Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューKAGERO(Rooftop2014年10月号)

狭義のジャズとパンクを蹴散らす異端児が体現する世界最先鋭のオルタナティヴ・ミュージック

2014.10.01

4人ともKAGEROをやってる時が一番格好いい

──他のバンドと両立することでバランスを保っているのは、菊池さんと萩原さんも同じなんですか。

菊池:うん、そうですね。

萩原:ライブをやる、曲を作るのはどのバンドも特に差はないんです。どれも名義上はサポートじゃないので、自分らしく楽しくやってるんですけど、自分たちで企画を組んだり、物販を作ったり、演奏以外の諸々のことはKAGEROが一番自由にやれるんですよ。いろんな人たちが力を貸してくれるし、こういうリリースのための宣伝力もあるし。だからこそやりがいも大きいんです。

白水:やりたいことをやり切って、それが一番報われるのはKAGEROだもん。ハギも言うように、バンドとしてできることのレベルが違う。物販ひとつ作るにしても、他なら予算的に無理だったりすることもあるじゃん。そういう意味でも好きなものが作れる。スケジュールも各自いろいろあるなかでKAGEROを優先してくれてるしね。

──それだけの価値がKAGEROにはあるからじゃないですか?

白水:まぁ、3人が他にやってるバンドはもちろん僕も知ってるけどさ、4人ともKAGEROをやってる時が一番格好いいもん。

菊池:私、他のバンドで鍵盤の肘打ちとかしないですよ?(笑) あれはKAGEROだと自然に出ちゃうから不思議。

佐々木:この間、智恵ちゃんとお互い違うバンドでセッションしたんですよ。KAGEROとは違って普通に楽しく弾いてて、ニコニコしてたよね(笑)。

白水:僕も含めて4人とも、KAGERO以外の現場で会うとやたらニコニコしてるよね(笑)。みんな凄く普通に楽しそうだわ。

──居合い抜きのように緊迫したKAGEROのセッションの反動と言うか(笑)。

白水:ニコニコしてるのは“本性”じゃないから。そこで人間としてバランスを取ってるよ。

萩原:僕はスタイルの違うバンドを複数やってないとバランスが保てないんです。

佐々木:それはあたしも同じ。

萩原:バンドをひとつしかやってないと、やりたいことを次々とやり切ろうとして時間も体力も消耗しちゃうんです。やりたいことは複数のバンドで少しずつ散らすのが自分には合ってるんですよね。

白水:Ruppaさんが言ってたみたいに、他の表現から得た経験をKAGEROにフィードバックすると新鮮さを保てる。じゃなきゃ普通こんな編成でこんな音を出し続けるのは無理だよ。その意味でもKAGEROは特殊なバンドだと思う。

DSC_2788_web.jpg──特殊ですよね。「Pile Bunker」みたいに極悪非道な音を前面に押し出した曲と「13 -Thirteen-」みたいに夢心地な音色が優しく包み込む曲が違和感なく共存したアルバムを作れるくらいですから。

萩原:「Pile Bunker」みたいな激しい曲をRuppaさんが作ったのが俺は面白いなと思って。

佐々木:あんなにギチギチした音になるとは思わなかったけどね。

白水:いや、あなたからの指定は最初からかなりギチギチでしたよ(笑)。

佐々木:まぁ確かに、ハギに「左手がヒマそうだ」とか言ったり、白水の演奏に「熱を感じない」「もっとちゃんと弾けないのか!?」とか言ったりしたね(笑)。

白水:「あ、これ絶対に弾いてやるわ」って思ったね(笑)。「Pile Bunker」はフリー・スタイルってわけじゃないんだけど、ファーストの「SCORPIO」みたいに高い波動を保ってるのに、自由に演奏できる曲ってのをRuppaさんが持ってきたのには凄い驚いたな。

 

いつだって昨日より今日のほうがいいライブをやれる

──確かに「Pile Bunker」は初期の武骨なKAGEROを彷彿とさせますね。

佐々木:今回の収録曲のなかでは一番ジャズ的なフォーマットの曲ですからね。最初は「丸太でドーン」っていうタイトルだったんだけど(笑)。

白水:Ruppaさんの曲はアルバムに必ず1曲入れることにしていて、大抵はアルバムの最後に配置してたんだけど、今回は最後が「Pile Bunker」じゃさすがに後味が悪いかなと思って(笑)。

佐々木:「Pile Bunker」は白水の“ゲッ!”“グォッ!”っていうベースの音がとにかく怖いよね(笑)。

白水:今回はベースの音もエンジニアさんに任せっきりにしないでちゃんと自分で作ったもん。昔はさ、バンドの活動が長くなればいろんなことを人に任せられるんだって思うじゃん。ミックスとか、デザインとか、パッケージとか、アーティスト写真とかビデオとか。でも実際は真逆で、何でもかんでも自分の手で携わるようになってきてる。

──本気度が上がってきたということですか?

