ドラム、ベース、サックス、ピアノという編成はジャズ・フォーマットに則ったものなれど、そのアティテュードは徹頭徹尾、パンク。KAGERO〈カゲロウ〉を名乗る4ピース・バンドがブッ放すスリリングな音楽は揺るぎないパンク・スピリットに根差し、あらゆる規制と既成概念から逸脱したフリーキーかつアナーキーな爆走ジャズ・パンクだ。ジャズ特有のブルー・ノートやインプロヴィゼーション、ポリリズムといった要素を巧みに採り入れた演奏はパンクが本来持ち得た何事からも自由な思想性と結実するものであり、彼らの提示する音楽が精神性としてのパンクと肉体性を帯びたジャズが融合したものであることは当然の帰結だったのかもしれない。そしてその臨界点キワキワなKAGEROの音楽は、本質を掴もうとすればするほどすり抜ける風のようでもあり、とこしえに実態を掴めない影踏みのようでもある。"掴めそうで掴めないもの"の喩えとして「陽炎、稲妻、水の月」という古語があるが、これから先は「KAGERO、稲妻、水の月」と言い換えたほうがいいのかもしれない。(interview:椎名宗之)
選りすぐりの楽曲を一番いい演奏で録った
──今年は2月にオリジナル・キーボーディストが離脱したと思いきや、それをバネにするかのようにヴィレッジ・ヴァンガード限定シングル『official bootleg』、コンピレーション・アルバム『IN YA MELLOW TONE 3』、『official bootleg』にライヴ音源3曲を加えた『official bootleg+3』(iTunes store 限定)、そして今回のファースト・アルバムと矢継ぎ早にリリースを重ねてきましたね。
白水 悠(bass):激動でしたね。キーボードが抜けて最初は3人でやろうと思ってたんですけど、偶然ピアノを弾いてくれる子と出会って、いつ何が出るんだか判らない状態でレコーディングが重なって...っていう感じで。去年の下半期はいろんな話がなかなか進まずに足踏みをしていた状態で、それがかなりのストレスだったんですよ。9月にクアトロでやったライヴは今年の頭に半ばヤケクソで決めて、そのテンションを保ったままここまで突っ走ってきた感じですね。
──鬱屈してきたマグマが一気に爆発したと言うか。
白水:結成してからコンスタントにワンマン・ライヴやリリースを自主でやってきたんですけど、去年の半年間は何も物事が動かない初めての時期だったんですよ。
Ruppa(sax):止まってる感じが馴染めなかったよね。それまではワンマンなりリリースなり目標に向かって進んできたのに、足踏みしてるのが気持ち悪かったんです。
白水:今年はこれだけリリースを連発してきたけど、自然な感じはしますよね。以前は毎月1本イヴェントをやっていたくらいアクティヴだったわけで。
Ruppa:毎月1枚は新しい音源を出したいよね、みたいな話をしてた時もあったしね。前の月のライヴ・アルバムを録って出しでどんどんリリースしてどんどん変わっていこうよ、って。
白水:そういうペースのほうが馴染めるから、自然っちゃ自然かなと。
──今回発表される初のフル・アルバムは、結成以来4年間の集大成的な趣きもありますか。
白水:ここで一度まとめ上げて、次のステップを踏み締めるニュアンスもありますね。
──KAGEROの第1期ベスト・アルバムとも呼べるような。
白水:うん、ホントにそういう感じです。今まで発表してきたベストの曲を今一番いい演奏で録れましたね。
──結成当初からジャズをベースとしたバンドを組もうと考えていたんですか。
白水:いや、全く。最初は僕とドラムの(鈴木)貴之がスタジオでセッションして遊んでた程度で、僕は当時ジャズなんて全然聴いてなかったんですよ。
