーカリスト、中島卓偉とNoGoDの団長。
ジャンルは違えど自分のスタイルを貫いてきた2人が、お互いの印象や音楽に対する気持ちなどをじっくりと語り合いながら、お互いの存在を認め合っているのがとてもよく伝わってきたこの対談。さらに長く続けてきている2人だからこその続けていくことの大切さや長く続けていくことのこだわりなど、とても深いお話も。完全版を是非堪能してください![interview:河西香織(新宿LOFT)]
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魂を感じる歌
団長:秋からシングル・コレクションツアーですよね。
卓偉:そうだね、vol.2は秋からだね。
団長:最近は、卓偉さんのライブに全然お伺いできてないので、1年に最低でも1回は卓偉さんの生のライブを見ないと、心の充電ができないんですよ。
卓偉:いやいやいや、とんでもない(笑)。
団長:前回に対談をさせて頂いた時にライブにお誘い頂いて。
卓偉:来てくれたのって、duo(duo MUSIC EXCHANGE)だったっけ? 『BEAT&LOOSE』のツアー(2014年1月26日)だったよね?
団長:あっ、そうです! 俺が最後に卓偉さんのライブを見たのが渋谷公会堂で、それ以来ライブに全然足を運べてなくて、10年って言ったら言い過ぎですけど、約10年振りくらいにduoで卓偉さんのライブを生で見た時に、俺が10年前に見たものよりもすごかったんですよ。でも1個の芯は全くブレてなくて、当時よりも踊ってるっていう(笑)。
卓偉:あっ、本当!?(笑)
団長:当時よりも煽ってて。でも先程言っていた、今だから歌えるみたいな意味で、『高円寺』をそのライブで聴いた時に、涙が止まらなくなっちゃって。
卓偉:嬉しいですね。
団長:あの曲は確かに、20代前半の卓偉さんだったら、多分やらない歌なんだろうなって。
卓偉:そうそう、やっぱり20代じゃ書けないんだよね。ああいう内容がまだ消化し切れてないんだよね。時間が経つことによって見えることってあるじゃないですか。
団長:30代後半になってからの『高円寺』って曲が、猛烈に響いて。
卓偉:でもさ、男しか良いって言ってくれないんだよ。
団長:えー!!
卓偉:(笑)でも団長さんはね、分かってるんだと思う、本当に。
団長:そうなんだあ〜。
卓偉:僕の詩の世界を良いって言ってくれるファンは、有難いことに男が本当に多いね。
団長:夢を1回でも追ったことがある人間は、誰でも無条件に共感せざるを得ない歌なんで。
卓偉:嬉しいです、本当に。
団長:自分の歌に対する考え方を変えさせてもらったんですよ。それまでは洋楽のメタルとかを聴いてて、歌詞の内容なんて、ロックンロール・オールナイトでいいんだろうなって言いながら(笑)。そんな感じだったんですよ。意味が分かんないほうが格好いいだろうみたいな。
卓偉:もちろんあるけどね。そういう策がね。
団長:そういうところが、正直ちょっとあって。ストレートな歌詞は恥ずかしいしなって思ってたのを全部根本から覆されたのが、卓偉さんで。俺は、歌で人を変えられるって思ってなかったんですよ。格好いいなとか、きれいだなって見せることはできても、歌単品で魂を揺さぶられるっていうのを、当時の俺は感じたことがなくて。バンド単品で、格好いいって思って鳥肌が立つってことはいくらでもあったんですけど、歌単体で魂を奮わされたことが、その時までなかったんで。高校生の時に卓偉さんと出会って、初めて歌で心臓を掴まれるっていう錯覚を覚えて以来、歌の力を信じれるようになりましたね。
卓偉:有難うございます。
団長:「歌は楽器の1つだ。音さえ外さなければいいんだろ」っていう考え方だったガキの頃から、「歌っていうのは、唯一無二の武器だな」っていうのを気付かせてくれたのは、卓偉さんの歌だったので。
卓偉:ボーカリストの歌が強いに越したことはないですよね。音楽的にも、いい演奏をしてても、上手いとか下手とかではなくて、歌がくる方がやっぱり説得力とか、バンドとして強いですよね。
団長:魂を感じる歌って、魂の感じ方なんて知らなかったんだけど、多分こういうことなんだろうなっていう漠然としたものは、やっぱり卓偉さんが教えてくれたんで。
卓偉:いやいや、とんでもないです。
団長:何回も言うのもあれなんですけど、特に化粧をするこっち(ヴィジュアル系)の子たちって、すごい小手先がお上手なので、すごく自分を上手く別のキャラにして出すというか。自分の魂を伝えるというよりは、自分の好きなものをすごくハイクオリティでコピーできる方が増えてきて、みんな上手いんですけど、俺が卓偉さんとか、魂のあるボーカリストに感じた熱量を感じる人が、減ってきてはいるんですよね。特にみんな音もでかいし、ヘヴィなサウンドですごいシャウトとかするから、「みんな喉が強いな。上手いな」とは思うんですけど、しっかり何かメッセージを届けようとするボーカルが、ロック業界は減りつつあるのかなって少し思ったりしてて。
卓偉:あとさ、逆に団長さんなら分かると思うけど、結構今って音を始め、全てが整ってるよね。
団長:整ってますね〜。
卓偉:なんかね、スクエアなんですよね。僕も今は、あえて打ち込みのサウンドでオケをぴったりやるようなレコーディングをしてはいるんですけど、やっぱり歌とかベースは絶対に整えないですね。揺れてなんぼというか。そういうとこまで人間臭さを消してしまうと、機械っぽくなっちゃうよね。
団長:全くうちも同じで、ここ2〜3年くらいは、もう音源でクリックを使わなくなりました。
卓偉:いいね! いいことだと思うよ。
団長:ドラム、ベース、リズムギターは、もう「一斉の声」で。「どんどん揺らせ」って。曲によっては「どんどんよれろ」って言って。ドラムが一生懸命に真面目にやってるのに、うちのギターとかが「もっとよれろ、もっとよれてくれ」って言って(笑)。
卓偉:すごくいいと思う。
団長:やっぱり行き着く先が似てしまうのか、考え方がそうなってしまうのか。人間臭さを求めてしまうんですよね。それが今の時代に合わないって言うなら、もしかしたらそうなのかもしれないですけど、世の中が合わなくても合う人がいるならばやり続けたいし、それが自分に合うことだったらやり続けたいなってやっぱり思いますし。それは教えてもらったっていうか、背中を見て育ってるんで。
卓偉:いやいや、とんでもないです。きっちりかっちりしてる世の中で、そういう揺れる気持ちよさとかね、整わない格好よさっていうのが、もうちょっと戻ってこないかなとは思ったりはしてるんですけどね。
団長:音もきれいになりすぎちゃって、ダーティーじゃないんですよね。
卓偉:そうだね。何でもパソコンでいろいろできちゃうっていうのがあるのかもしれないけど。でもクリックを使わずにやってるっていうのは、素晴らしいですよ。この曲はクリックを使ってない、使ってるとかって自分で分かってるじゃない。僕も結局は半々くらいだけど、やっぱりクリックを使わない曲の方が、自分のレコードを聴いても好きですもんね。
団長:何なんでしょうね、あれは本当に。言葉には上手くできないけど、分かるやつですよね。
卓偉:何かね、パッションが感じられるのか。LOFTでやる以上は、そんなかっちりしたものをやったらLOFTには似合わないですよ。
一同:(笑)