沖縄の人達が止めたいのは日本で再び息を吹き返そうとしている「戦争」そのもの
──先日、佐野元春さんが大浦湾を訪れてましたが、最近はミュージシャンの間でも辺野古に行ったり、言及したりする雰囲気が出てきてますね。
三上 そうですね。高江の方は最初からたくさんのミュージシャンが支えていて原動力になってましたが、辺野古の方にはそれがなかったんです。ヒロジさんは高江の状況も知ってるから、辺野古の運動にも歌や踊りや笑いが必要だと思ったんでしょうね。今後はもっともっとミュージシャンの人にも辺野古について発言して欲しいです。
──そういう意味では、Coccoさんがナレーションをしているのも大きいですね。Coccoさんとはお知り合いだったんですか?
三上 彼女とは以前一緒にドキュメンタリー番組を作ってるんです。2007年なんですが、その頃は誰も辺野古の問題に関心がなくて、どうやったら興味を持ってもらえるんだろうと思って、「人魚の棲む海〜ジュゴンと生きる沖縄の人々〜」という、地元の人々が撮影隊を作ってジュゴンを撮影するというドキュメンタリー番組を作ったんです。その番組のナレーションをCoccoさんがやってくれたんですが、その時の撮影隊が撮った2匹のジュゴンの姿を見て、Coccoさんは「ジュゴンの見える丘」という曲を作ったんですね。
──キャッチコピーに「伝えきれない沖縄」とありますが、中でも監督が一番伝えたいことは何でしょう?
三上 うーん、それをこの2時間9分にまとめたってことなので、映画を観てもらうしかないんですが…。1つ言いたいのは、あなたが知っている沖縄の基地問題は虚像かもしれないということ。この映画は、沖縄の基地負担を減らして欲しいなどという生やさしいものを描いているのではなく、いま沖縄が日本の運命を決める大きな岐路に立っていて、沖縄の人達が止めたいのは日本で再び息を吹き返そうとしている「戦争」そのものなんです。だから「基地問題を考えたいけどちょっと距離があってね」とか「沖縄の人に押しつけて申し訳ないんだけど」とか、そういうレベルでこの問題を捉えている人はまず観に来て欲しい。全然そういうんじゃないから。
──これはあなたの問題ですよってこと?
三上 「あなたの問題だ」っていうのも安っぽい言い方で、それだと道徳の授業で説教されてるみたいじゃないですか。今あなたの大事なものが奪われようとしている。その傷口が一番露わになっているのが沖縄だから、沖縄に来るとこの国がどこまで病んでしまっているかがよく分かる。分かるはずだと思うんです。この国に生きる人みんなが平和に暮らすために、沖縄の人が今戦っているという姿をぜひ観て欲しいです。
(三上智恵監督)