ART-SCHOOLが下北沢シェルターで9月、10月と10本のライブを敢行する『ART-SCHOOL presents SHELTER 10days』は、気鋭の若手バンドを中心に多彩なゲストを招く形式で繰り広げられる規格外のイベントだ。結成から13年、すでに一角のキャリアを積んだ中堅バンドがキャパシティ250人の小規模ライブハウスでこうしたイベントを主催する意図、そしてこのイベントと並行して目下制作中だという新作の方向性。それらが密に連なっていること、2人体制になってもなおバンド形態で在り続けようとする木下理樹(vo, g)と戸高賢史(g)の揺るぎない意志がそこに通底していることをこのインタビューから窺い知ることができるだろう。THE NOVEMBERSをゲストに迎えた4本目のライブのリハーサル前、シェルターのフロアで彼らに話を聞いた。(interview:椎名宗之)
バンドマンがしのぎを削る“現場”
──どういった経緯でシェルターで10本のライブをやろうと思い立ったんですか。
木下:事務所のボスから「シェルターでライブを10daysやったら面白いんじゃない?」と提案を受けたんですよ。前にもシェルターでこういう独自の企画をやったよね?
戸高:3、4年くらい前にマンスリー・ライブを半年かけてやったね。
木下:最初は「10日間連続で!?」と思って焦ったんだけど(笑)、ある程度の間隔を空けて10本やろうと。そこにLillies and Remainsやきのこ帝国といった自分たちの好きな若手のバンドを呼ぶなら面白そうだなと思って。同世代はフルカワユタカくらいですかね。ギターウルフはちょっと別格なんだけど。
──THE NOVEMBERSやきのこ帝国は以前から木下さんが好きだと公言しているのを聞いていたので納得だったんですが、ギターウルフや後藤まりこさんに声をかけるという振り幅の大きさが凄いなと思って。
木下:まりこちゃんはミドリの頃から親交があったんですよ。彼女がソロになってからもDJとしてイベントに誘ってもらったりして。
戸高:あと、共通の友人である仲俣(和宏)さんやマシータさんがまりこちゃんのサポート・メンバーをやっているんですよね。
──今日で4本目のライブですが、3回やってきて手応えは如何ですか。
戸高:毎回凄く楽しいんですけど、サポート・メンバーに昔の曲を覚えてもらうのがけっこう大変なんですよ(笑)。
木下:同じような曲を毎回やるわけにもいかないので1本ごとにコンセプトを作ってやってるんだけど、(中尾)憲太郎さんも(藤田)勇さんもとにかく忙しいですからね。その辺は切磋琢磨してます。
──コンセプトはどんな感じで決めているんですか。
戸高:今のところはなるべく対バンに寄せた選曲でやってますね。
木下:ギターウルフを相手に静かな曲ばかりやっても仕方ないので(笑)。
戸高:キュアーみたいな曲ばかりやってもね(笑)。
木下:まぁ、毎回楽しいのは確かですよ。今は新しい作品の制作を進行させながらやってるから、かなりタイトなスケジュールですけどね。
──ライブと並行してスタジオに入るのはよくあるケースなんですか。
戸高:そういうこともありましたけど、ここまでガッツリなのは初めてかもしれないです。
木下:もっと忙しい時もあったけれど、チケットを買って見に来てくれるお客さんにそういうのは関係のないことですから。それよりも、せっかくこういう面白い趣向のライブをやる以上は何かしら意味のあるものをお客さんに持ち帰ってもらいたいですね。
──10daysの会場をシェルターに選んだのはどんな理由で?
木下:やっぱり愛着のあるライブハウスなので。今はフィーバーをやってる西村(仁志)君がシェルターの店長をやってた頃から凄くお世話になっていたし、恩義を感じていると言うか。10daysをやるならフィーバーでも良かったのかもしれないけど、もっと空間がギュッと凝縮したような所でやりたかったんですよね。それに、下北沢でライブをやるならART-SCHOOLのカラーとしてはシェルター以外にないじゃないですか。
──数あるライブハウスの中で、シェルターに対してどんなイメージを抱いていますか。
戸高:毎日バンドマンたちがしのぎを削っている“現場”っていう感じですね。そこの入口の階段を降りると未だに気持ちが引き締まりますから。
木下:懐かしい場所ではあるかな。僕がバンドを始めた頃は、まずシェルターのオーディションを受けなきゃなっていう感じだったから。
──実際にオーディションを受けたんですか。
木下:いや。Queは昼のオーディションをART-SCHOOLで受けたんですよ。シェルターは何かのイベントに誘われたんですよね。それからちょいちょい出させてもらえるようになって、西村君たちスタッフとも仲良くなったんです。当時のシェルターはメロディックコアやハードコア、ガレージのハコっていう印象だったから客として見に行く機会はそんなになかったけど、アマチュアの頃から憧れのハコでしたよね。
──ART-SCHOOLのシェルターでのライブと言えば、個人的にはdownyとよく対バンしていた印象があるんですよね。今から10年以上前の話ですけど。
木下:確かにdownyとはよくやりましたね。楽屋ではお互いあまり喋らなかったけど(笑)。その中でベースの仲俣君はよく喋ってくれて、downyが活動休止した後は一緒にKARENを組んだりしたんですよ。
──ちなみに、シェルターみたいな雰囲気のライブハウスって大阪や大分にあります?
木下:大阪だったらファンダンゴかな。
戸高:昔のトップスはこんな感じでしたね、大分で言うと。柱があったんですけど、雰囲気は近いものがありました。