自らを〈珍スポトラベラー〉と称し、日本各地の珍妙な場所を巡っている金原みわ。今年の5月にはこれまでの珍スポ巡りをまとめた書籍『さいはて紀行』を上梓。ただの珍スポットの現場報告に留まらない、対象への優しさや哀愁を感じさせる筆致で高い評価を得ている。10月から11月にかけて、ロフトプラスワンウエストと阿佐ヶ谷ロフトAで「奇食ナイト」「男根崇拝サミット2016」「ハイエナズクラブ」という濃いイベントへの出演を控えている。なんとも聞きどころの多い彼女。みわさん、あなたってどんな人なんですか?(interview:宮武孝至&平松克規[Loft PlusOne West])
——みわさんはどうして珍スポットを巡り始めたんですか。
みわ:元から旅行好きだったんですけど、淡路島旅行で行った「ナゾのパラダイス」という秘宝館が衝撃的だったんです。淡路島にはそれまで何回も旅行はしてたけど、立川水仙卿っていうちょっと行きにくい場所にあったので、それまで知らなくて…。見たことのない世界でしたし、「淡路島にこんなものが!」ってビビビと電撃が走って、ずっと興奮しながら見てましたね。一緒に行った会社の友達は「ちょっと外に出とくね…」って感じだったんですけど(笑)。
——(笑)。
みわ:それから「自分の身近にもこういうスポットがあるかもしれない!」と思うようになって、探し始めましたね。
——今はどれくらいの珍スポットを巡られているんですか。
みわ:今は会社を辞めて珍スポ巡りに専念しているので、4月から8月までの間で800個くらいですね。
——そんなにですか!? どんな1日の過ごし方をされてるんですか。
みわ:午前中は純喫茶でモーニングを食べて、珍スポを1、2個巡ります。お昼ご飯も変な所で食べて、それから午後で4つくらい巡ってます。
——すごいですね…。最近、珍看板がどんどん減っていると伺ったのですが、珍スポットでも同様のことはあったりするんですか。
みわ:確かに秘宝館が閉館したり、レトロさが良い建物が老朽化や建築法の関係で消えていってますね。私が見てきたところもかなり無くなってきていますし。ただ、岩下の「新生姜ミュージアム」や東京の「ロボットレストラン」とか、新しい珍スポットもできているので、移り変わっているんだと思います。
——新しい文化が生まれているんですね。みわさん流の珍スポの楽しみ方はありますか。
みわ:珍スポットと言われる場所って、それが形成されるまでに色々な事情があるんです。そこを掘っていくのが好きですね。例えば、山の中で何かを作り続けているおじいちゃんに話を聞くと、なぜそれをするに至ったのか、その人の人生を垣間見られて面白いんです。
——今年の5月に出版された『さいはて紀行』も、珍スポットに関わる人間が魅力的に書かれていると感じたのですが、そういう姿勢があったんですね。
みわ:知らない間に変なものを生み出してる人って、天才だと思うんです。そういう人やものを、上げもせず下げもせず、私が見たままを分かりやすく書いていきたいですね。
——10月9日(日)にロフトプラスワンウエストで『奇食ナイト4』が開催されますが、これが始まったキッカケは何なんですか。
みわ:奇食も元々好きだったので、心斎橋のバーで奇食を食べるイベントをやったんですけど、それがスゴい反響で。初めてロフトプラスワンウエストに出演した時、初代店長の宇空さんから東京で開催していた奇食イベントのことを伺って「奇食ナイトをさせて下さい!」って頼んで開催するようになりました。
——イベントではどのようなものを食べてきたんですか。
みわ:過去のイベントで目玉になったのは、アライグマやカラスにバロット(孵化直前のアヒルの卵を加熱したゆで卵)、それとシュールストレーミング(世界一臭いと謳われる塩漬けニシンの缶詰)ですね。
——どれも強烈ですね…。一番印象に残っている寄食は何ですか。
みわ:うーん…。やっぱり初めてゴキブリを食べたのは衝撃的でしたね…。でも、もう何も思わなくなってしまって、どうしようかなと(笑)。
——(笑)。今、食べてみたいものはあるんですか。
みわ:「カース・マルツゥ」っていうチーズですね。これは大きいチーズの塊にウジ虫を沸かして、その虫ごと食べるんです。
——うわぁ…。
みわ:でもスゴく美味しいらしいんです。ただそのウジ虫は人間の胃酸じゃ殺せないので、そのまま腸壁を食い破る可能性があるらしくて、製造も輸出も禁止されてるんです。それでも食べてみたいですね。
——次の『奇食ナイト』の目玉は何になりそうですか?
みわ:グソクムシですね。知り合いの方がグソクムシを取ってる漁師さんを紹介してくれて、手に入れられそうなんです。それもあるので、今回は「海に関する生き物」が集まるんじゃないかと思ってます。あとシュールストレーミングはまた開けていいですかね?
——先日、宇空さんがお店に来た時に「また開けるよー」と言ってましたよ。
みわ:以前ここで開けた時は、前に来る人と後ろに下がる人に分かれて、中には帰る人もいらっしゃって…。
——あれってそもそも美味しいんですか。
みわ:食べる前は臭いんですけど、口に入れた瞬間に身体がバカになるのか、「塩気が利いてて案外いける」みたいになるんです。
——感覚がおかしくなるんですね…。
みわ:今回のシュールストレーミングは、期限が切れて中で腐敗が進んでいるので、更にパワーアップしてますよ。
——イベントに来る人は、相当防御しといた方が良いですね…。