シミと一緒にやるのはごく自然なことで、理屈じゃない
──リズムボックスに落ち着くまでにも試行錯誤があったんですか。
影山:最初はシミがルーパー(ループのエフェクター)を使おうって言って、タンバリンをひとつずつ鳴らして音を重ねるってアイディアがあったんです。でも、いざやると凄く難しくて、イントロの部分を作るだけで終わっちゃったんですよ(笑)。それに集中しすぎたせいで、曲が始まったらあまりにグダグダになっちゃって。
清水:そうやって作っていって、唄いながらフロアタムをドン!と叩くのも面白いなと思ったんだけど、要するに力量が伴わなかったんだね(笑)。そういう試行錯誤は今もしていて、今日のリハも俺がギターで弾く曲はやっぱりダメだってことになったしね(笑)。
影山:あれだけ練習したのに、結局ベースに戻すっていう(笑)。
清水:3曲くらいはギターで弾くつもりだけどね。この間も坂さんとの「SHIMIZUME?」でアコギを弾いたし、もっとギターを弾けるようになりたいからやってるんだけど、なかなか難しい。ベースは電気をつながないと音が鳴らないけど、アコギならそのままジャーン!と鳴らせるじゃない? この先、役に立つことがあるかもしれないから精進したいんだよ。
──曲作りでもギターを使っているんですか。
清水:最初はベースだったね。ベースで弾き語りするのを決めてたし。
──影さんから見て、シミさんのギター・プレイはどうですか。
清水:はっきり言ってくれ(笑)。
影山:問題ありますね(笑)。ギターで作った曲はいいんですけど、ベースで作った曲をギターでやると、やっぱりベースの名残があるって言うか。自分がつけてるギターも前のアレンジと変わらずにやってるから、ギターが2本になると同じような音でカチャカチャやってるだけみたいになるんですよ。そこで上にのせるギターを変えようとしても、シミ自身のプレイがまだ定まってないから2人のストロークの切りも合わないんです。
清水:何にも絡み合ってないギターが2本鳴ってる、凄くヘンな感じなんだよ。それで今日は危機感を抱いたね(笑)。
影山:でも、とにかく練習するしかないと思って今日はスタジオを3時間取ったのに、実質20分くらいしかやってなかったけどね(笑)。
──メンスやアルフォンヌを始め数々のバンドを渡り歩いてきた影さんにとって、このGARAKUTA KOJOはどんな位置づけなんですか。
影山:シミとは9歳の頃に知り合って、中学も同じ千歳中で、もう40年近い付き合いなんですよ。だからシミと一緒に何かやるのはごくごく自然なことって言うか、理屈じゃないんです。
清水:小学3年生の時からだもんね。影さんは転校してきたんだっけ?
影山:そうそう、2年生の時に。前の小学校にはゼラチンの最初のギターだった勇一郎君がいたんだよね。
清水:ああ、緑小ね。緑小から信濃小に転校したと。
──もの凄いローカルな話になってますけど(笑)。
清水:その勇一郎っていうのは、KUSU KUSUの次郎の兄貴なんだよ。
──ああ、次郎さんも千歳出身なんですか。
清水:そうだよ。俺たちがバンドをやってたからあいつもバンドを始めたようなもんでさ。
影山:ここには載せられない話がいっぱいあるよね(笑)。
──シミさんがパンクで、影さんがメタルで、嗜好の違う者同士がこうして長年にわたって一緒に音楽をやり続けているのも面白いですよね。増子さんと友康さんの関係性に似ているのかもしれませんけど。
影山:当時はメタルが流行ってたし、バンドをやる=メタルをやるしか選択肢がなかったんですよ。高校もシミと同じだったら、ひょっとしたらパンクに染まっていたのかもしれないけど。
清水:高校は俺のほうがいい学校(千歳高)だったんだよ(笑)。
──そこ強調しますか(笑)。先にゼラチンに加入したのはシミさんなんですよね?
清水:うん。俺の前にクマさんっていう初代ベーシストがいてね。影さんは勇一郎の後に入ったんだっけ?
