Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューVERTUEUX(Rooftop2017年1月号)

Valentine D.C.のKen1とカリキュラマシーン/ex.De+LAXの榊原秀樹による楽曲至上主義ユニット、一撃必殺の会心作で自身の音とスタイルを確立!

2017.01.05

 2009年の結成以来、数々のゲームやアニメの主題歌、挿入歌などで熱烈な支持を集めてきたVERTUEUX(ヴェルトゥー)。Valentine D.C.のKen1(vo)、カリキュラマシーン/ex.De+LAXの榊原秀樹(g)という一角のキャリアを積んだ巧者2人が3年ぶりに発表したオリジナル・アルバムのタイトルは、そのものずばり『THE VERTUEUX』。フランス語で"天からの恵み"を意味するユニット名をあえてタイトルに冠したことからも、彼らが本作に対して並々ならぬ自信を持っているのが窺える。実際、本作はハードかつヘヴィなサウンドを基調としながら実に多彩な楽曲が盛り込まれ、従来評価されてきたタイアップ曲にもはや頼らずとも揺るぎないオリジナリティを確立した作品として位置づけられるだろう。タッグを組んで7年、アルバム3作目にしてここまでポピュラリティのある作品を生み出した背景をKen1と秀樹に聞いた。(interview:椎名宗之)

落ち着かずにやんちゃな感じがVERTUEUXの音

──アルバムとしては3年ぶりのリリースになるんですね。

秀樹:もうそんなに経つんだ? なんだかんだとタイアップ曲のリリースが年に数回あったし、レコーディング自体は続けてたので、ずっと何かしらやってた感覚ではあるんだよね。

Ken1:2年ぶりのアルバムみたいな感覚だよね、自分たちとしては。

秀樹:今回のアルバムに入ってる「傷」(恋愛アドベンチャー・ゲーム『凍京NECRO』の挿入歌)、「Angel」(ドラマCD『DRAMAtical Murder』のエンディングテーマ)、「灼熱」(アーケード対戦格闘ゲーム『ニトロプラス ブラスターズ 〜ヒロインズ インフィニット デュエル〜』のテーマソング)はどれもタイアップ曲で、先に発表してたし。

──今回、ユニット名をアルバムのタイトルに冠した理由は?

Ken1:大抵のバンドって、1枚目のアルバムは荒削りだけど格好良くて、2枚目でちょっと方向性が見えてきて、3枚目で落ち着いた感じになるじゃない? それが今回、秀樹が書いてきた曲はどれも全然落ち着いてなかったんだよね。落ち着くどころか、唄うのがキツくてしんどい、ライブでやると辛そうな曲ばっかりで(笑)。

──アップテンポでキーも高い感じの。

Ken1:そうそう。最初は秀樹やシンセの仮歌だからそこまでキツいものには見えないけど、音がすべてを物語ってると言うか、「こう唄え!」って言われてる気がして。自分としてはもっと低い声で落ち着いた曲を唄いたかったんだけど、どうしても激しい曲調になっちゃう。歌詞を考えてる時も音に呼ばれて、激しい感じの歌詞になっちゃうしね。そうやって出来上がったアルバムを聴くと、いい意味で洗練されてないものだった。俺らもいい歳だし、もっと成熟した大人のロックもできるはずなのに、全然そうはならない。3枚目のアルバムでこんな感じなんだから、これはもう逃れられないと思ったんだよね。結局、こういうやんちゃな感じがVERTUEUXの音なんだな、って。

──ここへ来て方向性が定まったということですね。

Ken1:俺が別にやってるValentine D.C.には確たるイメージと世界観、目指すべきものがあるけど、VERTUEUXはまだ模索してたんだよ。でも、今回の3枚目のアルバムで「俺たちはこういうキャラなんだ」っていうのがはっきりと分かった。で、「こういう音とスタイルこそがVERTUEUXなんだ」ってところでバンド名をアルバムのタイトルにしたわけ。

──なるほど。とは言え、秀樹さんはやんちゃな曲を意識的に書いたわけでもないんですよね?

秀樹:VERTUEUXの場合は「さぁアルバムの曲を作るぞ!」ってスタンスじゃなくて、日記をつけるような感じで曲を書いてるんだよね。アイディアも含めて「これはVERTUEUX向きかな?」って感じで書き溜めていったのが今回のアルバムって言うか。

──1曲目の「18」からしてゴリゴリのギターが前面に出た重厚なヘヴィ・チューンだし、落ち着いた境地とは無縁ですよね。

秀樹:どうしたってKen1の歌がはまっちゃうんだよ。どんなタイプの歌でも唄いこなせるのはKen1というボーカリストの魅力ではあるんだけど、「18」みたいなハードな曲も唄えるボーカリストだということをもう一度知って欲しいのもあった。Valentine D.C.で確立したボーカリストのスタイルとはまた違う側面…ハードさやヘヴィさ、力強さを持ったスタイルを再構築して欲しいっていう思いもあってね。まだまだ落ち着いちゃダメだよ! って言うかさ。

──Ken1さんの唄い手としての振り幅は確かに大きいですよね。「Angel」のようにスケールの大きさを感じさせるバラードでも、「Glamorous Night」のようにストレートかつハードなロックンロールでも記名性の高い声で歌の世界観を形作っていますし。

