メンバーによる曲解説
── では、今回ミニアルバムなので、曲紹介をお願い出来たらと思います。1曲目の『Hello Hello』から。
三井:この曲はポップなものを作ろうと、みんなで楽しく演奏することを意識しました。それと最近、ライブで演奏している自分をイメージして曲を作ることもあるんです。この曲は辛いことも苦しいことも全てハローハローと受け入れてしまおうという思いを込めた曲で、聴いてくれる方には元気になってもらったり、楽しくなってくれたら狙い通りかなと思います。ただ、パッと聴くと明るい曲ですけど、サビの最初のコードがマイナーから始まっていたり、ただ明るいだけじゃなくて僕の性格の暗さが散りばめられてる曲ではあります(笑)。
オショウ:人間性が出てる(笑)。
三井:レコーディングの直前でイントロが変わって今の形になったんです。一番目なので耳をひくというか、なんだこの不協和音はっていう狙いで作りました。
── では、2曲目の『五月雨の頃』。
三井:これは初期の僕に近いかな。何かを訴えかけているわけでもないので、各々が感じ取ってくれる良さはバラバラだと思います。
オショウ:物語を切り取ったような感じがあるよね。
三井:歌詞を見て物語を想像しながら聴いてくれたら嬉しいですね。すごく悲しい歌詞になっています。最初から最後まで明るいと疲れちゃうし、そのへんの天の邪鬼さは前回とそんなに変わらないかもしれません。
オショウ:『五月雨の頃』は、僕たちの世代より上の方が気に入ってくださることが多いんです。シティポップスの要素がある曲なので、上の世代の方の琴線に触れる音楽でもあるのかなと思います。
三井:作った時は手応えというのは特になかったんですが、自分が好きな感じで作ったらまわりも共感してくれたというのは嬉しかったですね。
── では、3曲目『R134』。
三井:僕は茅ヶ崎に住んでいるんですけど、茅ヶ崎から鎌倉に行く国道134号線という道があって、右が海で左に江ノ電が走っていてというシチュエーションで、そこを走ってると自分がかっこよくなっている気になるんです(笑)。そこのナルシストさを全面に押し出した曲です。2番で「ラジオはいつもFM82.8で良い」という歌詞がありますけど、これはFM鎌倉でずっとジャズが流れているチャンネルなんです。前作に収録している『rust』と通じるところがありますね。
izumi:主人公が同じ感じがする。シチュエーションも近いよね。
── ちなみに、三井さんが一番かっこいいのは車を運転してる時ということですか?
三井:そうですね(笑)。由比ヶ浜あたりの僕です。
── なるほど。では、4曲目『a sleepin' snowtown』。
三井:僕たちはもともと“ジャズポップス”って名乗っていたんですけど、その要素を活かしていますね。ジャズの曲をアルバムに1曲は欲しいと思って狙って作った曲ですけど、結局ポップスになっちゃった。ジャズ要素はそんなにないかな(苦笑)。
オショウ:そんなことないよ。ポップスのジャンルの中のジャズ風味という枠には入っていると思う。
三井:たしかに、“風味”ぐらいがちょうど良いかもしれないね(笑)。
オショウ:この曲ではストリングスも入れていて。
izumi:初めて外部の方にお願いしてストリングスを入れてもらったんです。
オショウ:1曲目の『Hello Hello』にもストリングスが入っているんですけど、弦が入ることによって広さや厚みが出て。よりジャズからポップス寄りになっているかなと思います。
── 5曲目の『トロンプルイユ』。これはゲーム音楽っぽい雰囲気がありましたね。
オショウ:izumiの担当曲です。
izumi:作曲は三井くんがやってますけど、今までのpertorikaでは考えられないぐらい、シンセサイザーのトラックが10トラック以上入っていて、一番実験的な曲なので、最初はまわりの反応が怖かったんです。でも、選曲のために聴いて頂いた関係者の方々には、こういうのが1曲あったほうが良いねと言って頂いて。三井くんに打ち込みを入れてもらい、声も加工したら、初挑戦のジャンルではあったけれどしっくり来ている感じがありました。
三井:この曲はメンバーから、ゲームの曲を作ってというリクエストがあったんです。
izumi:でも、三井くんがゲームを全くやらないからイメージを全然伝えられなくて(苦笑)。
三井:RPGの雰囲気でって言われたんですけど、僕の中のRPGはFF(ファイナルファンタジー)だったんです。それで、ちょっと西洋風なケルティックな曲を作ったら、ドラクエのほうだよって言われて。何が違うかわからないですけど、ケルティック寄りを排除して電子の方に行ったら、いいんじゃない? って言われて。
izumi:イントロは私が付けたんですけど、やりすぎじゃないかなと思った部分があったんです。でも、ドラクエが思い浮かぶような感じで思い切ってやってみました。
── 6曲目の『変わらないもの』はさっきお話を聞きましたので、最後の『drawing』。
三井:これはザ・pertorikaを全面に出した曲です。8分の6拍子の、初期から僕らを見てる人たちはpertorikaっぽいねって言ってくださるような。そこにマンドリンや鉄琴、オルガンを入れて、ガチャガチャ感というかワチャワチャ感のある賑やかな感じと、ケルティックなフレーズを入れているので、その両方を味わってもらえたら嬉しいですね。
izumi:曲自体は昔からあったんですけど、最初は収録する候補になかったんです。選曲で悩んでいた最後の最後に、これどう? って急に三井くんが。
三井:原点に戻ろうって入れた曲です。みんなどうだった? 入れてよかった?