影山:そうそう。シミはかなり早い段階で札幌で活躍しだしたんですよ。千歳の人間が札幌でライブをやるって、けっこうでかいことなんです。ゼラチンが初めてベッシーの全道選抜パンクナイトに出た時に俺は客として見に行って、最前列で暴れてましたからね(笑)。
清水:影さんは優しいもんだから、友達を何人か連れて見に来てくれてね。前のほうに来て一生懸命ピョンピョン飛び跳ねてくれてさ(笑)。
影山:メタルにはそんな習慣がなかったので見よう見まねで飛び跳ねてたら、帰りにヘロヘロになっちゃって(笑)。
幼なじみとずっと一緒に遊んでいたいという感覚
──高校は別でも、ずっと交流は続いていたわけですね。
清水:ゼラチンのメンバーと遊んでて、夜になって行くところがなくなると影さんの実家によく遊びに行ってたんだよね。2階の窓に石を投げて、「お、まだ起きてる起きてる!」なんて言ってさ。
影山:ゼラチンが千歳と札幌の距離を縮めてくれたんだよね。ゼラチンを通じて、スピットファイヤー(シークレット・サマーのナオキ、ブッチャーズの吉村秀樹、ReguReguの小磯卓也らが在籍していたハードコア・バンド)とか札幌の凄いパンク・バンドとも知り合ったりして。
清水:スピットファイヤーは衝撃的だったね。一番最初に小磯君を見た時、確かスカートをはいてたと思うんだよなぁ(笑)。
影山:俺が見た時はベルボトムだったね。ちょっと話がズレますけど、スピットファイヤーのインパクトはホントに凄かった。よーちゃんはチューリップ・ハットをかぶってセミアコを弾いてるし、小磯さんは凄く髪が長くて上半身裸で、弾丸ベルトにベルボトム。
清水:そうそう。早川義夫みたいな人がスタインバーガーのベースを弾いて暴れてるんだからね(笑)。
影山:ドラム君は軍手をはいて叩いてるしさ(笑)。そういう世界を知るようになったのはでかかった。俺はその後にゼラチンに入ることになって、札幌で小磯さんや増子さんを始めパンクスの人たちと仲良くさせてもらったんですよ。後になって俺は小磯さんのアルフォンヌに、シミは増子さんの怒髪天にそれぞれ拾われることになるんですけど。
──そんな縁もあって、ゼラチンは小磯さんが主宰していたスレイブ・レーベルからカセットをリリースしましたよね。
清水:うん。音源を出したいと小磯君に言ったら、快く引き受けてくれてね。
──その辺の話をすると到底スペースが足りないので、またの機会にしましょうか(笑)。昨年に引き続き今年もネイキッドロフトに新春早々出演して頂くわけですが、GARAKUTA KOJOは盆と正月限定のユニットなんですか。
清水:ホントはもっとやってみたいんだけど、なんせオファーがないからね(笑)。まぁ、有り難いことに本体の怒髪天が忙しいから、スケジュールを組むのもなかなか大変なんだけど。
──去年、ネイキッドロフトでCD-R音源を無料で配布していましたけど、ちゃんとしたCDにして販売する発想はないんですか。
清水:売るならもっとちゃんと作らなくちゃいけないし、今の俺が作る曲や歌のクオリティが売り物になるとは思えないんだよね。だから売るのはちょっと抵抗がある。
──でも、あの簡易的なリズムボックスに合わせた歌と演奏だからこその味があると思うし、ある種あれが完成形のような気もしますけどね。
清水:そうなのかもしれないけど、GARAKUTA KOJOでは幼なじみとずっと一緒に遊んでいたいって言うかさ。それが大きなコンセプトのひとつだから、お金にしちゃうと遊びじゃなくなる気がして。だからネイキッドロフトのイベントは、あくまでトークでお金を頂いてるつもりなんだよね(笑)。あのチャージはトークの料金で、演奏はおまけだから(笑)。
影山:あの配布音源、シミの歌はマイクを使ってないんですよ。パソコンに向かって唄ったって聞いて、俺もびっくりしたんです。最近のパソコンはそんなに性能がいいんだなと思って。だからよく聞くと、椅子のギーって音が入ってるんですよ。お金を頂く音源は、パソコンに向かって椅子に座って唄ってないよね(笑)。
──いつかちゃんとした形で音源化する予定はあるんですか。
清水:うーん。どう?
影山:今のところは特に考えてないよね。
清水:手作り感を大事にしたいし、そもそも遊びで作ってるものだからね。現段階では「欲しかったら持ってって」みたいな感じかな。
──新曲は今もコンスタントにできているんですか。
清水:イベントをやるたびに新曲を必ずやりたいんだよね。今度のネイキッドロフトでは「SHIMIZUME?」でやった曲と、俺が1人で宅録した曲をやろうと思ってる。