Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー浄園 祐(ルパン三世プロデューサー)(Rooftop2015年12月)

ファンの目線で作る、今だからこそできるルパン三世

2015.12.01

 多くのファンが待ち望んでいた『ルパン三世』TVシリーズが30年ぶりに復活。永い間、同シリーズを支えていた友永和秀氏を総監督に迎え、まさに原点に立ち戻って制作された今作。随所に今までの作品のオマージュが散りばめられ、新旧ファンがともに心から楽しむことができるルパンはどのように生まれたのか。生みの親の一人でもあるプロデューサーの浄園祐氏から生誕秘話の一端を伺いました。[interview:柏木 聡(Asagaya/Loft A)]

ファンが本気で作っている

──浄園さんは長らくルパンシリーズに携わられてこられたとのことですが、最初に携わられたのはいつなんですか。
浄園:1996年のTVスペシャル『ルパン三世 トワイライト☆ジェミニの秘密』が最初です。その頃はまだ制作進行で、作品を追うごとにデスク、アシスタントプロデューサーと肩書きが変わってくるので「この人、出世していって、とうとうプロデューサーになったな」って思っている方もいらっしゃるかもしれないですね(笑)。TVシリーズではスピンオフ作品ですが、『LUPIN the Third -峰不二子という女-』にも関わっていました。
──浄園さんのアニメ史とほぼリンクする形なんですね。
浄園:そうです。さまざまなイベントで、ファンの方々に話を聞く機会があったんです。そこで僕がやりたいこととファンのみなさんが見たいルパンの世界観が一緒だということに気づいたんです。実現できればファンの方に支持をしてもらえると思ったので、やりたかったルパンを作れるように少しずつ進めていってたどり着いた感じです。
──やりかったルパンというのは、具体的にはどのようなものなんですか。
浄園:僕が一番好きなのは『ルパン三世 風魔一族の陰謀』なんです。あの作品はキャストが代わったこともあり、いろいろな捉え方があるんですけど、テレコムアニメーションが一番元気のあった頃の作品のひとつだと思っています。作画も爆発していて、キャラクターデザインの友永(和秀)さんを始めとした、大塚(康生)さんのDNAを引き継いでいる方たちが作っているので、そこをヒントにしました。
──まさに原点を知ってらっしゃる友永さんが今作では総監督をされていますが、お願いされた経緯を伺えますか。
浄園:『LUPIN the Third -峰不二子という女-』の途中でテレコム社長に就任することになったんです。青天の霹靂でしたが、その時にふっと「僕は友永さんを使っていいんだ、ラッキーかもしれない。ルパンをやる上でこんな凄い武器はない」と思いました。友永さんはルパンの中でも一目を置かれている方なので、まだまだやってもらわないといけないことがあるなと思ったんです。
──待望の友永バージョンですね。意外にもTVシリーズは初監督になるんですね。
浄園:今回は、友永バージョンのルパンに関わることができるということで集まってきたクリエイターの方も多くいらっしゃるので、やっぱりカリスマ性が凄いなと感じました。この業界はやっぱり人との繋がりなので、ファンが本気で作っているという思いを伝えられればと考えています。
──そこは実際に画面からも伝わってきます。第1話を見て深夜にやるアニメじゃない、夕方に子どもと一緒に見れるやつだと思いました。
浄園:そこを目指したんです。シナリオは高橋(悠也)さんなんですけど、アニメ偏差値を下げて、ドラマ性という軸を大切にしながらも、セカンドシリーズを意識して作ってもらいました。とにかく楽しいこと!
──さらに今作はルパンと次元を中心にしていて、話によっては他のレギュラーがあまり出てこない回もあるのが今回の特徴ですね。
浄園:今回大事にした点でもあります。そうすると今までやっていないことも意外と出てきたんです。各話で言えば結構遊べるというのもTVシリーズだからこそできることでもあるんです。最初はライターの人も全キャラ出そうとしていたんですけど、「必然性がないなら無理に出さないでいいから、代わりにスポットを当てる回を作ればいいだけだから」って、距離感を大事にしています。レベッカとニクスという新しい要素で、化学反応を楽しめるようにしました。
──各話でテイストが違っていて、楽しいです。
浄園:そこは高橋さんの采配の上手さもあります。友永さんも高橋さんも他の人のアイデアを上手く使ってくれる方なので、絵柄も各回の作画監督の絵にわざと近づけていて各話ごとに特徴を出しています。またセカンドシリーズとは違って、全体でドラマとして1本に繋がるようにもなっています。
──それが「イタリアの夢」ですね。今回は舞台がイタリアに限定されていて、さらに先行して放送されたというのも特徴ですが、選ばれた理由を伺えますか。
浄園:一番の理由はイタリアの方たちが長らくルパンを見ていて、ファンが多いということです。イタリアの方々は本当にルパンフリークなんですよ。青色のジャケットがいいと言ったのもあちらの方々だし、イタリアのアニメだと思ってるんじゃないか? というくらいみんな語るんです。向こうは午後2時に放送されているので、学校から帰ってくると見れるらしいんです。
 

