それぞれに感じたことがスマートソウルコネクション
──なるほど。『新国際ドラマ』の主題歌が「インターナショナル」で、あのドラマを繰り返し見ていると頭にこびりつきますよね。ただでさえスマコネの楽曲はCM音楽みたいでキャッチーなのに、あの曲は余計に。
コハ・ラ:「インターナショナル」は曲の構成をもっと盛り上がる形式にすれば良かったのかもしれないけど、えらい大サビがあるわけでもないし、淡々と進んでいくから一向に盛り上がらないでしょう? でも、そういうのをあえてやってみたかったんですよ。スナック菓子とか飴玉みたいな、それ単体ではお腹がいっぱいにならないものに近いと言うか、「あ、この飴玉はこんな味か」くらいの感じで過ぎ去って欲しいんです。大サビで盛り上がって「うわッ、カッコいい!」と感じるような音楽ばかりが音楽じゃないと言うか、もっといろんな音楽があっていいと思うんです。さっきの話と重複しますけど、音楽って絶対にこうあるべきだっていうのがないし、フォーマット自体もないんだから、何の盛り上がりもない「インターナショナル」みたいな曲があってもいいじゃないかと思って。
──むしろ、盛り上がれる楽曲を作るのはコハ・ラさんにとって簡単なことなのでは?
コハ・ラ:だと思うんですよね。僕は「エッ、これで終わっちゃったの!?」みたいに感じる隙のある音楽がたまらなく好きで、隙があるからこそお客さんは自由に解釈できるし、いろいろカスタマイズして体感できると思うんです。だから過剰な味つけはしないほうがいいのかなと思ったりしますね。
──どの曲も過剰な味つけが施されていないからこそ何度でも繰り返し聴けるし、装飾を詰め込みすぎていないのがいいんでしょうね。
コハ・ラ:そんなに多くのアイディアを発想できないし、いっぱいあるアイディアをパズルのように組み立てていくのが僕は苦手なので、できるだけシンプルなものを作るように努めているんです。誤解を恐れずに言えば、「無」であればあるほどいいのかもしれません。
──『新国際ドラマ』のような逸品を生み出せるわけですから、いっそのこと音楽と対等な立場の映画を作ってみようとは思いませんか。
コハ・ラ:僕は昔、映像の仕事に携わったことがあるので分かるんですが、映画の世界はただ創造性があるだけでは成立しないんですよね。たくさんのスタッフが関わってくるし、資金力も不可欠な総合芸術ですから。僕がハーモニカを吹いて、「この感じ、いいなぁ…。口じゃ説明できないけど、バンドのメンバーなら分かってくれるかな」とか思いながら極めて抽象的な説明をメンバーにして、それで何とか曲が形になっていく今のスタイルと規模が身の丈に合っているんですよ。その状況下で、何度噛み締めても味が出てくるもの、隙があるけど溜めが効いているもの、見聞きする側に次のステップへつながる階段を用意してくれているものを作りたいですね。
──今回の『ニューアクション』もまさにそんな作品ですよね。
コハ・ラ:僕の手を離れてスタッフの皆さんがアルバム制作の中で活かしてくれた結晶が今回の作品なので、「ああ、こんな作品に仕上がったんだ!?」という驚きもあるし、自分の考えていたことが100%形になったわけじゃないけど、でもだからこそ面白いんです。僕以外の十人十色の個性を持った人たちがそれぞれ違ったイメージを抱くのが楽しい。僕が感じたことではなく、聴いてくれる皆さんがそれぞれに感じたことがスマートソウルコネクションそのものなんですから。