8月から毎月都内ライブハウスで繰り広げられえているプレイベント、斬新特異なホームページ、動画共有サイトにあがる公式番組等、ちまたでにわかに話題になり始めているライブイベント「平成デモクラシー」。12月には新宿ロフトでの年末公演を控え、平成世代の台風の目となりつつある中、このイベントは一体なんなのか。そして、このイベントを通して何を伝えたいのか。平成デモクラシー主催の神崎さん、運営のみよしさんと新宿ロフトのブッカ--である樋口さんを招いて話を伺った。(インタビュー:やまだともこ/文:平成デモクラシー運営 かじゅ/構成:新宿ロフト 樋口寛子)
純粋に同世代のアーティストに会ってみたいと思ったのがきっかけです。(神崎)
――“2013inLOFT”と銘打って開催される「平成デモクラシー」というイベントについて伺いたいのですが、イベント自体は以前から開催していたのですか?
神崎:「平成デモクラシー」は去年から始まったイベントで、最初は高田馬場にある四谷天窓というキャパが40人くらいのライブハウスからでした。出演者も全部シンガーソングライターのみで静かに始まりました。
――出演者はシンガーソングライターのみだったんですね。
神崎:そうなんです。折角「平成デモクラシー」という名前のイベントで、平成にこだわってイベントをやっているのだから、シンガーソングライターだけではなくてバンドがいてもいいじゃないかとなり、そこから輪が広がっていきました。
――そして遂に新宿ロフトで開催に至りますね。
神崎:本当にありがたいことです。四谷天窓で1回目をやって、2回目は同じビルの5階にあるライブハウスと四谷天窓の2会場でやらせてもらいました。それから5日連続企画なんかもやって、今年の4月には渋谷ミルキーウェイとチェルシーホテルとジージの3会場を使用してサーキット形式で開催しました。
――定期的に開催しているんですか?
神崎:特に決めてはいないです。やれるタイミングで良いアイデアが出た時に開催しています。良くも悪くもみんなで自主的に作っているので、良いアイデアが出た時にやらせてもらえる場所と熱量が合致した時に開催しています。
――神崎さんは「平成デモクラシー」の主催者であり、このイベントに出演するアーティストの1人でありますが、どうしてこのイベントをやろうと思ったんですか?
神崎:僕は今23歳ですが、対バンで一緒にライブする人達は年齢的に先輩とやったりすることが多いので、純粋に同世代のアーティストに会ってみたいと思ったのがきっかけです。僕みたいにライブハウスの規模感で活動している同世代の人達はどういう人がいるのだろうと知りたくなって。その時にパッと思いついたタイトルが「平成デモクラシー」でした。イベントのネーミングについては正直思い付きです(笑) 。
――1人で始めた訳ではなく、最初は数人の仲間と天窓のブッカーさんに協力して頂いたんですね。思い付きのわりにはすごくしっくりくるネーミングだと思います。
舳:4月に開催した「平成デモクラシー」の渋谷サーキットの時は、実質神崎1人でやっていました。彼1人でほぼ3会場のブッキングをし、計32組のアーティストが出演しました。全出演アーティストや関係各所への連絡は全部神崎がしていて、しかも自分も出演者だからそっちのこともしなくちゃいけないし(笑)。私は4月のサーキットイベントの1か月前位にお手伝い依頼がきたので、そこで手伝ったのがきっかけで運営に関わる事になりました。
樋口:運営に関わっている人たちは、下はいくつで上はいくつ位の人達で運営しているの?
舳:下は19歳で上は23歳です。メインは6人でやっています。「平成デモクラシー」は運営も全員平成生まれなんです。
新しいシーン、流れや勢いをこのイベントから作っていけたらいいなと思います。(舳)
――「平成デモクラシー」というイベントは運営も出演者も平成生まれというのが最大の特徴だと思いますが、皆さんが平成にこだわる理由を教えてください。
舳:まずは私たちが平成生まれだから。そして平成生まれがようやく新宿ロフトをはじめ、ライブハウスに足を運べる年代になっていると思うのです。そういう意味でも平成はこれからの世代だと思うので、新しいシーン、流れや勢いをこのイベントから作っていけたらいいなと思います。
神崎:音楽シーンはわりとその時代や世代ごとに切り取ったものだと思うので、僕たちの時代である平成にフォーカスを当ててみようとなりました。平成を生きている僕たちだからこそ、こういうイベントを主催するにしても嘘はないだろうし。
樋口:「平成デモクラシー」を、年末に新宿ロフトでイベントをやるとなった時、平成生まれのみんなとこんなに向き合ってイベントに関わるなんて、10年前は想像もしていなかったです(笑)。だからこそ、凄く楽しみながらサポートしています。また最近は、遠方からロフトに出演してくれるバンドが増えたのですが、今回の「平成デモクラシー」も遠方から駆けつけてくれるバンドが多いよね?
舳:多いですね。今回は北海道、岩手、名古屋、大阪、仙台…地域をばらけさせたいなというのがありました。地方になると余計に同世代が集結することもないでしょうし、全国各地にも同世代の良いアーティストってたくさんいるから、そんな人達を集めて一カ所でやることで規模感を出したいという狙いもありますね。
――遠方のバンドとどのように知り合うんですか?