オショウ:良かったと思うよ。曲順はけっこう時間をかけて考えているんです。
三井:ミックスが上がってから曲順を決めようと思っていて。プロのエンジニアさんが仕上げてくださった音を聴いて、どの曲を最後に持っていこうかって。『Hello Hello』は1番で決まっていたんですけど、最後の曲はミックスを待とうって。
オショウ:最後までどういう曲順にするかが決まらなくて、『drawing』を入れようってなった後も、今度は『a sleepin' snowtown』と『drawing』のどちらで締め括るのかをすごく悩んで、最終的に『drawing』で形としてはすごくきれいに並んだと思います。
次に繋がるツアーにしたい
── この作品をもって4月19日からツアーが始まりますね。
オショウ:1枚目でツアーが全く出来なかったので、今回はいろんな所へ全国へ行きたいと思ったんです。
── 初めての土地も?
オショウ:そうですね。北海道は昨年行きましたけど。
izumi:北海道は昨年の夏に“JOIN ALIVE”の一般公募の枠で行ったんです。私の地元が旭川市なので馴染みのある土地です。名古屋は一昨年行きましたね。
オショウ:個人イベンターの方が呼んでくださいまして。ツアーとかではなく単発で呼ばれて初めての名古屋でライブをやらせてもらいました。
── その土地土地で待ってくれてる方がたくさんいらっしゃるんですね。
オショウ:ありがたいことに、ライブに来て欲しいという声は頂いてます。特に名古屋は多いですね。それと、さっき決まったんですが、6月28日に仙台に行くことになりました。カフェっぽいところでのアコースティックイベントに出ることになって。仙台は僕の地元で、高校の同級生がイベントをやっていて、そこに組んでもらえないかと相談していたんです。地元の友達にもライブを見てもらえそうです。
── では、今回ツアーをまわるにあたり、どんなツアーにしたいですか?
オショウ:次回に繋げるというのが大前提です。今回のアルバムは聴いてくれる人の間口を広げるというコンセプトを持っているので、対バンを見に来た方にも聴いて欲しいし、広めて欲しいし、こういうバンドがいますよと『enterium』と一緒に全国をまわって知らせたいなと思います。
── 今年バンドはこうなっていたい等はありますか?
三井:音楽だけでご飯を食べたいですね。それが一番の目標かな。
なお:このアルバムが広がってご飯を食べていけるように。デカすぎる目標かもしれないけど、それぐらい広まって欲しいです。
オショウ:これまではアコースティックのバンドとか、オーガニック系とかそういうイメージが付いていたと思うんです。それを今回のアルバムを通して払拭していきたいですね。
izumi:ロックとかもやっていきたいです。前作の『rust』という曲がpertorikaにしてはロックなサウンドで、そこから入ってくれる人がいたことで、アコースティックとかオーガニック以外にもpertorikaに可能性があるのかなと今作に繋がったところもあるんです。イメージを固定されたくないという思いもあって、前作だけでなく今作を聴いて、pertorikaの音楽の幅が広がっていると感じてもらいたいですね。これからもっといろんなジャンルの音楽に挑戦していきたいと思ってます。