音楽が良くなければ誰も喜んでくれない
──バイクボーイさんがDVDのインタビューの中で「カリフォルニアのお客さんはリアクションが分かりやすい」と話していましたよね。ライブが良ければ拍手喝采、良くなければブーイングが起こるという。その中でマックショウのことをほとんど知らないお客さんを相手に目一杯盛り上げて、「ワンモア!」コールを受けるわけですから、自分たちのロックンロールが本国に認められた喜びを実感できますよね。
KOZZY:音楽が良くなければ誰も喜んでくれないからね。マックショウだって結成当初の1年間は全く手探りの状態で、当時は何の告知もなく突然ライブをやってたんだよ。大学生のアマチュアの女の子が唄ってるようなバンドの対バンで、池袋のライブハウスに出たりして。見た目で引く人もいただろうけど、アウェイな中でもウケればいけるな、って言うかさ。アメリカで最初にライブをやった時もそれは同じだった。日本でもアメリカでもアウェイの中でライブが良くなければみんな帰っちゃうから、凄くシビアだよ。
──ライブを3本全部見たという現地の熱狂的なファンのコメントもDVDには収録されているし、フロアの熱気もダイレクトに伝わりますね。
KOZZY:アメリカ人もちゃんとツイストを踊ってたよ。日本のツイストとは全然違ったけどね。身体がでかいから動きも大きいんだよ。近寄ったら危険だね(笑)。
TOMMY:みんな全身でガンガンに踊るからね(笑)。
──トミーさんとバイクボーイさんが食らいついていた巨大なハンバーガーを見れば、そりゃ身体もでかくなるだろうなとは思いますけど(笑)。
TOMMY:向こうにいると、あれが普通に食えるようになっちゃうからね(笑)。
KOZZY:それにコーラとポテトだから。豆腐の味噌汁と漬け物が主食の人種が体力で勝てるわけがないよ(笑)。
──カリフォルニアでの3本のライブを通じて持ち帰れたものとは?
KOZZY:個々の音色とかをあまり気にしなくなったね。
TOMMY:そう、ライブで細かいことを気にしなくなった。ステージに立ってジャーンと鳴らせばハイオッケー、みたいな感じになったね。
KOZZY:どんなお客さんの前でも楽しませることができるようになったのかもしれない。それもあってか、今やってるツアーは全部対バン形式で組んでるんだよ。ここ何年かはずっとワンマンで同じようなツアーを安定してやってきたけど、自分たち以外のいろんなお客さんが来てくれるのはいいことだと思う。
TOMMY:そんな流れになったのはアメリカに行ってからだよね。
KOZZY:うん。他のバンドがいるその場仕様のライブを今は自由にできてるし、対バン形式のライブをやってるからこそ年末のワンマンが活きてくる部分もある。今度のアルバムにもそういう自由さ、いい意味でのラフさが出てるんじゃないかな。せっかくいい曲が出来たんだからライブでもそれをちゃんと再現したいって気持ちが今まではあったけど、今回のアルバムに関してはそこまで考えなかった。『狂騒天国』の時に、一度全曲録ったのをほとんどボツにしたことがあったよね。仕上がりが気に入らなかったのは作品の土台となるものを緻密に考えてなかったからで、それで急いで録り直して自信を持って出したんだけど、今回は土台を緻密にしようとすら考えもしなかった。その場で出来た曲をみんなで突き詰めて、「これでいいじゃん!」って思えたものをそのまま出したって言うか。緻密さよりも、今出てきた音の雰囲気が歌の世界とマッチしてるかどうかが大事だったね。
──音の良さに関してはこれまでのLA録音で充分突き詰めてきましたしね。
KOZZY:アメリカでの録音は僕らも気分が上がってるし、音の抜けもいいから広がりのあるいい音に仕上がるんだけど、そのノウハウを持ち帰ってここでやれるように環境を整えたね。あと、いつも最初のほうに録った曲は3日後くらいにノリが出たところで録り直すことが多いけど、今回はそれもやらなかった。「これはこれでいいじゃん、これが今回の音なんだからさ」って感じでね。
──今まで以上に初期化していると言うか、プリミティヴな手法だったわけですね。
KOZZY:そうだね。録ったものをデジタルに置き換えてマスタリングする作業は変わらないんだけど。