Ruppa:そのセッションも勝手すぎて酷かったよね。ドラムが「こういう感じで行こう」と演奏が始まって、あたしが入った瞬間にいきなり転調したり、拍子を変えたりするんですよ(笑)。あたしがいることを全く気にしていない感じで、ちょうどあたしが乗った辺りですぐに飽きるんだよね(笑)。
白水:同じことをやり続けるとすぐに飽きる習性なんですよ(笑)。最初はそんな感じで音を出して遊んでただけで、女の子のヴォーカルでも入れたバンドをやるかなんて話をしてたんです。でも、ドラムとベースとサックスとピアノでライヴをやったらシブくね? ってことになって、曲を作ってスタジオに入ると凄く楽しくて、手応えを感じたんですね。ただそれも発信するものじゃないと思ってたんだけど、ライヴをやったらお客さんのリアクションが凄くて。それを見て、"あれ、これイケるの!?"と思ったんですよね。
──編成も独特だから、お手本になるようなバンドもなさそうですね。
白水:全くなかったですね。でも、だからこそやってて楽しかったんだと思います。
──バンドの主導権を握っているのは白水さんなんですか。
白水:アイディアを出して最終的にまとめるのは僕だけど、主導権はないですね。みんな言うことを聞かないので(笑)。主導権じゃなくて決定権はあるのかな。
自分たちの精神性はパンクにある
──躍動的と言うよりは暴動的なリズム隊に火を吹くような狂乱のサックス、その隙間を縫うように容赦なく叩きつけられるピアノというバンドのアンサンブルと在り方は、ジャズ・フォーマットながらパンクの精神性を感じずにはいられないですね。パンクの様式だけをなぞらえたパンク・バンドよりもKAGEROのほうがずっとパンクだと思うし。
白水:そう言ってもらえると凄く嬉しいですね。自分たちの精神性はパンクにあると思ってるので。
──ライヴはスタジオ音源以上に破天荒なのが容易に窺えますね。
白水:今回のCDもライヴと変わらない録り方をしたんですよ。4人一緒にエイッ!と録る感じで。音を作り込むニュアンスがまだイメージできないって言うか、ライヴでやってることをライヴに近い状態でCDに収められればいいなという感覚で作りましたね。
──ライヴを再現しようとするとどうしても冗長になりがちだと思うんですが、約50分にわたる全12曲が一気に聴き通せる構成になっていますよね。
白水:僕もそう思いました。聴いててすぐに終わった感じで。
Ruppa:録ってる時も結構サクサク進んだよね?
白水:そうだね。普段のライヴもあっと言う間だし、9月にクアトロで1時間ライヴをやった時も長々とやった感覚は全くなかったしね。"ああ、もう終わりか"っていう。
──"まだやり足りねぇぞ!"みたいな?
白水:いや、"もうムリです"って感じです(笑)。体力的には限界ですよ。
──録りで最も気に留めたのは勢いや熱量の高さを封じ込めることでしたか。
白水:今まで通りやることですね。今までライヴで積み重ねてきたことをそのまま聴かせると言うか。とは言え、CDならではのアドリブも入れたし、CDで初めてやったこともあります。そういうのはライヴのノリと同じですから。
──メンバーの変遷はありつつも、各自のプレイのスキルを含めて今このタイミングでアルバムを発表できたことは結果的に良かったんじゃないですか。
白水:そうかもしれないですね。仮に去年の鬱屈した時期に録っても、こんな仕上がりにはならなかった気がするし。アルバムを録った時は状況が混沌としていて、ワーッと録った感じなんです。3ヶ月後にはクアトロも控えていて、何が何だか訳の判らない状況で。
──レコーディングとライヴの時期をはっきり分けたがるバンドも多いですけど、皆さんの場合は?
