昨年3月に1stフルアルバム『10代で出したかった』、そして12月に2ndフルアルバム『大事なお知らせ』をリリースし、今ライブハウス界隈で話題となっているバンド「キュウソネコカミ」が1stミニアルバム『ウィーアーインディーズバンド!!』を10月16日にリリースした。これまでと変わらず、歌詞は基本的に自分たちの身近で起きたことを題材にしたディス(悪口)と愚痴と妬み多め。バンドマンの心の叫びを剥き出しにした1曲目『ウィーアーインディーズバンド!!』や、2曲目『良いDJ』では「あのクソDJしばきたい」というインパクトのある言葉を放ち、"油で炒めただけなのに、くせになって中華屋に行くと頼んじゃうよね"という何でもない歌詞で始まったと思いきや、いつのまにか"世の中を変えよう"という壮大なテーマに発展する3曲目『空芯菜』。さらに、某人気スマホのメロディーを用いた4曲目『ファントムバイブレーション』や、「ゲームがしたい」という欲望のままに書かれた8曲目の『ゲーマーズハイ』まで、一度聴いたら忘れられない曲が収められていた。
そのキュウソネコカミが、10月18日の新宿ロフトを皮切りに"キュウソネコカミ レコ発『がんばれ光彦!!』TOUR"がスタートする。全国で彼らのディスりと愚痴を勢いよくまき散らしながらも、インディーズバンドの底力を見せつけてくるのだろう。刮目して欲しい。(interview:やまだともこ)
歌詞は腹の立つことがあったらすぐに書いてます
── ミニアルバム『ウィーアーインディーズバンド!!』がリリースされますけど、前作2枚がフルアルバムで、今回は「フルアルバムはもう無理!」ということでミニアルバムになったそうですが。
ヤマサキ セイヤ(Vo/Gt):それもありますけど、フルアルバムってミニアルバムに比べると値段が高くなるから、お客さんがなかなか買ってくれないというのが実際のところで。
ヨコタ シンノスケ(Key/Vo):同日に発売するバンドが多いと、一度で何枚も買えないから選ぶじゃないですか。その時に、僕らのCDは後回しにされることがあるみたいなんですよ。だから今回は手に取ってもらいやすいように、ミニアルバムにしたかったんです。
オカザワ カズマ(Gt):でも実際フルアルバムのレコーディングはしんどかったですよ。作りながらスタジオ入ってを繰り返してたから。
ヨコタ:今回はミニアルバムと決まっていたから、これまでの反省を活かして早い段階で7曲、8曲は作っておいたんです。そしたら、前はレコーディングにすごく時間がかかったんですけど、今回は思ったよりもスムーズに出来て、それで調子こいて新しく曲を作って、最終的に8曲収録してます。あと、僕らの場合、ライブで演奏して曲が変わっていくんです。お客さんの反応を見てアレンジを変えながら、これは行けるという自信を付けて曲を録ると早いですよね。ライブで1回もやったことない曲も入ってますけど、半分ぐらいはライブで何回も演奏してます。
ヤマサキ:改めて聴くと、みんなで歌うところが多くて、やりすぎかなというのはありますけど。
── それはライブでお客さんと一緒に歌って手応えを感じる曲が多かったからですか?
オカザワ:お客さんが参加出来る曲のほうがやってて楽しいですし。
カワクボ タクロウ(Ba):ライブありきで作ってるのは変わらないので。
ヨコタ:前はリリースしてライブで演奏していくうちにお客さんと一緒に歌うようになってたりしましたけど、今回のCDでは最初からここでこう歌ってほしいというアピールが激しいんです。ライブでやってる曲が多かったからそうなったというのはありますね。
── お客さんを意識した曲でありながら、歌詞は相変わらず何かに対するディスリが多めでしたけど(苦笑)。
ヤマサキ:でも、ディスリまくりの中にも1回聴いたら、なんじゃこの言葉は! というものがあると思うんです。“スマホはもはや俺の臓器”(『ファントムバイブレーション』)とか“円盤選んでかけてOh yeah”(『良いDJ』)とか、脳に残る言葉を選ぶようにしています。
── 歌詞はどんな時に書けるんですか?
ヤマサキ:歌詞は腹の立つことがあったらすぐに書いてます。
── 腹が立ったことが、歌詞を書く一番の原動力?
ヤマサキ:そうですね。
ヨコタ:前にセイヤ1人でとある取材を受けたことがあったんですけど、その時に「俺は良いこと言ってやったぞ!」とかなり良い手応えを感じたらしいんです。でもあとあと原稿を読んだら当たり障りのないところばかりが使われていて、読んだ人から「セイヤさん丸くなったな」って言われて。
ヤマサキ:「はぁ?」ってなって、それで出来事に対して直接は言ってないんですけど、『テレキャスばっか』を書いたんです。
ヨコタ:何かあった直後は腹が立ってるけど、結果的にそれで曲が作れるから。上からダメだと言われたりすると、それに対してカウンターしやすいので、そういうのがあったらすぐ歌詞にして持ってくるんです。
ヤマサキ:前2作アルバムを出してお客さんの反応を見てたら、自分がイヤだと思うボワーッとしたものに共感してくれる人が多いということに気付いて、それを歌詞にしていったら良いんかなって。
カワクボ:本質を突く力は強いですよね。
── みんなが口にしなかったことを言ってみたり、カウンターパンチを食らわしたり。
ヤマサキ:でも、僕ら本気でパンチしたいわけじゃなくて、基本はヘラヘラしていたいんです。
ヨコタ:僕たちから噛み付いて行こうという感じではなくて、どっちかと言うとやられたらやり返すというスタンスで。
── ということは、『良いDJ』(M-2)も何かやられたんですか?
ヨコタ:直接ではないんですけど。
ヤマサキ:あるDJが友達のバンドに言ってはあかんことを言ったんです。
── 自分がやられたわけではなくても、パンチするんですね。
ヨコタ:その話を聞いた時に、僕たちも「はぁ?」ってなったから。
オカザワ:言われたのが昔から知ってるバンドさんだったので。
ヤマサキ:まぁ、それを口実に僕は曲を作ってるだけですけど(笑)。
ヨコタ:誰にも頼まれてないからな(笑)。
ヤマサキ:おもしろい歌詞を書くにはインプットがいりますからね。『良いDJ』は、曲がなかなか思い浮かばない時にインプットがドーンって来て、これにしたれー! って。
ヨコタ:おいしいもん見つけたという状態ですよね(笑)。
ヤマサキ:エサや! エサやー! って。
── やっぱり書く対象っているんですね。
ヤマサキ:だいたいいます。
ヨコタ:それで自分の周りのことを書いていたとしても、結果的にみんなが共感してもらえたらOKなんです。ただ、共感を代弁するヤツみたいになっちゃうのは違うんです。
ソゴウ タイスケ(Dr):「ナニナニの曲作ってください」とか言われるけど。
ヤマサキ:「作ってください」って言われても、俺はそれに怒り感じてないしって。俺が今怒りを感じるのは、狭い道なのに猛スピードでチャリで走ってるヤツとか。東京は特にヤバイですよね。ちっちゃいことだけど、みんなイラついてることだと思うんです。そういうくだらんことを曲に出来たらなって思いますね。
カワクボ:もしこれからいろいろ大きいステージに出させてもらうことがあっても、目線という意味では変わらないと思います。