自分で言うのもナンだけど、いいバンドだなと思う
──剥き出しの自分を曝け出すという点においては、今回の『マリアンヌの呪縛』はかなりいい線を行っているんじゃないですか。
M:そうね。作品のなかで剥き出しの自分を出すことの抵抗もだいぶ払拭されたので。
──それも同じバンドを7年続けてきたからこその余裕と言うか。
M:単純に7年って凄いことよね。自分の人生のなかで一番長く続いているのがキノコホテルなんですから。何をやるにも長続きしなかったワタクシだったのに(笑)。
──全くの別バンドとはさすがに思いませんけど、それでも1年半前のベースの交代劇はキノコホテルに劇的な変化をもたらしたと思うんです。ピンチを好転させて、これだけ素晴らしいアルバムを完成させたわけですから、やはりあのメンバー・チェンジはバンドにとって必要悪な出来事だったんだと今にして思いますね。
M:メンバーが1人変わってこれだけ変わるっていうのは、それでこそバンドだなという気がする。これがたとえばワタクシがフロントマンで3人がバック・バンドみたいな扱いだったら、これだけ大きな変化はなかったと思うの。ワタクシ以外の3人にもそれぞれ揺るぎない個性とスタイルがあるわけで、自分で言うのもナンだけど、いいバンドだなって思います。
──本当にそう思いますよ。キノコホテルは一見すると支配人のワンマン・バンドのように見えますけど、もし本当にワンマンだったらこれだけ長続きしなかったと思うんです。
M:自分のパーソナリティや趣味嗜好を色濃く反映させてはいるけど、こうして4人で活動している以上、バンドとしていいかどうかがすべての基準ですからね。今はバンドが凄くいい状態だからストレスもだいぶ減ったし、以前と比べてあまり悩まなくなった。ようやく3人の従業員のことを信頼できるようになったのかも。今までは従業員にしろ周囲のスタッフにしろ、なかなか容易に信じることができなくて、それで凄く苦しかった時期もあります。でも今は3人の従業員がよくやってくれているし、気も遣えるし、成長してくれたと思うわ。あまり褒めすぎると良くない気もするけど(笑)。
──8年目を迎えるキノコホテルの新規事業計画は何かあるんですか。
M:さっきも言ったけど、最初はこんなに長く続けるつもりじゃなかったから、もう7年経っただなんて驚きよね。何なのよ、これじゃもう完全に中堅どころじゃないの。活動期間に実績がまだ追いついていないので、その辺を何とかしたいわ(笑)。でもまぁ、独特の立ち位置でいられればいいかしらね。その前に、このインタビューが掲載される頃にはツアーも始まっているし、ファイナルのリキッドルームまで無事でいられるかが今から心配だわ(笑)。
──ああ、何事もなくツアーの千秋楽を迎えたことは今までほぼないですからね(笑)。
M:仰る通りで、楽器が壊れる、喉が潰れる、突然意識をなくして倒れる…そんなことだらけよ。イヤだわ、受難の夏がやって来る(笑)。去年の夏は京都の駅構内で突然倒れて、一昨年の夏はフジロックのステージ上で鬼気迫る失神。虚弱体質のせいなのか、どちらも原因不明なの。
──何なんでしょうね。経験を活かせない性分なんでしょうか?
M:うるさいわね! 確かに、経験から学べない人間ではあるけど。今年は何が起こるのかしらねぇ、全く……やーね。もうこうなったらお祓いでもして、夏場に1人で行動する時はフルフェイスのヘルメットを被ってやるわ(笑)。
──まぁ、創業7周年を迎えて8年目に突入するわけだし、七転び八起きってことでいいんじゃないですか?(笑)
M:あら、ちょうど今月創業記念日なの。じゃあこれからは良いことずくめってことじゃない! あんた責任持ちなさいよね(笑)。