皆さんはカメントツという漫画家をご存じだろうか? 仮面を着けて大物漫画家(あだち充、青山剛昌、西原理恵子など)にインタビューしに行ったり、自己啓発セミナーに潜入してその様子を漫画でレポートしたり。"仮面"を着けて"とつ"撃するから"カメントツ"。漫画だけでなくイベントなども精力的にこなす氏に話を訊いた。【interview:石崎典夫(LOFT9 Shibuya)】
漫画家が表立ってやる環境がない
――カメントツくんの名前の由来とか10日間ホームレス生活をしていたという話は、「カメントツ インタビュー」とかで検索して読んで頂くとして、今日はイベントの話を中心にお聞きできればと。
カメントツ(以下:カ):はいはい。
――『クリエイターズ・アスク』というwebを中心に個人で活動している若手クリエイターに話を聞くイベントをやってもらって、前回(2017.1.20開催)大盛況だったんですけど、そもそもやろうと思ったキッカケは?
カ:最初に「オモコロ」のイベントがあったという流れもあるんですけど、「オモコロ」のイベントってかなり特殊というか……。
――特殊ですよね、『おしっこ我慢大喜利』とか『なまはげシンポジウム』とか(笑)。
カ:ライターさんにファンがいて、そういう人たちがネット以外でしゃべるのが素敵だなと思ってたんですけど、漫画家って手塚治虫の時代からだいぶ経っているのに表立ってやる環境がないんですよね。だったら僕たちがやっちゃえばいいんじゃないかと思ったのと、あと僕とか凸ノさんは、漫画に限らない色々なことにチャレンジしたいというか。
――漫画以外に、ですか?
カ:ミュージシャンってバラエティー番組で喋ったりしますけど、漫画家ってそういう機会がほとんどないじゃないですか。それこそ蛭子さんとか(笑)。
――パンツ一丁で熱湯入ったりしてますよね(笑)。
カ:ちょっと違うんですよね、矢沢永吉さんがビールのCМに出てますけど、尾田栄一郎さんがビールのCMには出ないわけで……。そもそも漫画と音楽は違いますけど、クリエイティブとしては同じだし、漫画家さんが表に立ってそれに付加価値を付けるっておかしいことじゃないと思っていて。だからこれからドンドン増えていけばいいなと思いますけどね。こういうイベントを始めたのも明確なキッカケがあるわけじゃなくて、自然発生的な感じですかね。
漫画家マニアで人と話すのが好き
――カメントツくんの面白いのがイベントと関係なく知り合いの漫画家さんとフラッとLOFT9に来て、紹介してくれたりするじゃないですか? グルメ漫画家の杏耶さんとか、お父さんがゲイビデオに出たことを漫画にしたトミムラコタさんとか。人を繋げて何かをやるのが好きなんじゃないかと。
カ:あーそうですね、元々人間が好きで、人と話すのも好きだし。たぶん漫画家マニアなんですよ。
――漫画家マニア?
カ:面白い作品を読むと、これ描いてる人ってどんな人なんだろう、とか知りたくなっちゃうんですよ。
――作品を通して人に興味が湧いてくるんですね。
カ:あとこれだけネットが普及してくると、これから有名になる人を漫画家志望の頃からヒット作を生むまで、リアルタイムでウォッチできるわけですよね、それがすごい楽しみで。
――例えば今、どんな方に注目してますか?
カ:最近だと「ぬまがさ」さん(@numagasa)ですね。この方は人に何かを伝える上手さがピカイチで、手描きのイラストをツイッターにあげてるんですけど、フォロワーが1000人ぐらいの時からヒットすると思って見ていたらすごい勢いで人気が出て、今はプロとして活動してます。あと「キューライス」さん(@Qrais_Usagi)、この人は悲しい猫のマンガを描くんですけど、フォロワー500人ぐらいの時からチェックしてて、あっという間に10万人を越えて、この先もすごいことなっていくんだろうなと。
――こういう方って、どうやって見つけるんですか?
カ:僕はツイッターで初期の頃、2000人ぐらい相互フォローしたんですけど、その2000人って僕のことを初期から目を付けてくれた“変なモノハンター”なわけですよ(笑)。僕を見出した人、その人たちがリツイートするものって、かなりツイッターの中でも尖っていたり、変なモノ探しが優れているんですね。この前も「コロコロコミックス」に取材に行く時に、フォロワーの皆さんに「何か聞きたいことありますか?」って聞いたらイイ質問を考えて送ってくれたり。僕はテレビを見ないので、そういう人たちが情報源ですね。あとは飲み屋とかバーに行って、隣にいた人に話しかけてみたり……。
――え、面識ない人に?
カ:そうです、気になった人だけですよ。最近だと『トランスフォーマー』のTシャツを着てる女の子がいたんですよ。しかも正義側のサイバトロンじゃなくて、悪役のデストロンTシャツを着てたんですけど、悪者のマークの周りのラメが付いてて、女の子用のトランスフォーマーのTシャツなんですよ。「なにそれ?」って聞いたら、「知らないんですか? 今、女子同人誌の中でトランスフォーマーが激アツなんですよ」って。トランスフォーマーって基本的に機械生命体だから男ばっかりで、ホモソーシャルな空間なんですよ。だからどう繁殖するかというと、男っぽい機械生命体同士が結婚したりとか、機械同士で殺し合っている空間の中で、そいつらがイチャイチャしてる同人誌を見るのが好きで好きでたまらないと。「おもしろい! もう一杯飲む?」みたいな(笑)。
――「その話、もうちょっと聞かせてくれ!」と。
カ:その人からいい同人誌のお店を紹介してもらって、今度そこに行ってみようかと。
――そのTシャツは自作なんですか?
カ:売ってるんですよ、その子はフロリダかどっかのコミコン(コミックコンベンション)で買ってきたらしい(笑)。最強ですよね。でも最近はツイッターで、こんな面白いことあったぞって言うと“うそ松”って言われるんですよ。それ嘘でしょう、そんな面白いことあるわけないって茶々を入れてくることなんですけど、そうなってくるとつまんないんで、あんまりツイッターで言わずにずっとキープしてたり、出す媒体もちょっと変えたりしてますね。
7/17(月・祝)イベント開催
――さて7月17日に『クリエイターズ・アスク』の第二弾がありますけど、どんなイベントになりそうですか?
カ:まだ全然考えてないんですけど(笑)、前回出てもらった鈴木みそさん(漫画家、1ページのルポ漫画、広告マンガ、ストーリーマンガまで幅広いジャンルで活躍中)と一緒に、“マンガについて語ろう”みたいなテーマでやろうかと。みそさんは前回も出て頂いたんですけど、もっと話を聞きたいという人が多くて。
――前回もわかりやすかったですよ、本は売れなくなっているのに漫画家は増えている、それに対して漫画家はどうしていけばいいかという話とか。
カ:そうですね、みそさんは漫画を広い視野で見てる人なので、なんで大学の教授とかやってないのか不思議ですよね(笑)。今のマンガウォッチャーとしてのカメントツと、業界ウォッチャーのみそさんが、この先のマンガをどうするのか? どうすればいいのか? みたいな話を一緒にやってみる。なるべく幸せな形で漫画家になって続けて行ける方法をみんなで模索する会にできればいいですね。