キャロルとビートルズ。身も蓋もない言い方をすれば、ザ・マックショウとはその両雄の音楽性と佇まいが含有成分として大きな比重を占めるバンドだ。少なくとも結成当初の十数年前はそうだったはずだが、昭和八十五(2010)年の再始動以降、年に一枚のペースでオリジナル作品をコンスタントに生み出していく過程で確固たるオリジナリティを築き上げたのは瓢箪から駒が出たと言うべきか。
通算12作目となるスタジオ作品『TWISTIN' CARNIVAL』でも古今東西のロックンロールの真髄がギュッと凝縮されていることで既視感ならぬ既聴感を覚えるが、原典はついぞ見当たらない。腰にクるトゥイスティン・ビートにグッド・メロディの金太郎飴状態はマックショウにしか為し得ない。一緒に唄えて陽気に踊れる昂揚感、胸をかきむしられる感傷を3分足らずのロックンロールで自在にもたらす純和製ロックンロールの名伯楽。真夜中の蜃気楼を追い求めて、彼らは今夜もどこかで灼熱のトゥイスティン・カーニバルを繰り広げる。(interview:椎名宗之)
どんな状況でもライブをやれなきゃバンドじゃない
──前々作の『狂騒天国』は3人の歌と演奏だけでどこまで突き詰めたものが出来るかがテーマ、前作の『スリー・ホット・ミニッツ 〜3人はアイドル〜』は3分間で“Hot”になれるシンプルな3コードのロックンロールを極めるのがテーマでしたが、今回の『TWISTIN' CARNIVAL』はどんな方向性で行こうと考えていたんですか。
KOZZY MACK(vo, g):『TWISTIN' CARNIVAL』ってタイトルにしたくらいだから、踊れる曲を主体に作ってはいたかな。まぁ、マックショウのメンバーが普段から踊ることはないんだけどさ(笑)。
TOMMY MACK(b, vo):どっちかって言うと踊るのは苦手なほうだからね(笑)。
KOZZY:ただ、ロックンロールは楽しく踊れるダンス・ミュージックなんだ、っていうのがテーマとしてあったね。僕のソロのアコースティック・ライブには歌をじっくり聴かせる良さがあるけど、マックショウのライブには陽気に踊って一緒に唄える楽しさがある。それを今回は打ち出してみようと。その意味では、並行してやってる活動があるからこそ見いだせたテーマと言えるね。
──「Pam Pam Pam」や「とにかく今夜(Anyway, Tonight Twistin')」はまさにそんな感じの踊って唄えるトゥイスティン・ナンバーですけど、「今夜は Showdown」や「高速ヘヴン」といったミッド系の曲、「ガソリンスタンド」や「カワサキ・レイニーデイ」といった憂いを帯びた美しい旋律の曲が本作では特にグッとくるんじゃないですかね。
KOZZY:それはきっと歳をとったからだろうね(笑)。「今夜は Showdown」なんて、あまりに上手に出来たから入れるのをやめようかなと思ったんだけどさ。その辺の曲が最初にたまたまバーッと出来て、それらを軸に構成を練り上げていったんだけど、曲調のバランスは今までのアルバムとそれほど変わらないと思う。ただ今回はリズム的な部分で踊れる曲を意識していたので、バラード系やミディアム系の曲でもリズムはしっかり強化した。僕らもロックンロールの世界である程度は信用のあるブランドになってるから、そこはちゃんとしないといけないなと思ったね。
──今回は国内レコーディングで、全部このスタジオ(ROCKSVILLE STUDIO ONE)で作業したんですよね。
KOZZY:うん。今年の6月に向こうにライブで行って、そのまま録音しちゃおうかって話もあったんだけど、アメリカでライブをするのはかなりの集中力が要るんだよ。MCも全部英語でやるしね。それにレコーディングもやると滞在も相当長くなるし、ツアー中でもあったし、レコーディングはライブの経験を持ち帰って日本でやろうってことになった。
──本作の“SPECIAL EDITION”には、そのカリフォルニアで行なわれた3本のライブの模様を精選したドキュメンタリー映像がDVDとしてパッケージされていますね。
KOZZY:ライブ・シーンは2本目と3本目のライブから選んだんだけど、1本目のライブは現場がバタバタでね。音も酷くていまいちだったから、ほんの数カットを部分的に使うだけにした。
──集中力は必要でしょうけど、アメリカでのライブは何度も経験されているし、お手のものなのでは?
KOZZY:いや、アメリカでライブをやるのは今回が初めてだったんだよ。まぁ、どこでライブをやってもやれることはあれ以外にないけどね。ただ、アメリカはモニターが置いてあるけど音が出ないとか、その辺の環境は日本と全然違う。
──DVDの冒頭で、トミーさんが「シンバル・スタンドがないんだけど…」と困惑しながら電話しているシーンがありましたね。
TOMMY:そう。現場に行ったら何にもないから、アレッ!? って(笑)。
KOZZY:あのサンディエゴのバーでリハーサルをやるにも、PAが来ないと電源を入れられないんだよ。結局、PAが来たのは夜の8時だったから。
──ライブは何時からだったんですか。
KOZZY:8時半くらい(笑)。シカゴにいる友達に「PAが来てないんだけど、連絡取れる?」って電話して、シカゴ経由で折り返し連絡をもらったら、そのPAが「ごめんごめん。あれ? ライブ今日だった?」なんて言ってさ(笑)。一事が万事、その調子。
TOMMY:ライブをやり始めた当時とか、昔を思い出したよね。
──でも、ライブ・バンドとしてはメンタル的にも鍛え上げられそうですね。ハンブルグ時代のビートルズも劣悪な環境の中でライブをやり遂げたと言いますし。
KOZZY:基本的に海外はそんなもんだけど、全然やれるよ。どんな状況でもやれなきゃバンドじゃないしね。まぁ、向こうでライブを3本やったらすっかり疲れ果てたけど(笑)。