Ruppa:余り気にはしませんね。ただ、いつもやってるリハよりもさらわなきゃいけない曲が多いのが大変でした。何せ、40分のライヴでも6、7曲やって30分足らずで切り上げるバンドなんで(笑)。
──『SCORPIO』や『DEATHVALLEY HIPPY DUCK』のように爆走に次ぐ爆走ナンバーばかりではなく、『PRETTY』のようにアンサンブルの大きなうねりを感じさせるナンバーもあって、いわゆる"爆走ジャズ・パンク"というカテゴライズでは括りきれないバンドの懐の深さを堪能できますね。
Ruppa:爆走っちゃ爆走なんだけど、その中でメンバー同士で演奏しながら遊びたい部分があるんですよ。
白水:同じ曲調だと出てくるアドリブも似通ってくるし、曲の振り幅は大きいほうがいいんですよね。頭に描くフレーズもそれだけ変わりますから。
──その日の体調やその場の空気や感情によって即興の妙味も変わるんでしょうね。
白水:今まで聴いてきた音楽も、危ないものを持ってるのが好きだったんですよ。それがライヴだと思うし、予定調和なものを見た時に凄くイヤな気分になることもありますね。予定調和なライヴ、予定調和なMC、予定調和なアンコール...そんなのを見ると本気でヘドが出そうになる。
──「○○の皆さん、今日は呼んで下さってありがとうございました」みたいなね(笑)。
白水:そんなこと楽屋で言え! と思いますよね(笑)。
ジャズからもパンクからも取り合いになるのが理想
──KAGEROはジャズをやっている意識がまるでないんじゃないかとアルバムを聴いて思ったんですけど。
白水:そういう意識はゼロですね。
Ruppa:ジャズかロックかパンクかって言ったら、断然パンクですから。
白水:演奏してる楽器や編成が日本ではジャズと呼ばれちゃうのかもしれないですけどね。ただ、考え方がジャズ・ミュージシャン的だと言われることはあります。
──ジャズのフォーマットでありながらも、そこから逸脱したパンキッシュなライヴを魅せる山下洋輔さんのようなミュージシャンもいらっしゃいますよね。ああいう枠に収まり切らない感じがKAGEROにもあると思って。
白水:そうですね。吉田達也さんも考え方はジャズなんだろうけど、ジャズをやってる意識はないと思うんですよ。
──ジャズの愛好家は異物感を感じるだろうし、パンク好きは"これジャズじゃん"と感じるだろうし、どこにも属さないKAGEROの異端な佇まいに僕はパンクを感じますけどね。
白水:そう言われているうちは、こっちの純度がまだ足りないんですよ。そこも僕たちは問答無用にしたいので。
Ruppa:ジャズが好きなヤツは「KAGEROはジャズだ」って言うし、パンクが好きなヤツは「KAGEROはパンクだ」って言う、取り合い状態になるのが理想ですね。
白水:そう、それくらいになるまでもっと純度を突き詰めないと。
──あと、ライヴハウスとクラブの境界線を自由に行き来できるスタンスの身軽さもありますよね。
白水:実際、クラブのイヴェントに呼ばれたり、汚いライヴハウスに呼ばれたりしてますからね。クアトロでライヴをやって面白かったのは、お客さんの歳がバラバラで性別も半々だったことなんですよ。それが凄く嬉しかった。女の子ばかりなのもイヤだし、男ばかりなのはもっとイヤだし(笑)。いろんな人がいて、ノリ方も人それぞれで、その自由な雰囲気が凄く良かったんですよ。
Ruppa:ジャズだと思って聴いてる人もいるし、パンクだと思って聴く人もいるし、そんなことは別に気にせずにKAGEROの音楽だと思って聴いてる人もいますからね。
──カテゴライズされることに対して常に唾棄したいという意識はありますか。
白水:カテゴライズが僕自身よく理解してないんですよ。スクリーモとか、ジャンルの名前もよく判らないし。だから自分では全く意識もしてないんですけど、人がどうカテゴライズしても構わないかなって感じですね。
──揺るぎないパンクのアティテュードが芯にあるからですか。
白水:うん。こっちは何も変わらないし、自分が心底シビれる音楽の形態やうねりを自然にやってるだけですからね。
──ヴォーカル+ギター+ベース+ドラムというオーソドックスな編成よりも、フリー・フォーマットで変幻自在な音楽をやるほうがシビれるんでしょうね。
白水:最初の話に戻りますけど、手本がなかったからかな。耳に馴染んだことができないんですよ。曲作りをしていて、「ここでブレイクを入れて、転調して...」とか事前に言われても、別にそこで転調してもさァ...みたいに思うし(笑)。
Ruppa:そんなふうに凝ったことをやるよりも、いろんなことを思いついてドーン!とやれる感じで行きたいんですよ。それで転調したいんだったら、いくらでも転調しようよって言うか。
白水:理由は判らないけど「転調するしかないじゃん!」だったらいいんですよ。
Ruppa:多分、そういう転調なら2秒前くらいに気づけるんですよね。あたしたちは作り込む能力が足りないのかもしれないけど、決め事がないとついていけないようなことはやりたくないんですよ。
──レコーディングの時も決め事は作らずに?