白水:いや、自分で責任持ってアイデア出したほうが絶対納得するし、なぜか周りの評価も高いし。じゃあもう自分で責任持つわ、って。

DSC_2814-2_web.jpg──ファーストが出た時の本誌のインタビューで、Ruppaさんが「ジャズが好きなヤツは『KAGEROはジャズだ』って言うし、パンクが好きなヤツは『KAGEROはパンクだ』って言う、取り合い状態になるのが理想」と話していましたが、あれから5年経って状況はどんな感じですか。

白水:ジャズの人たちには未だにあんま関心持たれてない気もするけど(笑)。まぁハギが加入してくれたお陰で、有り難いことにパンクとかハードコア方面からライブの誘いを受けることが増えた。

佐々木:ジャズの方面からは遠ざかってるよね。

萩原:ジャズと言えば、どうしてもオーセンティックと言うかトラディショナルな形態を連想しがちだけど、KAGEROの考えるジャズはそういうのとは違いますからね。

白水:Ruppaさんや僕が「ジャズでありたい」って言う時の“ジャズ”という言葉は、“オルタナティヴ”や“パンク”と同義語で。

佐々木:新しいことをやりたい気持ちがジャズってことだよね。

白水:狭い意味でのジャズっていうのは、テーマがあって、ソロを回して…っていう形式的なもので。同じ曲をやっても、編成や演奏する人が変わるだけで違う曲になるっていう音楽が、狭い意味でのジャズ。

佐々木:あたしにとってそういう意味のジャズはあまりに狭くて、伝統芸能に近いんですよ。もっと分かりやすく、聴いてる人にも自由を感じてもらえる音楽=ジャズって思うので。

──まぁ、KAGEROはジャズと捉えられようがパンクと捉えられようが最早どうでもいいという境地に達しているような気もしますけど。

白水:今までずっとiTunesでのカテゴライズはジャズで、それに違和感を覚えた。だから今回の先行シングルからジャンルをオルタナティヴに変えた。ちょっと分かりづらい立ち位置かもしれないけど、KAGEROは日本で言われているジャズとは似て非なるものなんだろうね。

──もっと自由で新しい音楽を貪欲に追い求めることがKAGEROにとって一番のモチベーションなんでしょうね。

白水:今のこの4人なら、KAGEROでやってみたいことをいろいろと具現化できる。今のKAGEROは常に昨日よりも今日のほうがいいライブをするし、音源だってどう考えても今回のアルバムが一番いいもん。

──昨日よりも今日ということは、『IV』を超える作品を出す自信も余裕であると?

白水:だって『IV』に入ってる曲はもうほとんどライブでやってるし。今度のツアー・ファイナルのロフトでは、もしかしたら新しい曲をやってるかもしれない(笑)。今のこのスピード感を保ちたいし、この4人のKAGEROでやりたいことは全然尽きないね。

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KAGERO IV

RAGC-007/価格:2,000円+税
2014年10月15日(水)発売
発売:Ragged Jam Records
販売:株式会社KADOKAWA メディアファクトリー

amazonで購入

【収録曲】
01. OVERDRIVE
02. flower
03. Pile Bunker
04. sister
05. THE FOREST
06. HONEY BEE
07. 13 -Thirteen-
08. MY SLEEPING BEAUTY
09. LITTLE GARDEN
10. ill
11. The Spring Landscape
12. CRY BABY

LIVE INFOライブ情報

KAGERO『Ⅳ』リリースツアー「The Winter Landscape」
11月7日(金)東京:下北沢SHELTER (ワンマン)
11月16日(日)大阪:心斎橋FANJ
11月23日(日)北海道:札幌SPIRITUAL LOUNGE(KAGERO vs Jake stone garage)
11月30日(日)宮城:仙台PARK SQUARE(with GEEKSTREEKS and more!)
1月10日(土)愛知:名古屋CLUB ROCK'n'ROLL(KAGERO vs ???)
1月17日(土)静岡:静岡Freaky Show(KAGERO vs ADAM at)
【ツアーファイナル】
2月1日(日)東京:新宿LOFT

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