今まで、理科にとっつきにくさを感じていた人たちにも、理科の面白さや楽しさを伝える目的で作られている雑誌「理科の探検-RikaTan-」のイベントがネイキッドロフトで開催決定!! 理科が大好きな大人をはじめ、理科の先生方、ちょっと背伸びをした小学生・中学生に向けたRikaTanの編集長である左巻さんに色々とお話を伺ってみました。[interview:日野弘美(Naked Loft)]
―文系の人が多いと聞きますが、理科が好きって珍しいものですか
左巻:そんなことはないですよ。小学生はみんな理科が好きですよ。中学校で少し嫌いになって、高校ですごく嫌いになるパターンが多いです。
―なぜだと思いますか
左巻:単純に急に難しくなるからです(笑)。小学校では、ある程度実験もあるし、そんなに難しいことはやらないのでみんな好きなんです。小学生に好きな教科のアンケートを取ると「理科」は上位にはいります。でも、中学校で少し難しくなって、特に女の子は電気のあたりで、計算式ばかりになって少し嫌いになることが多いです。段々と身の回りのことから離れて専門的な内容になるので、覚える事がたくさんあり、めんどくさいなと思ってしまって離れていくことが多いです。
―確かに生物など覚える事が多くて嫌でした(笑)。左巻さんご自身は嫌にはならなかったんですか
左巻:僕は理科だけが好きだったので、なかったですね。ただ、中学の9教科のうち、理科以外は通信簿の5段階評価で1と2みたいな感じで(笑)。高校までは数学も苦手でした。受験の為に勉強して数学もできるようになりましたけどね。
―理科の中ではどの分野が一番好きですか
左巻:理科の中では化学が一番好きで、AとBを反応させたらCができるみたいな化学反応が一番好きでした。だって水にかたまりを入れると爆発するようなナトリウムと「混ぜるな危険!」で出てくる有毒な塩素が反応して調味料の塩(塩化ナトリウム)ができるでしょ。理科がなんでも好きだなって思うようになったのは、教員になってからです。学びながら理科のいろんな分野を教えて面白さを実感しました。
―そうなんですか!? なぜ教員を目指されたのですか
左巻:人間関係が一番苦手だったので、会社員はムリだなと思ったからですね。教員なら大丈夫かなと思ったので選びました。なってみたら親との関係、同僚との関係、生徒との関係で、人間関係がうまくつくれないと駄目な仕事だなと思いましたけどね(笑)。生徒に直接教える仕事以外では理科関係の本を書いたり、学校で使う教科書を「検定教科書」というのですが、その編集委員・執筆者をやっています。「ゆとり教育」の時期に、だいぶ内容が減ってしまったので、もっと学んでほしいと思っている内容を追加したりと、友人200人くらいと一緒に「検定外教科書」も作りました。その「検定外教科書」は私立中学校などでよく使われています。
―凄いです! 教科書を作っていて、なぜ科学雑誌も作る事にしたのですか
左巻:10年前くらいに出版社から「雑誌を出そう」とお声がけ頂いた事がキッカケです。5年くらいは出版社から出していました。雑誌はいろいろと大変で出版できなくなったりして、それより後は自分たちで出版しています。発行元のSAMA企画は「左巻が書く」「左巻が企画する」で「SAMA企画」って名前にしました。なので、表紙などに僕の名前が大きく載っています。雑誌コードを持っていないと出版できないので、学研グループの文理という出版社にお願いして販売元になってもらっています。
―雑誌は一人で作っているのですか
左巻:全国に約170名ほどの委員の方がいて、みんなのサポートを元に作っています。学校の先生もいれば、今は主婦をしている理科好きの方もたくさんいます。広告は知り合いに頼んだりして、出してもらっています。僕が企画したことを、理科が好きな人が集まって作っている感じです。
―RikaTanでの一番人気のある特集はなんですか
左巻:「ニセ科学を斬る!」が人気です。ニセ科学を簡単に説明すると、その論理過程に飛躍があったり誤魔化しがあったりするのに、科学っぽい体裁や理屈を整えて、いかにも科学的根拠に基づくしっかりとした発見や発明かのように主張する理論や製品のことを呼びます。そのような日常に潜むニセ科学の嘘を暴く特集の時は、他の科学雑誌を押さえてAmazonでの順位が1位になる日もあります。
―他の商業雑誌との違いはありますか
左巻:他の商業雑誌は、豪華な写真やキレイなイラストがたくさん入っていますが、RikaTanは全体の半分はカラーではありますが、地味かもしれません。どちらかというと、科学の基礎をメインにしています。中学や高校初級で習うような基本の科学では、面白いところまで教科書には書いていない事が多いのですが、基本の中にこそ、面白いことがたくさんあるんだと知ってもらいたくてテーマを企画しています。科学も生物、化学、地学、物理など広い分野ですし。たとえば、地学も地球の内部から宇宙まで広い。最先端ではないところだけでも、取り上げることが尽きません。
―イベントでも、文面では伝えられない面白さを教えてほしいです!
左巻:今回はホラーがテーマなので、RikaTanではまだ扱っていない分野でもあります。恐怖は心理的な要素が大きいですが、心理は科学の部分と科学でない部分があるのでグレーゾーンが多いです。やってみないと分からない組み合わせではあるので、面白い構成を考えないとなと思います。
昔々の人々の日常は、大自然の猛威の中、様々な自然災害に襲われ、人を食べる肉食獣に怯え、ちょっとした怪我や病気で死に、時に大流行する疫病でばたばた死んで行くという恐怖そのものだったでしょう。医学などの科学技術の発展でいくぶんは恐怖の元は減ったでしょうが、未だ自然のパワーには恐怖の部分がありますね。「人は死ぬ」というのは必然ですから、普段は意識しないようにしていても「死」は私たちの日常にまとわりついている面があります。
今まであまりホラー映画を見たことがなかったのですが、清水監督の「呪怨」のシリーズをいくつか見て、人は恐怖の場でもあっても怖いもの見たさの好奇心で突き動かされるんだなと思いした。そんな登場人物にはらはらしながら感情移入していくというか…。RikaTanでは、科学で面白いことを追求していこうというコンセプトがあるのですが、それも人の好奇心をあてにしています。怖いものでもあり、面白いものなんでしょうね。
霊の存在などは否定する派なのですが、完全な否定はできませんね。子どもの頃、父に言われてお酒を買いに行かされて、暗闇の中を歩いたり自転車で走ったりしたのですが、暗闇の中から何かが出てくるのではないかという恐怖心がありましたね。昼間でもインドでとある街の路地を歩いていたときに、横から手が伸びてきて引きずり込まれるような恐怖を感じました。外国で、ほとんど人とすれ違わない狭い路地だったんです。怖いものは怖いですからね。今回、自分の知らなかった分野を、イベントをキッカケに見て、自分がどの部分に怖がるのかな? とか新しいことにチャレンジできるのが楽しみです。