Ruppa:特にはないですよ。録り終わってプレイバックして、"何かいつもと微妙に全然違うことをやってやがる"って気づくこともちょいちょいあったし(笑)。
──同じ演奏は二度できないでしょうしね。
白水:ムリですね。『SCORPIO』のドラムなんて、絶対に再現不可能だろうし。
「ヘタでいい」は自分で言っちゃいけないセリフ
──『THE PINBALL』とかもそうですけど、鈴木さんのドラムはとにかくパワフルで手数が多くて、尋常じゃない音の図太さがありますよね。
白水:そうなんですよ。『SCORPIO』とかでバカスカ叩いてる貴之を見てると笑っちゃいますもん(笑)。ある意味、爽快ですよ。
──個人的にイメージが重なったのは、さっき話題に上がった吉田達也さんなんですよね。
白水:結成した翌年、"club TEQUILA"っていうイヴェントで吉田さんと対バンする機会があったんですよ。凄かったですね。思わず自分から握手を求めてしまいましたから(笑)。
──鈴木さんはアメリカで半年間ドラム修行をした経験もあるとか。
白水:そうなんです。ドラムの武者修行ですね。
──おふたりは鈴木さんのような修行経験はないんですか。
Ruppa:あたしは留学しようとは思わないけど、サックスのことを何も考えてないわけじゃなくて、人前に出ることで自分を高めていくやり方が性に合うんですね。
白水:メンバー全員、自分の楽器に対してプライドが凄くあるんですよ。「ヘタでいい」とか言うのは、自分で言っちゃいけないセリフなんですよね。人が見て「あいつはヘタだけど凄く味がある」って言うのはアリだけど、楽器に携わってる人間が「ヘタでもいい」なんて言ったらそこで終わりですよ。それ以上絶対に成長しない。
──楽器を置いた時こそが重要と言うか、演奏していない時に吸収したものが演奏に反映されることってありませんか。大げさに言えば、生き方が音に出ると言うか。
白水:それはありますね。リハを集中してやってる時よりも、ちょっと時間が空いてからやるリハのほうが凄いものが生まれることが多いんですよ。プライヴェートで得たものをKAGEROにどうぶつけるかはいつも考えてますし。
──話を伺っていると、あらゆる規制や既成のものから逸脱して、全力で自由な表現に勤しんでいるのを感じますね。
白水:まぁでも、資本主義経済には取り込まれてますけどね(笑)。
──確かに(笑)。あと、あの気迫の籠もった荒れ狂うサックスからはRuppaさんの穏やかな佇まいが全く想像できませんでしたけど(笑)。
Ruppa:ステージを降りると意外に思われることが多いですからね(笑)。
白水:でも、Ruppaさんとは10年くらいの付き合いだけど、ステージ上のほうが自然でしょ?
Ruppa:ああ、そうかもね。
白水:僕もステージのほうが自然だし、普段おちゃらけてるRuppaさんを見ると、気を遣ってるんだなと思うことがたまにあります。
──ステージはありのままの自分を包み隠さず出し切る場であると。
白水:ステージ上なら唾を吐いても怒られないですから。もちろん、お客さんには唾を吐きませんけどね。だって、渋谷の街で唾を吐いたら怒られたりするじゃないですか。
Ruppa:そんなの、どこだって怒られるわ(笑)。
──ライヴで重要視しているのはどんなところですか。
白水:自分たちが"ウワ!"って思わない限りはダメだなと。"ウワ!"って思う演奏をお客さんにぶつけてどうなるかが大事なんで。お客さんに手拍子を求めたりするような感性はないですね(笑)。
──お客さんを楽しませる意識は強いほうですか。
白水:どうだろう。僕自身好きな音楽っていうのが、見てバカ騒ぎできるものよりも思わず凍りついてしまうようなものなんです。時間も自分も止まっちゃうような感じ。いいものに触れると大抵そうなりますね。
──"ウワ!"と息を呑む感じですね。
白水:うん。かと言って、そうなって欲しいわけじゃないですよ。そこは勝手にしてくれればいいんですけど、"ウワ!"と息を呑ませたいとはいつも思ってます。でも、同じ曲をやっても肘をついて見てる人もいるし、踊ってる人もいるし、泣いてる人もいるし、感じ方は人それぞれでいいのかなと。
人間性が滲み出た作品を作りたい
