Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューVERTUEUX(Rooftop2017年1月号)

Valentine D.C.のKen1とカリキュラマシーン/ex.De+LAXの榊原秀樹による楽曲至上主義ユニット、一撃必殺の会心作で自身の音とスタイルを確立!

2017.01.05

無理に棲み分けなくても自然に棲み分けができている

──なるほど、腑に落ちました。「灼熱」にも「Fight for your life!」や「逃げたりはしない 闘え」、「燃え滾る夢 確かめた」という不退転の覚悟を決めた歌詞がありますもんね。

Ken1:今回はちょっと燃え滾りすぎたかもね(笑)。

秀樹:「灼熱」は『ストリートファイター』みたいなアーケード対戦格闘ゲームのタイアップ曲だったから、必然的にそんな歌詞になったんだけどね。ゲームが最初に立ち上がった時に流れる曲ってことだったので、これはもうボルテージ全開で行くしかないと思って。

──「あのくだらない愛をもう一度」はノリの良い軽妙なロックンロールですけど、こうしたさりげない小品が入ると前後の曲が活きますよね。そういう箸休めの部分までよく練られているなと思って。

Ken1:俺が思うに、「あのくだらない愛をもう一度」は秀樹が一番やりたい曲なんじゃないかな。VERTUEUXではなく、秀樹のマインドとしてね。まだファースト・アルバムを出す前だったかな、VERTUEUXがどんな方向へ行くのか分からない時期に何曲か聴かせてもらって、それはいまと違ってもっとシンプルなロックンロールっぽい感じだった。モッズとかめんたいロックみたいな感じって言うかさ。だから「あのくだらない愛をもう一度」が出てきた時に秀樹はやっぱりこういうのがやりたいんだなと思ってね。

──秀樹さんの素に近いんですかね。

Ken1:そうだと思う。

秀樹:何かのパロディっぽい曲で遊んでみたかっただけなんだけどね。もともとはライブのプレゼント用に配布するような曲としてシャレ半分で作ったんだけど、Ken1の歌詞が面白くてね。これは入れようと思った。

──シャレ半分なのにこれだけいい曲に仕上がるのが2人のすごいところですね。

秀樹:ありがとうございます。あとはこれで認知度が上がれば言うことなしなんだけど(笑)。

──いまのライブの客層は、Valentine D.C.やカリキュラマシーン、De+LAXのお客さんが大半なんですか。

秀樹:そういう昔から見てくれてるお客さんは全体の2割くらいかな。あとの8割はゲームとかで知ってくれた新しいお客さん。

──これまでのキャリアに頼ることなく、それだけ新たなお客さんを獲得しているのは素晴らしいことですね。

秀樹:いまやってることを受け入れてもらえるのはありがたいことだね。20歳くらいの若い人たちもよくライブに来てくれるしさ。

──Valentine D.C.でもカリキュラマシーンでもなく、VERTUEUXだからこそやれること、やる意義とはどんなことなんでしょう?

Ken1:VERTUEUXを始めた当初はValentine D.C.ではやれないことをやろうと思ってたけど、いまは何かと比べてこうしよう、みたいなことはなくなった。

秀樹:VERTUEUXとしてのスタイルを確立できたからね。

Ken1:うん。いまのVERTUEUXがこうだからValentine D.C.ではこうしようって考えることはない。無理に棲み分けなくても自然に棲み分けができてるから。最初は衣装も完全に分けてたけど、それもいつからか気にしなくなったし。

──ボーカリストとしての線引きもないものなんですか。

Ken1:特にないけど、VERTUEUXのライブはしんどいね(笑)。単純に曲調がハードだからってことじゃなくて、ゲームやアニメのお客さんは曲を完全に覚えてくれるから変な唄い方はできないし、歌詞を間違えることもできない。そういうお客さんの期待に応えたいからね。俺自身、もともと原曲を崩して唄うのが嫌いでさ、リスナーとしてもCDで聴くそのままの形で聴きたいほうなんだよ。自分が唄う立場でもそうありたいから、余計に気が抜けない。うっかり歌詞をミスったらすぐパニックになるし(笑)。

秀樹:そうなんだよね。VERTUEUXのお客さんは曲に対する思い入れがすごく強いからミスれない。

Ken1:しかも、タイアップ曲は物語の一番ポイントとなる場面で流れるような泣きの曲が割と多くてね。

秀樹:曲が先に一人歩きしてるところがあるよね。

──だけど、そうやって楽曲ありきで支持を受けているのはバンドマン冥利に尽きると言えませんか。

秀樹:うん、それは純粋に嬉しい。

Ken1:自分たちとしてはタイアップ曲以外にもいい曲をたくさん出してるつもりなんだけど、結局、ライブで求められているのはタイアップ曲だけじゃないのか? という穿った見方をしていた時期もあったわけ。「今日はあの曲をやってくれなかった」なんて声をよく聞くからね。でも、それは別に否定的な意見じゃないんだよ。純粋に曲の思い入れがすごく強いだけで、他の曲もちゃんと楽しんでくれてるんだよね。いまのVERTUEUXはタイアップ曲に頼らなくてもバンドらしくなってきたし、面白いことになってきてると思う。

 