オマージュが入っていても独りよがりにならないように

──今は好きなルパンが作れてるんですね。途中のアイキャッチもセカンドシリーズを意識されていて、ファンにとっては堪らないです。
浄園:そういうところは外さないように気をつけています。上がってきたラフの感じが凄い良かったのでそのまま行きました。
──絵も原作のテイストになっていいですよね。
浄園:そうなんですよ。まさに原作の雰囲気で、モンキー・パンチ先生の1コマを見ているような雰囲気で、評判良くてありがたいです。
──各要所でファンが楽しめるポイントがあって、さすが分かってくれていると思っています。OPは曲も映像も格好良くて、ルパンの持つシリアスさとコミカルさがバチッと表現されているので世界観が分かる内容になっています。
浄園:横堀(久雄)さんの仕事ですが、バランスいいですよね。今までのルパンのオマージュが入っていて、独りよがりになっていない印象がありました。テレコムとしても、大塚さんが残してくれたものもちゃんと踏襲されていて素晴らしいものを作ってくれました。
──EDもOPとのコントラストが出て、セカンドシリーズのEDらしくなっていると感じています。
浄園:石川(さゆり)さんの曲がゆったりした感じだったので、女性に担当してもらいました。本作では設定制作を担当している堀川(優子)さんにやってもらいました。演出志望なので、実質デビュー作です! 女性らしい綺麗なEDになっています。
──ルパンはジャズのイメージが強いですけど、演歌をメインで唄っていらっしゃる石川さんに依頼されたのはなぜなんですか。
浄園:大野(雄二)さんの意見ですね。僕も深夜アニメのEDを石川さんにというのは思ってもいなかったし、なんせ大御所すぎるし(汗)、もらった楽曲を聴いてさらに背筋がピンとなりましたよ(笑)。
──石川さんの曲なら劇場版などでバーンとフルで流したくなりますよね。
浄園:今時のアニメで石川さんがEDでいいのか? というのは最初あり、こんな重圧はないなと悩みました。ただ、曲にどっしりくるものがあったので、最終的には石川さんでいこうと決めました。ED映像も石川さんの黒子をつけてたんですけど、イメージが強くなりすぎてしまったので断定はやめようということで取りました。
──絵は石川さんをイメージしているというのは感じていました。
浄園:あくまで中身は不二子(笑?)なので、イメージしていることが伝わるのであればそれが一番だと思っています。不二子が歌手として演じているのか、石川さんがルパンの世界に降りてきたらこうなるのか、どちらかは視聴者の方の想像にお任せしました。
──石川さんはルパンのEDのオファーを受けた際はどういった感じだったんですか。
浄園:そこは大野さんにお任せしていたので分かりませんが、曲調に合わせるのはご苦労されたというお話は伺っています。石川さんの中にある「かわいらしさ」と時に入る「こぶし」が絶妙で、放送した金曜の朝にはつい僕も口ずさんでしまいます。
──それだけ作品に対するスタッフやファンの思いを真正面から受け止めていただけたということなんですね。
浄園:CDのジャケットイラストも石川さんらしく着物で行こうとしたんですけど、「ルパンとだから、ドレスが着たい」っておっしゃって、かわいらしい方でした。
──お話を伺っていると、浄園さんのバランス感覚が凄いなと感じました。これだけファンが集まって作ると、どうしても濃いファンだけに受ける作品になりそうですが、初めての方にも伝わるように注意している点はあるのですか。
浄園:ルパンには濃いファンももちろんいますが、普段はアニメをあまり見ない普通の人も多いので、ちょうどいいところにストライクボールを投げるようにするのは悩みどころでした。試写会に来てくれたファンからも「久しぶりに肩の力を抜いて見れて安心しました」と言っていただけたので、これでいいんだとホッとしました。
──藤井(ゆきよ)さんや咲野(俊介)さん、山野井(仁)さんとレギュラーになった方もいらっしゃいますが、アフレコの様子はいかがですか。
浄園:藤井さんは若手ですけど、いい意味で動じないところが良くて、レベッカの破天荒なキャラにとっても合っています。咲野さんや山野井さんも素晴らしく、脇も豪華なのが嬉しいです。ニクスのパパになる瞬間やロブソンのレベッカにお説教したりする場面など緩急のある演じ分けも素晴らしく、現場で僕らも大爆笑してます。
──新キャラ3人から、レギュラー5人にはない日常風景が出て物語全体に深みが出て、そこも面白いです。
浄園:一般の人たちをきちっと描かないとルパンたちの非日常が際立たないので、ニクスやレベッカたちが上手くその点を繋いでいるイメージです。ここ何年かの集大成で、押さえなくちゃいけないよねというのを気をつけつつ、多くのスタッフに助けてもらっていていい雰囲気です。
──謎が少しずつ解けていくのを楽しみに見ています。最後に、ファンに向けてメッセージをいただけますか。
浄園:30年ぶりのリアルタイム放送なので、今本当にルパンがTVでやってるんだ〜と感じていただければと思っています。そして阿佐ヶ谷ロフトAでのイベントを始め、各種コラボも楽しんでルパン漬けの2015年になってくれれば嬉しいですね。肩の力を抜いて気軽にルパン三世を楽しんでください。
 
<TV>
『ルパン三世』
日本テレビほかにて好評放送中
 
 
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LIVE INFOライブ情報

ルパン・座・トーク in 阿佐ヶ谷
出演:ルパン三世制作スタッフ
2015年12月19日(土)阿佐ヶ谷ロフトA
【昼の部】OPEN 11:00/START 12:00
【夜の部】OPEN 16:30/START 17:00
前売 2,000円/当日 2,500円(共に飲食代別)
*前売はe+にて発売中!!
問い合わせ:ロフトA 03-5929-3445
 

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