Ruppa:でも、もっと自由に体感できるライヴをやりたい気持ちもあるけどね。
白水:それはKAGEROのことだけに限らず、いろいろと思うところがあるね。
Ruppa:一度盛り上がって盛り上がり一辺倒になるのがイヤだし、判りやすい伝え方で「自由にしていいんだよ」って言えないのがもどかしい。「盛り上がれ!」って煽動してお客さんがそれに応えるのも違うし、悩ましいところではあるんですけどね。ただ自分たちとしては、一番いい演奏をここでするから、それを見て感じたままに遊べばいいよって感じですね。
白水:メンバーに対してもそうだしね。昔はいろいろと注文をしたけど、今はそう吹きたいならそう行きましょうか、みたいな感じだから。
Ruppa:あたしとしては、こう吹いたほうが白水は面白がれるんじゃないかと思ってるから。
白水:僕が面白がれるからそうはやらない、とかね(笑)。
──『MR.BROADKASTER』や『CHELSEA』みたいにサックスのフレーズが際立った楽曲はRuppaさんが引っ張っていく感じなんですか。
Ruppa:そういう曲に関してはむしろ白水主導なんですよ。
白水:あのメロディも僕が書いてますからね。珍しく従順に吹いてくれたんです(笑)。『SPIT FIRE』なんて酷くて、昔のデモを聴いたらメロディが全然違いましたからね(笑)。
Ruppa:そもそも、吹けないフレーズを持ってきますしね(笑)。
白水:確かに、ギターで作った曲は息継ぎができないのもたまにありますけど(笑)。
──ソロ・フレーズをざっくりと刻むギターではなく、アナログ・シンセのような音響っぽいギターならKAGEROのサウンドに合うような気もしたんですけど。
白水:今もピアノはゲストという形を取ってるし、ギターやトロンボーン、ヴァイオリンが入るような曲があってもいいんじゃないかと思ってますよ。『IN YA MELLOW TONE 3』でArtOfficialのラップ・トラックをリミックスしたのも面白かったし。
Ruppa:誰かと絡んだとしても、必ずKAGEROらしいものになりますから。ただ、音は極力シンプルにしたいですね。今は4人いてアイ・コンタクトで会話もできるけど、これであと2人増えたらキツイじゃないですか。その状況で出たとこ勝負のライヴは難しいと思うし。
白水:『SCORPIO』を作ってから特に感じるんですけど、全員が一斉に違う曲を演奏してるような感覚の気持ち良さがKAGEROにはあるんですよね。
──各々が異なるベクトルを向きながらも、最終的にはひとつの大きな音の塊として集約されていくスリリングさがKAGEROにはありますしね。
白水:同じ景色が見えてはいるけど、そこに辿り着くアプローチは各々の人間性が出るんでしょうね。そんな人間性が滲み出た作品を作れたらいいなと思います。
──PE'Zのトリビュート・アルバム『NOT JAZZ!! BUT PE'Z!!!』で『情熱の行方』をカヴァーしていましたが、それこそパンク・クラシックのカヴァー集を作るのも面白いんじゃないですか。
白水:それは面白いですね。ラモーンズをやったっていいし、リチャード・ヘルをやったっていいし。カヴァー自体は凄く好きなんですよ。パンクに限らず、いろんなジャンルのカヴァーをやってみたいですね。以前、『SING, SING, SING』っていうビッグ・バンドの曲を同じ構成でやってみたこともあるし。4人だけだから、もう気持ちで上げていくしかないっていう(笑)。
Ruppa:20人でやるものを4人で落とすと、完コピでも結構違うものになるんですよね(笑)。
──吉祥寺Star Pine's Cafeで毎月開催されていた"club TEQUILA"に20ヶ月にわたってレギュラー出演するようなユニークな試みを今後やるようなことは?
白水:来年もまたStar Pine's Cafeで2マン形式のライヴを隔月ペースでやれたらいいなとは思ってますよ。
Ruppa:目下、刺し違えたい相手を絶賛募集中です(笑)。
──オーディエンスとも刺し違える気持ちで臨んだりとか?
白水:どうでしょうね。お客さんがステージに上がってきて殴りかかって来たら、アンプのツマミをフルテンにしようかな(笑)。
Ruppa:それも迷惑な話だな(笑)。