普通だと心配になる…?
──さるフェスは、ロックフェスと銘打ちながらも、演劇やパフォーマンスなどの部分が多いから、人に説明しづらいフェスですよね。
河井 何をやってもいいんだけど、キャラが立ってないと埋もれちゃうんです。昔は僕等周りの普通のロックバンドも出てたんですが、最近はすっかり減りましたね。
しりあがり 「水中、それは苦しい」とかちゃんとしたバンドが出てたもん。
河井 いや、水中、は普通のロックバンドじゃないです。
村山 去年、初めて出てくれた小南泰葉さんは、終わったあと「私だけ普通なんじゃないか?」と心配になったそうです。なんでも、演奏中にプロレスラーに乱入して欲しかったのにとまで言ってくださって…。それで、今年は出番の後に藁人形を作るワークショップをやるそうです(笑)
──「あそこは何やってもいいんだ」って分かっちゃったんですね。
ハヤマ 何でもやりますから、って。
──そういえば、今年のテーマ曲はやっぱり「BORN TO BE WILD(ワイルドでいこう)」ですか?
村山 はい。決して強制ではないんですけど、できればワンフレーズでもいいから各出演バンドにやってもらいたいですね。
しりあがり 知久寿焼さんとか、どんな感じでやるんだろう。パスカルズとかもどうアレンジするのか楽しみだね。
村山 佐藤タイジさんはTHEATRE BROOKに「ドレッドライダー」という、まさにイージーライダーに影響された曲があるぐらいなので、今回のテーマに打ってつけなんじゃないかと期待が高まりますよね。
──宮崎吐夢 with 日本会議(ジャンル:軍歌)は、ちょっと想像つかないですね。
ハヤマ この前、吐夢さんに暫定のタイムテーブルを送ったんですが、確認用だったので「宮崎吐夢」とだけ書いていたんです。そしたら吐夢さんから「with 日本会議」をちゃんと入れて下さい!と抗議が来ました。
河井 そういう人なんです。
村山 あと、これは内緒にしようかと思いつつ言っちゃいますが、バンドの転換中にロフトの舞台スタッフのふりをしたパフォーマンスがあるらしいです。
──フラッシュモブ的な?
ハヤマ 演出の天野天街さんが、スタッフのふりをした人が突然照明を割ったらみんなびっくりするんじゃないかな、と言ってたんですが、いや、そもそも照明割っちゃダメでしょ、と(笑)
河井 天野さん、言いそう。
──恐ろしい演出ですね(笑)
値上げするはずだったのに料金据え置き!?
河井 (フライヤーを見ながら)あ、今回チケット代そのままなんですね。値段上げようって言ってませんでしたっけ?
村山 ホントだ。俺も今年から上げるんだと思ってた。
河井 前売3500円って、安過ぎない?
ハヤマ でももう告知しちゃったんで、今さら上げる訳にもいかないので…
村山 じゃあ「台所事情が苦しいので値上げするはずだったのに料金据え置き」というお得感を伝えていきましょう!
しりあがり それはもっと言った方がいいね!何かの手違いでチケット代が上がりませんでしたって(笑)
村山 すごい手違いですよ! これで本当に財政破綻して来年できないかもしれない。文字通り「身を切るフェス」(笑)
──ウッドストックもコンサート自体は赤字でしたからね。
しりあがり うちもウッドストックみたいに途中から無料開放しようか。
村山 それは難しいなあ。逆に3500円払ったからといって全部観るとは限らないし。
河井 普通のフェスの場合、何バンドぐらい観ると元が取れるんだろう?
ハヤマ 目当てのバンドが観れるかどうかじゃないですか。あとは休憩しててもいいやって。
──となると、さるフェスの場合は深海スペース(休息所)が重要ですね。
河井 でも、深海スペースも人が埋め尽くしているからな…
しりあがり そもそも普通のフェスがどうなってるかわからない。僕等これしか知らないから。
──他に似たようなフェスがないと思います。さるフェスは独自の進化を遂げてますから。ガラパゴス諸島みたいな。
河井 だから動員が伸びないのか…
村山 なかなか観光化されないですね。
──去年はグッズを充実させて収益化しようと言ってましたが、今年はどうなんですか?
ハヤマ 今年はTシャツの他に、大判のサイケデリック・バンダナを作りました。
村山 バンダナって売れるの?
ハヤマ えっ、二人に一人が買ってくれないと赤字になるんですが…
しりあがり 最終的に収支ゼロが理想なんですけどね。赤字にさえならなければ。
一人ぼっちでも楽しいフェス
村山 先程も言いましたが、集客も含め、今年は今まで以上にどうなるのか予想がつかないんです。
ハヤマ 新しい人に来て欲しいですね。身内ノリのフェスだと思っている人もいるみたいなので。
しりあがり むしろ一人でも来れるフェスだと思いますよ。「フェスぼっち」にやさしいフェス。
村山 そう。一人で来ても退屈しないですよ。
河井 会場奥にある休憩スペース「深海」に行けば、和久田先生が話しかけてきますから。
しりあがり 油断してると鍼も打たれるし(笑)
村山 あと、お灸とか。(※深海には鍼灸マッサージコーナーがあります)
河井 確かに「一人ぼっちでも楽しいフェス」は売りになるかもしれないですね。
村山 さるフェスって身内っぽいってイメージがあるみたいなんですが、実際は出演者同士もお互いよく知らないですから。われわれはお客さんを退屈させまいと一生懸命いろんなことをやってるだけなんです(笑)。
河井 顔田顔彦さんが手品に失敗する所をみんなで観て笑うことで一体感が生まれるんです。
しりあがり 前に加藤賢崇さんが名誉観客になったことがあったけど、あれをまたやるのはどう?
ハヤマ 観客としてノミネートしてもらうんですか?
しりあがり そう。「理想の客は誰だ?」って。
──選ばれると何かいいことがあるのかどうかわかりませんが(笑)
村山 とにかくクダラナイことも含めて、一分一秒まで面白いようにいろいろ考えているんです!確かに過剰なところはありますけど。
河井 それが逆にうざいんじゃないですか? ほっといてくれと。
──どこまでサービスするか、その按配が難しいですね。
しりあがり 「寂しい人は話しかけて下さい」っていうプラカードを持った人を何人か配置したら?
河井 そのプラカードを持った人が一番寂しそうじゃないですか(笑)。そういえば、村山さんは数年前、すごい鬱だった時期にさるフェスの幹事をやってましたが、よくできましたね。
村山 逆に、スタッフだったから大丈夫だったんだと思います。表に出る気力はないけれど、やらないといけない事はたくさんあって。まあ親戚のギターとかでは出てましたけど。あとやってること自体はクダラナイので深刻にならずに済んだ。だから鬱の人はうちのスタッフになるといいかも知れないですよ。
しりあがり 「スタッフ募集。但し、鬱の人」(笑)
──ますますよくわからないものになりそうですが、最後にお客さんに向けて一言。
しりあがり 今年のさるフェスは初めてロックっぽいテーマなので、是非見に来て欲しいです。さるフェス、9回目にしてようやくロックフェスに!(笑)
村山 出演者の人達がどんな「BORN TO BE WILD」を演奏するのかを観るだけでも楽しいと思いますよ。
しりあがり 朝になる頃には、みんな、少しだけワイルドになるかもしれません!