──「どこにも故郷のない人は」、ずっと同じ顔ぶれでバンドを組めない性分なのかもしれませんね（笑）。

佐々木：（笑）でも、ロックンロール・バンドはやっぱり俺の性に合ってるんですよ。自伝みたいな「花」を書いてる時もAFOCはずっと転がり続けるバンドなんだなと痛感したし、根なし草のように転がり続けていくのが自分の運命なのかもしれない。目の前で起こる運命をすべて引き受けて生きていくしかないって言うか。

──そう、亮介さんはいつだって良いことも悪いことも全部引き受けるんですよね。

佐々木：引き受けた末にフラレるんですよ。基本的にフラレ体質なのかな（笑）。

──まぁ、お客さんにフラレなければ万事OKでしょう。

佐々木：良いこと言いましたね（笑）。メンバーが変わるたびに離れていくお客さんがいるのは分かるし、仕方のないことなんですけどね。でも、バンドが歩んできた約10年分の経験や思いを詰め込んだこの「花」という曲は、これまで離れていったお客さんにも必ず突き刺さると思うんですよ。だから「あれからAFOC聴いてないな…」って人にも是非聴いて欲しいですね。今まで発表してきたどのアルバムにもあったAFOCの核となる部分が凝縮した曲だし、どの時期のAFOCが好きでも必ず気に入ってもらえると思うんです。まだ聴いたことのない人にはどんなバンドなのかが一発で分かってもらえるだろうし、ある時期のAFOCが好きだった人にも絶対に刺さるはずなので。そこはアピールしておきたいですね。

──この9年、客層がだいぶ変わったのを感じますか。

佐々木：変わったと言うより広まったという認識ですね。前よりも圧倒的に男の人が増えたし、年齢の幅が広がりました。親子連れもいるし、自分の親くらいの年齢の人もライブを見に来てくれるようになったし。それはソロの弾き語りライブをやってても感じますね。だから最近強く思うのは、老若男女が分かる言葉で唄いたいってことなんです。この間、気仙沼のサンマフェスティバルっていうのに弾き語りで出たんですよ。それは無料のフェスなので誰でも来れるし、若い人はもちろん、お爺ちゃん、お婆ちゃんから親子連れまで幅広い客層だったんです。そこで中島みゆきさんの「ファイト！」をカバーした後に「花」を唄ったんですけど、ちゃんと伝わってる実感があったんですよね。自分たちをもっと大きなステージに上げようとしている今だからこそ、みんなに分かる言葉、尚かつ本質的な言葉の歌を唄うべきだと思って。それもサービス精神でみんなに分からせようとするだけじゃなく、ちゃんと自分が伝えたいものをもっと研ぎ澄ませていきたい。それが今一番やりたいことですね。

──もっと広く共感を得たいというのもまた違うんですよね？

佐々木：共感を通り越してびっくりさせたい、分かってもらいたいという気持ちはあります。「花」は俺の自伝的要素を含んでるけど、どこかで誰かの人生に刺さるようにもしたかったんですよ。だからサビで「届け 届いてくれ」と叫んでるし、自分のパーソナリティを超越して誰かに刺さることを意識したんです。「花」はどこを聴いても絶対に刺さるように全部をパンチラインにしたかったし、そんなふうに言葉に対する意識が前よりも強まった気がしますね。

──盤石の体制は整ったし、来年の結成10周年はいろんなことを期待して良さそうですね。

佐々木：たっぷり仕込んでますよ。少しヒントとして言えるのは、AFOCは去年の4月の野音以来でかいワンマンを打ってないので、次のワンマンの形を考えてもいます。「なんでワンマンをやらないんですか？」って苦情に近い問い合わせをすでにけっこうもらってるので（笑）。まぁ、来年は何があろうととにかく楽しい一年にしたいですね。毎年悲壮感の漂うようなことばかり起こるけど（笑）、ロックンロールは楽しいってことを体現するのがベーシックの部分ですから。いつも以上に楽しい景色をみんなに見せたいし。

──幸福の配分が最終的にみんな一緒というなら、AFOCはこの9年間で幸せを掴む貯金がだいぶたまっているでしょう（笑）。

佐々木：「人生、山あり谷あり」なんてウソだと思いましたからね。「人生、谷あり谷あり」が真実ですよ（笑）。でも、だからこそ今もこうして山を目指してる。これから登れる山があるのは幸せなことだと思います。諸先輩方のバンドを見ると「まだまだ行けるな」って勇気をもらえることもあるけど、まだまだ行けるどころか、自分たちはまだ何も成し遂げていないと思ってるので、ロックンロールの日本代表として「花」を咲かせたいですね。