ヒップホップを広めにやってきた宇宙人!?
──『リリカルスクールの未知との遭遇』のコンセプトはどう固めていったんですか?
デモ田中:最初は音楽業界モノの映画をやらないかって話をしてて。メンバーの中にも芝居経験も無い方も多かったので、本人役のほうが個性を引き出しやすいのかなと思いました。『クレージーの怪盗ジバコ』じゃないけど、『リリカルスクールの○○○○』みたいにグループ名がアタマにつく映画を作りたいと思ったんですよね。
MC BOO:でも最初に出した企画書は、即ボツ喰らったんですよね?(笑)
デモ田中:6個ぐらい考えてて、アイドル同士でバトルするようなちょっとグロいバイオレンスものを考えてたんですけど、リリスクの運営から「これ、うちの子たちじゃなくてもよくない?」って指摘を受けまして。
リリスク全員:はははは(笑)。
デモ田中:彼女たちは〈ゆとり〉とか〈さとり〉と呼ばれる世代なので、設定としておじさんの師匠みたいな人が出てきても言うこと聞かないだろうな、と。だったら宇宙人だったらどうだろう? というアイディアが生まれて。アフリカ・バンバータをモチーフに、ヒップホップを広めにやってきた宇宙人という設定ができて、そこからは早かったですね。
MC BOO:近所の焼き鳥屋で作家3人集まって、脚本会議を何度もやって。カンフー映画の修行の要素を入れようとか、80年代のアイドル映画のようにハッピーな感じがいいんじゃないかとかね。僕ら(40代前半)が子どもの頃って、アニメ映画とかの併映でアイドル映画がたくさん作られてたじゃないですか? たとえば近藤真彦の『ハイティーン・ブギ』とか、ライブシーンもきちんと収められてて、みずみずしい女の子や男の子が楽しそうに青春を謳歌してるっていうイメージが鮮烈にあって……そういう感じで、いろいろアイディアを突き合わせていきました。
──メンバーのみなさんは、今回の脚本を読んだ時はどういう印象を持ちました?
ayaka:読んでみてもまったく想像できなかったです(笑)。まず宇宙人ってのが気になってしょうがなくて。
ami:私、ものわかりが悪い方なんで、台本を何度読んでもわからなくて。そのあとメンバーに会った時に「これさぁ……」って話をしたら、みんな同じような感想だったので、ちょっと安心しました(笑)。
yumi:台本いただく前にスタッフから、「SFで宇宙人が出てくるんだよ」って聞いてて。じゃあ私の好きな要素満載じゃん! って思って楽しみにしてたんですけど、想像とはまた違う感じで。宇宙人がこんな可愛いキャラクターとも思わなかったし(笑)。
mei:SFで宇宙人が出てくる映画で演技するって聞いても、お手本になるものがないし、とにかくやってみないとわからない!
minan:私たちは本人役としての出演だけど、宇宙人と出会うっていう設定だから、現実と非現実が混ざり合ったようなお話じゃないですか? そういうところもリリカルスクールっぽいなって思いましたね。
hime:台本にラップ・バトルのシーンが書いてあって、すごく興奮して。映画にもアイドルラップの要素が反映されてるんだ! って、ワクワクしました。
──リリカルスクールが本人役なのに加えて、リアルにヒップホップの世界にいる方々が共演されているのも面白いところで。
M.C.BOO:メンバーみんながリリカルスクール役っていうのも本当だし、ファンも本当にファンの方が出演してる。そこにANI(スチャダラパー)やBIKKE(TOKYO NO.1 SOULSET)、ZEN LA ROCKといったリアルにラップやDJをやってる人たちが絡んでくる。そうすると、僕たちが意図する以上に空気がフィルムに出るだろうなって。だからロケ場所も下北沢のWeekend Records(ex.ひよこレコード)でやりたかったし、スプレーの向きとか細かい部分とかも守ったつもりです。それこそ『ワイルド・スタイル』のチャーリー・エーハーン監督がこの作品を観て「いいね」って言わせたいから。そういう思いは込めました。
──実際に撮影に入ってみて、大変だったところはありましたか?