50歳を目前にしたからこそ進むべき道が明確になった

──秀樹さんはどうですか。VERTUEUXだからこそやれることというのは。

秀樹:カリキュラマシーンは自分で唄うから曲調も限られてくるし、VERTUEUXとは全く別物だよね。軽い気持ちでブルースをやってみたり、遊びの延長みたいなところもあるしさ。VERTUEUXの場合は曲をちゃんと構築しなくちゃいけないから、スタンスが全然違う。

Ken1:秀樹は放っておくとマニアックに走りすぎて、全然売れないことをやると思うんだよ。だからVERTUEUXみたいにある程度の型にはまったユニットをやったほうが絶対にいい。

秀樹:あれ、見抜かれていた?(笑)

Ken1:遊びの延長ももちろんいいけど、型を外すととめどなく外れっぱなしになると思うから(笑)。ブルースをやるにしても本物のブルースを極めるのではなく、純粋にブルースを楽しんでプレイするだけになっちゃうんじゃないかな。

秀樹:そういう楽しみがないとバランスが崩れちゃうんだろうね。結局、ちゃんと唄えて形にしてくれる人がいないと、いくら曲が良くてもダメなんだよ。それを身をもって教えてくれるのがKen1だし、自分の書いた曲を説得力のあるものにしてくれる人なんだよね。ある程度上手いボーカリストじゃないと自分でも満足できないんだなと思うし、やっぱりKen1の存在はすごく大きい。

──今回で言えば「Fantasy」みたいな変速球の曲も充分やれたわけだから、型にはまらない曲が今後一層増えるかもしれませんね。

秀樹:いままでは割とマイナー調の曲やハード系の曲が多かったけど、まだまだやれることがあるんだなと思えたからね。今回のアルバムでVERTUEUXらしい曲の質感がはっきりした気もするし。

──50歳を目前に控えてもまだまだやれることがあるのは素敵なことですね。

秀樹:現役でやってる50代、60代の諸先輩方はたくさんいらっしゃるし、俺らなんてまだまだヒヨッコですよ(笑)。

Ken1:でも、50歳を目の前にしたからこそVERTUEUXの進むべき道が明確になった部分はあると思う。

秀樹:ああ、それはあるね。

Ken1:さっきも言ったけど、それまではもっと落ち着いた感じで行きたいと思ってたし、中堅なりの落とし所を探してた。でももうすぐ50歳を迎えることになって、いましかできないことを全部やっておかないと後で後悔することに気づいたんだよね。それで初期化できた部分はあると思う。

──だからこそ『THE VERTUEUX』という作品はとてもフレッシュに聴こえるんでしょうね。

秀樹:結局、まだ諦めてないんじゃないのかな。音楽をやるうえでまだ納得しきれてないところがあるんだよ、きっと。往生際が悪いんだね(笑)。意識してなくてもメロディやリフがいまだに浮かんでくるし、曲を作っていたい衝動が強いんだと思う。

Ken1:ハードな曲調でもハード一辺倒ではなく、どことなくブルースや切なさを感じる曲ってあるじゃない? それを盛り込めるのは若造にはできないスキルなんだよ。若いと狙った感じに聴こえちゃうから。俺らができるのはそういう部分だし、それがVERTUEUXの特性だよね。幅広い音楽性でいろんな景色を見せることができるし、キャリアを重ねてきただけの深みを与えることもできる。

──今回のアルバムは「GEORIDE」のレーベルマスター兼プロデューサーだった故・南野信吾さんに捧げられていますが、南野さんが本作を聴いたらどう感じると思いますか。

秀樹:それはもうベタ褒めでしょう(笑)。「やればできるじゃないですか!」って上から目線で言われるんじゃない? あいつさ、ファースト・アルバムのデモテープを聴かせた時も「秀樹さん、やればできるじゃないですか!」って言ってたから(笑)。

Ken1:ヤツの好きな世界かどうかは別として、VERTUEUXとしてはいいアルバムを作れたと思ってくれるんじゃないかな。

秀樹:そうだね。きっと喜んでくれたと思うよ。

──50歳を迎えるまでに形にしておきたいこと、極めたいことは?

秀樹:やっぱりVERTUEUXとしての活動をより一層充実させたいね。曲を作ってると自分には才能がないのかな? とか思ったりもするけど、結局またこうして臆面もなくアルバムを出すんだよね(笑)。ということは、なんやかんや言って揺るぎない自信が根底にはあるのかもしれない。

Ken1:特定の世代に聴いて欲しいとか、どこにポイントを合わせるとか考えたことがないから、自分たちの信じることをやるしかないよね。自分はいいと思ってるけど、果たしてこういう曲がいまの時代に受け入れられるのか? という葛藤は絶えずある。でもやるしかない。まだまだ落ち着いてる場合じゃないし、いまやれることを精一杯やるしかない。それだけだね。
 

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THE VERTUEUX

BadRideRecords BRE-001
価格:2,500円+税
2016年12月5日(月)一般発売

【収録曲】
01. 18
02. primitive
03. I don't care
04. 1 shot 1 kill
05. Fantasy
06. 傷
07. Glamorous Night
08. hide & seek
09. Angel
10. あのくだらない愛をもう一度
11. 灼熱

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