神崎:基本的にライブを見に行って、気に入った人達に声を掛ける事からです。あとは地方に住んでいる同世代の仲の良い人たちから紹介してもらったり、足を使ってコツコツ繋がっていきました
――都内に来た時だけじゃなくて、実際に地方まで足を運んで声をかけたんですね。
神崎:そうですね。大阪、名古屋に行きました。あとは、自分が地方に行った時に対バンだった方にも声をかけてます。
――それはライブが終わった後に、お酒を飲んだりして意気投合するんですか?
神崎:僕はライブ前が多いですね。ほんとに好きになっちゃうと、お酒飲む前には好きというのが伝わっちゃうタイプみたいで(笑)。お酒を飲むと勿論仲良くなるのですが音楽的なリスペクト等の話は飲む前にしちゃうかもしれない。
――酔う前に結構濃い話をしちゃうんですね。
神崎:そうなんです。いきなり話し出すから結構びっくりされちゃうことも多いし、うざがられちゃうこともあるんですけど(笑)。
――でもそうやってつながった人達ですもんね?
神崎:そうですね。あとは運営の皆ががそれぞれの形で出会った人たちにかけたりして集結させました。
もっと平成生まれのお客さんにも来てもらいたいよねという気持ちが生まれました。(神崎)
――最初はシンガーソングライターだけのイベントだったのが今回はバンドの割合が増えているなという印象を受けました。
舳:これは私の個人的な意見ですが、バンドとシンガーソングライターのシーンが分かれてしまう傾向にあって、「バンド界隈」と「シンガーソングライター界隈」という言葉自体も目にすることが多くて。それをジャンルやシーンじゃなくて、平成生まれという切り口で切っているイベントなのでどっちかに偏るのではなく「同じ世代の音楽」で一緒に新しい時代を作ろうぜということだけでまとまっていけたら面白いなというのがありますね。
神崎:僕が元々バンド出身だったこともあって、シンガーソングライターとバンドを出演させたいというのはずっと言ってきたことでした。今までの「平成デモクラシー」はシンガーソングライターが中心だったこともあって、わりとお客さんの年齢層が高かったりしたんです。前回サーキットイベントを開催した時に、出演者としてバンドも多く入ってきたし、折角平成生まれの括りで出演者も決め、運営も平成生まれでやっているのだから、もっと平成生まれのお客さんにも来てもらいたいよねという気持ちが生まれました。だから今回はそっち側にも歩み寄ろうかなとなって。バンドにフォーカスを当て新宿ロフトで開催することによって、若い人達に沢山来てほしいなと。また、若い人達の中でもっと「平成デモクラシー」というイベントの存在感を出していきたいというのも「平成デモクラシー」のテーマの中にあります。だから今回はかなり挑戦という感じはありますね。今回運営に新しく人が加わり、「平成デモクラシー」ももう一段回ステップを上がった気がします。
常に新しいもの、面白いものを沢山やっている活発なライブハウス(舳)
樋口:ロフト以外にもライブハウスは沢山あるのに、やりたい場所の一つにロフトを選んだ理由を2人に聞いてみたいです。
舳:新宿ロフトは凄く歴史があって老舗のライブハウスだけど常に新しいもの、面白いものを沢山やっている活発なライブハウスだと感じます。もう一つ言うとロフトは登竜門的な舞台であり、今有名なあの人が昔踏んでいった舞台。平成の世代がこれから本気で音楽をやってくぜ。、頑張っていくぜとなった時に一番踏みたい舞台。そして超えていかなきゃいけない舞台が新宿ロフトだと。そういうこともあって、今回「平成デモクラシー」としても今までより少し大きな規模でやっていきたいよねというタイミングでもあり、一つの関門を越えていきたいよねという熱量が運営側で一致したって感じですね。
神崎:規模感の問題だけじゃなくて、ライブシーンの中での新宿ロフトの立ち位置はものすごく大きなものだと思うんです。やっぱりロフトってほかのライブハウスとなんか違うというか。だから、ロフトで開催してかっこいいイベントだなと思われたいという気持ちも純粋にあるんですよ。舳が話を持ってきてくれた時に、「よっしゃ!」って思いましたね。ここで勝負したいなって。あとアーティストの僕としては単純にやっぱり出たいです(笑)。
樋口:なるほどね。企画やライブをやりたいと言ってくれる人が皆さん位の世代が増えたよね。それと、私個人的には世代関係なく抵抗なく輪の中に入っていくタイプなんだけど、今の子たちもそんなに壁を感じることなく飛び込んできてくれるフットワークの軽さがある印象があります。
舳:これから頑張っていくっていう平成世代のバンドは、年上の方の話を凄く聞きたいというか。上に上にと思うと、経験ある方や憧れている方と話したいと思うのは凄く自然なことだと思うので、年上のバンドと繋がろうとする人達が多いと思うんです。だからある意味、「平成デモクラシー」みたいに同世代のバンドだけでこういう風にやることもまた違う刺激になっていると思うんですよね。
樋口:ロフトは老舗だけど、「常に新しいもの、面白いものをたくさんやっている活発なライブハウス」だと皆に映ってることはとても嬉しいです。また、私がここで働き始めた頃、中学生だったような若い子たちが「ロフトで企画をやりたい!」と言ってきてくれて、新しい世代が入ってきたなと感じます。だからこれを機に若い世代がロフトによりついてくれるきっかけとなってくれたらロフトにとって財産になると思います。