秀樹:だからこそ「18」みたいにヘヴィな曲をKen1に唄って欲しかったし、実際、上手くはまったと思う。この歳になってもまだまだ伸び代があるってすごいよね。

Ken1:そういうヘヴィな唄い方は昔にやってたことだし、いまでもやれることだけど無理にはやらないと言うか、ヘンに力まずにいまの持ち味を自然に出す唄い方をしたかったわけ。別にフランク・シナトラみたいな歌を唄いたいわけじゃないんだけど(笑)。

秀樹:それも面白いけどね(笑)。

Ken1:このアルバムを作るまではある程度成熟した歌を唄ってみたい気持ちが強かったんだけど、ヘヴィでハードな部分を含めて自分なんだし、その部分で勝負してもいいんだってことがやっと理解できたんだよね。

 

ユニットだけど音の作り方は完全にバンド

──「My Way」をフランク・シナトラのようにも、シド・ヴィシャスのようにも唄えるのがKen1さんの魅力ですからね。

Ken1:ハードな歌は唄うのがキツいけど、楽しんでる部分もあるわけ。秀樹の書いてきたハードな曲にただ乗っかるだけじゃなくて、ちょっとした遊び心を歌詞なり唄い方に込めてたりもするし。そうやって自分なりに遊べてるのはまだ余裕のある証拠だよね。

──「18」も「1 shot 1 kill」も「Glamorous Night」もエッジの効いたヘヴィさがありつつも恐ろしくキャッチーで、一度聴いたら口ずさめるじゃないですか。そういう作風は秀樹さんならではの持ち味ですよね。

秀樹:そうなのかな。単純にハードな曲として突っ走るだけなのは面白くないし、どこかで自分らしさを出したい欲が出てくる。ワン・フレーズでもいいから自分らしさを残したいっていうのがテーマだったのかもしれない。リフにせよ何にせよ、何らかのフックを必ず残しておくのを意識して曲作りをしてるから。

──打ち込みっぽいリズムと肉感的なギターが交錯する「primitive」はライブ映えするダンス・チューンですけど、「I, I, I wanna...」というサビのキャッチーさが強烈なフックになっていますね。

秀樹:「primitive」みたいにミディアム・テンポで踊れる曲はいままで書いたことがなかったから、自分のなかではけっこうヒットなんだよね。

Ken1:出来た当初から秀樹の推し曲だったからね。

秀樹:ああいう踊れる感じでも、Ken1の歌がすごく合ってるしさ。

──これだけいろんなタイプの曲がありながら、全体的にとっ散らかった印象が全くないのがすごいですよね。

秀樹:それは、歌の表情が曲ごとに違うのが大きいと思う。

Ken1:そう言ってくれるのはありがたいけど、サポート・メンバーを含めた全員の力量があってこそだね。各自の“節”がしっかりと出てるから。

秀樹:そうだね。磯江(俊道)くん[key & Prog]も、Moh-chan[ds]も、西山(史晃)さん[b]も、みんな自分の音を確立してるし。

Ken1:VERTUEUXは俺と秀樹のユニットではあるけれども、サポート・メンバーはずっと不動の面子だし、音の作り方は完全にバンドなんだよ。作曲者でありプロデューサーでもある秀樹の色が音に出るものの、そこにみんなちゃんと乗っかれてる。「VERTUEUXとはこういうものだ」なんて話をみんなとしたことはないけど、その辺はみんなよく分かってるんだよね。

──どんなボールを投げても自在に受け止めて、いい球を投げ返してくれると。

Ken1:うん。「それはちょっとないわ」っていうのは一つもないから。逆に言えば、ボールを投げる側の懐も深いと思うんだよね。何が来てもOKみたいなところがあるから。

秀樹:だから責任感はあるよ、投げるボールに対しての。それはちゃんと考え抜いたうえでのボールなのか? っていうさ。そこは難しいよね。安易にボールは投げられないから。

──音楽でも映画でも小説でも、処女作にはその表現者のすべてがあると言うじゃないですか。VERTUEUXの場合は3作目だけど、本作には硬軟織り交ぜたバラエティに富んだ楽曲が取り揃えられているし、引き出しの数が異常に多いVERTUEUXの特性が詰め込まれていると思うんです。ユニット名をタイトルに冠したことも含めて、今回のアルバムはもう一つのファースト・アルバムと言えるんじゃないですかね。

Ken1:そうだね。ユニット名をタイトルにしたのはそういう意味もある。全部の曲が出揃って、3枚目のアルバム・タイトルをどうするか? と考えた時に何も浮かばなかったんだよ。「Fantasy」みたいにジャジーな感じの面白い曲もあれば、「傷」みたいに自分のキャリアのなかでもかなりの深みのある曲もある。とにかくいろんなタイプの曲があるし、それらを象徴するようなタイトルが何も浮かんでこなかった。でも考えてみれば、それだけいろんな曲をやれるのがVERTUEUXの良さだし、だったらユニット名をそのままタイトルにすればいいんだと思ったんだよね。

 

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THE VERTUEUX

BadRideRecords BRE-001
価格:2,500円+税
2016年12月5日(月)一般発売

【収録曲】
01. 18
02. primitive
03. I don't care
04. 1 shot 1 kill
05. Fantasy
06. 傷
07. Glamorous Night
08. hide & seek
09. Angel
10. あのくだらない愛をもう一度
11. 灼熱

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