minan:今回アクションのシーンもあるんですが、撮影に入る前に練習があったんです。そこで私がアクション全然できなかったんですよね(笑)。よく運動神経良さそうとか言われるんですけど、実際はまったく逆で……結果、私はアクションシーンはなかったんですけど(笑)。
yumi:私はなぜか、めちゃくちゃに殴られるシーンがあったんですよ。アクション指導の時間は、自分の知らないことを知れるからすごく楽しくて。殴られるっていうのにルンルンな気分でした(笑)。
ami:みんなでやるラップ・バトルのシーンがあるんですけど、それが一発の長回しだったんですよ。私の前にayakaとmeiがやって、私とhimeの掛け合いがその次にあったんですけど、待ってる間の空気感や、間違えちゃいけないっていうプレッシャーに耐えられなくて、何度もNGを出しちゃったんです……しかもhimeはリリスクに加入して初仕事が、この映画の撮影だったんだよね。
hime:初めてのお仕事がライブじゃないの!? って、少しとまどいました(笑)。だって演技がどうこうより、グループに馴染むことからはじめないといけないわけですしね。ちょっとネタバレになっちゃうんですけど、私が一人で捕まって縄でグルグル巻きに縛られてるシーンがあるんですけど、まだライブとか全然したことないのに捕まってる……って思って(笑)。
mei:私はメンバー6人の中でも役柄がちょっと攻めた感じというか、メンバーの喧嘩しだすのも、私が発した言葉がきっかけだったり、マネジャーに怒鳴るのも私だったり。この映画観た人に超性格悪いって思われちゃうんじゃないかと、ちょっとドキドキしました。試写で見たら思ったよりそう見えなかったので安心したけど(笑)。
ayaka:私は撮影前に監督からはドジっ子役と言われてたので、いかにドジっぷりを出すかを意識しました。そういう性格でmeiをいらいらさせてしまってそこから揉め事に火がつく仕掛け役っていう設定もあったので、どうやったらmeiのキャラクターの良さが出るかとか、いろいろ気をつけて。あと難しかったのはバムさんとのシーン。メンバー全員とバムさんが一緒のときは、助監督さんがガイドでセリフをしゃべってくれてたんですけど、私とバムさんの二人だけのシーンはガイドもなかったので、間を考えながら演技するのが大変でしたね。
minan:そういえば私は潔癖症のキャラクターがついてたんですけど……監督、なんで私が潔癖症だってわかったんですか?
デモ田中:あ、実際そうだったんだ? なんとなくそうじゃないかなと思って設定決めたんだけど。脚本書くにあたって、マネジャーさんやスタッフからはメンバーの性格とかは前もってとくに教えてもらってないんです。
リリスク全員:へぇ~!
デモ田中:みなさんお忙しいので、脚本の準備中になかなか直接会える時間が取れなくて。なので大宮でリリースイベントがあった時に、お客さんとして見に行ったんですよ。
minan:そう! ものすごい存在感のある人がいるなって思って(笑)。
ami:ステージから見て、みんなで「え? 知り合い?」みたいな。
minan:その日の特典会が個別握手だったんですけど、まさか特典会に参加されるような風貌ではなかったのに、個別握手でメンバーみんなのところに来てくれてる。
mei:あの人、CDめっちゃ買ってくれてる! ってね(笑)。
デモ田中:30秒ぐらいで剥がされつつ、握手しながら早口でいろんな質問をして。
mei:普通のファンの方がしないような質問をどんどんしてくるんですよ(笑)。
ami:そうそう。「これからのリリスクをどうしていきたいの?」とかね。
M.C.BOO:質問が深すぎるわ!
デモ田中:まぁ、映画の中にもチェキ会のシーンもあったので、ファンの人たちはどういう気持ちなのかなって、リアルな感覚を知っておきたいというのもあったんですけどね。その後、衣装合わせで正式にみなさんとお会いして。その時に軽い本読みもやったんですけど、全員でセリフを回していくシーンは、やっぱりリズムが気持ちいいんですよね。さすがラッパーなんだなって思ったし「こういう風に作ればいいのか!」って、ひとつ見えた感じがありました。きっちり演技指導していくといいうよりは、彼女たちが自然に持ってる間を大事にして、映画としてのリズムを良くしていくことに特化しようと。