テーマがしょうもないと深く取られがちやな(笑)
── 話がちょっとそれちゃうんですけど、前作の『サブカル女子』はサブカル女子を皮肉っぽく歌ってる感じもありましたが、おもしろい視点でしたよね。
ヤマサキ:あれは2chの「サブカル女子にありがちなこと」というのを読んだりして、“ブスではないけどかわいくない”というフレーズが浮かんで来たんです。
ヨコタ:『サブカル女子』は反応が大きかったですよ。
ヤマサキ:「キュウソのファンはサブカル女子が多いんだから、この曲やったらファン減るんちゃう?」って周りの人に言われていたけど、いざライブでやったらサブカル女子がどんどん湧いて来たんですよ。
ヨコタ:お客さんが「これ私のことですぅ」って(笑)。
ヤマサキ:今ではサブカル女子が“お笑いといえばラーメンズ!”ってライブで手上げて歌ってますからね(笑)。でも、よくディスだけじゃないって言ってもらうんですけど、何かあるんですよ。
ヨコタ:ディスリきらないんですよ。
ヤマサキ:突き放してはいない。
カワクボ:あの曲に関して言えば、サブカル女子の存在肯定になってるから。
ヨコタ:でも僕らが言うサブカル女子は、ライトユーザーが好きそうな感じのもので、もっと濃いところにいるサブカルの人たちは、すごいムカついてると思う。実際とあるバンドのファンの人はすごい怒ってたって聞いてます。そのバンドのほうが、サブカル女子の気持ちを理解してくれているし、深く掘り下げてるって言うけど、そりゃそうですよ。うちらは障りしか言ってないですから。
ヤマサキ:でもそうやって騒がれたらこっちの勝ちなんです。怒ってるにしても、Twitterでつぶやいたら名前が出るし、YouTubeを見たら再生回数が1回増えますから。
ヨコタ:僕らインディーズバンドなんで、話題にしてもらうことが大事なんです。
── その中で、今作収録の『空芯菜』(M-3)とか「空芯菜っておいしいよね」という何気ない日常会話で始まる歌詞ですが、曲の終わりにかけて世界平和を歌うという。でも、最終的に「空芯菜がおいしかったんだな」という感想が残るという曲で、よく書きましたよね(笑)。
ヤマサキ:曲のタイトルはなんのひねりもないからな。これは書くことがなさすぎて(笑)。怒りもないし。
ヨコタ:言いたいことがないからこそ出来たのかもしれないですね(笑)。『空芯菜』は「空芯菜がおいしかった」ということが言いたくて、後付で理由を付けて作ったんです。前作をリリースしてほぼ曲がなかった状態だったので、フレーズだけ作ってきて、「くうしんさーい!」って言ったらおもしろいんじゃない? っていうノリで。
── 前作リリース後、最初に出来た曲が『空芯菜』なんですか!?
ヨコタ:そうですね。フルアルバム作って、次に作った曲が『空芯菜』だったらおもしろいなってなっただけで。でもそこから全然曲が出来なくて。それで『FABYOOOOO!!!!!』(M-6)とかが出来ていく中で、やっぱ『空芯菜』やりたいなって世界平和の歌詞をムリヤリ作って来たんです(笑)。
── その時点でメロディーは出来ていたんですか?
ヨコタ:メロディーはあとで作りました。
── それでイイ感じになって。
ヨコタ:まさしく“イイ感じ”になったんです(笑)。でも、空芯菜ってホントはすごいんじゃないかって思わせますよね。世界平和になるんじゃないかって。
ソゴウ:それにここまでポジティブな曲って僕らの曲になかったから。
── 誰もディスってないし、誰も傷つけてないし。
ソゴウ:好きっていう気持ちを言ってるだけ。そういうの今までなかったな。
── 『ゲーマーズハイ』(M-8)もゲームしたいというつぶやきから、人生頑張っていこうという壮大なテーマに発展しますが、後半の歌詞はかなり良いこと言ってますよね。
ヨコタ:そう言って頂くと嬉しいですが、もともとは3人(ヤマサキ、カワクボ、ソゴウ)が本当にゲームが好きというところから始まってるんです。今回のアルバムを作ろうってなって、曲を作るのがセイヤなのでゲームしたくてもなかなか時間が取れないから、たぶん早くアルバムを作ってゲームしたかったんですよ(笑)。だから、ほとんどゲームがしたいしか言ってないんですけど、テーマがしょうもないと深く取られがちやな(笑)。
── 深読みしちゃいました…。
ヤマサキ:そうやって深読みしたくなったら嬉しいよな。
ヨコタ:ボブ・ディランみたいに、シンプルな歌詞を深読みしたいなってくれたらいいよな。
ソゴウ:ボブ・ディランまで行くか(笑)!?
── 若い人たちにイジメに対する問題提起をしているようにも取れましたし。
ヤマサキ:そこまで深くは考えてませんね(苦笑)。
ソゴウ:俺の母さんもイジメのことについて歌った良い曲やわって言ってた(笑)。
ヤマサキ:そういうことは考えてなかった。
オカザワ:でも、いろんな捉え方が出来るのはすごい良いと思う。
カワクボ:言葉の選び方が独特だから、そういうのがあるんちゃうか。
ヨコタ:そう思ってくれる人が多いんだね。『たまにいるタラシくん』(M-5)は、実際そういう人がいて、めちゃめちゃ気持ちが入ってますけど。
── どの世界にも、お派手な方はいらっしゃいますよね。この曲では、打ち上げで飲んでたはずなのに、“いつの間にか闇へ二人で”という歌詞もありましたが…。
ヨコタ:お派手に見えないヤツがお派手なんですよ。僕らはそういうのをやらないでおこうってことは話していて、やったら人間否定すると思うんですけど、だから打ち上げとかでそういうヤツを見て、カルチャーショックを受けたんです。
ヤマサキ:でもやっぱり僕らも男なので、どこかで羨ましいと思っている部分もあって、最初は“タラシタラシうらやましい”っていう歌詞だったんです(笑)。その部分は消しましたけど。
ヨコタ:でも、こういう歌詞書いてるし、それで僕らもお派手だったら説得力なくなっちゃから、バレなければ良いんじゃなくて、本当にしない。だけど、うまいことやってるヤツはうらやましいと思う(笑)!
── うらやましい感じと軽蔑してる感じが歌詞に絶妙に込められてますよね。
ソゴウ:あと、小バカにしてる感じもあって。