2014年8月14日、辺野古沖は「包囲」された。
普天間基地の代替施設という名目で、サンゴとジュゴンの最後の楽園と呼ばれる辺野古の海が埋め立てられ、最新のアメリカ軍基地が作られようとしている。基地建設に抗議するわずか4隻の船と20艇のカヌー隊を制圧するため、日本政府は機関砲を装備した大型巡視船を投入し、防衛局と海上保安庁の80隻以上の大船団が大浦湾を包囲した。その異様な光景を見た一人の沖縄の青年は「これはまるで戦争だ」とつぶやいた。
キャンプ・シュワブゲート前では、工事車両をなんとか止めようと多くの市民が座り込みを続けている。市民の前に立ちはだかるのは沖縄県警と民間警備会社。基地を作るのは日本政府だが、沖縄県民同士が対立しぶつかり合っているのだ。資材を積んだトラックの前に85歳のおばあが立ちふさがる。「私を轢き殺してから行きなさい」
昨年7月から米軍基地ゲートの前で始まった沖縄・辺野古の基地建設反対の座り込み抗議は、11月の県知事選になるとオール沖縄の「島ぐるみ闘争」に発展し、基地建設に反対する翁長雄志が圧勝した。しかし、こうした沖縄の民意を一切無視するかのごとく、日本政府は県知事選の3日後に海上工事を再開し「粛々と」続けられている。
一体、沖縄で今、何が起きているのか?
映画『標的の村』で、高江のヘリパッド建設に反対する住民が通行妨害で国から訴えられるという前代未聞のSLAPP訴訟と、オスプレイ配備に反対する市民による普天間基地のゲート封鎖の攻防をドキュメンタリー作品として世に問い、日本中で議論を呼び起こした三上智恵監督が、現在、辺野古の海とゲート前で起こっている激しい衝突を記録し、再び世界に向けて発信したのが映画『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』だ。基地問題を20年間にわたって取材し続けてきた三上監督にとってこの映画は「沖縄の負担を減らして欲しいなどという生やさしいものではない」と言う。沖縄の人達が国と全面対決してでも止めたいのは、日本で息を吹き返そうとしている「戦争」そのものであると。
国会では今、集団的自衛権の行使を可能にする法案が審議されているが、戦争に翻弄され続けた70年に終止符を打ちたいと願う沖縄の姿を、今こそすべての国民は正視すべきではないだろうか。東京での緊急先行上映を目前に控えた三上監督に映画に込めた思いを語っていただいた。
(インタビュー:加藤梅造 / 写真:(c)2015『戦場ぬ止み』製作委員会)
映画を観た人は、ちゃんと受け止めて動いてくれるし広めてくれる
──『標的の村』はテレビ番組として制作され、その後ドキュメンタリー映画になりましたが、『戦場ぬ止み』は最初から映画として制作されたんですよね。
三上 私はずっとテレビで仕事をしてきたので、映画のドキュメンタリーを作ることの意味をあまり考えたことがなかったんです。『標的の村』を映画にして初めて思ったのは、今までニュースにしても番組にしても全然広がらなかった基地問題が、映画にしただけでなんでこんなに広がるんだろうと率直に驚きました。それまでテレビの視聴者と映画の観客との違いをわかってなかったというか、映画を観る人は選んで足を運んでくれただけに、ちゃんと受け止めて動いてくれるし広めてくれるんだと実感しました。みなさん凄いです。だから『標的の村』の次の作品は絶対に映画でやりたいと思っていました。
──映画に専念するためにQAB(琉球朝日放送)を昨年退社されたんですよね?