こんな時代だからこそ真っ直ぐなロックンロールを
──いい作品を作り続けていく以上、年々ハードルは上がる一方ですね。
KOZZY:望むところだよ。曲作りから演奏、ミックスやマスタリングに至るまで、厳しい環境の中で音楽を作るからこそみんなが楽しんでくれるものになる。少なくとも僕らはそう信じたい。ここ2、3年は、もっといろんな人たちに聴いて欲しいっていうポピュラリティの部分を意識しつつ、自分たちのやりたいことを加味してアルバムを作ってきたんだけど、今回の『狂騒天国』は多少一方通行になってもこっちが作りたいものを優先したつもりなんだよね。そのためには、「今までアルバムを買ってくれたから今度もまた買ってくれるだろう」っていう意識じゃダメなんだよ。そういうアーティストはいっぱいいるし、そこまでじゃないにしても、そう見えてしまう人たちが凄く多いでしょう? それじゃ買ってくれた人たちとの対話が成立しないし、あまりに面白くない。
──今回の『狂騒天国』はもう一度この3人だけでやりたいことを優先してやるという意味で、二度目のファースト・アルバムとも言えそうですね。
KOZZY:そういう側面はあるだろうね。まぁ、『〜ROCKA-ROLLA』を作った時も同じことを思ったんだけどさ。ここからやり直すんだという意味でね。『〜ROCKA-ROLLA』がひとつの大きな節目だったように、今回のアルバムも“『狂騒天国』以前、『狂騒天国』以後”という分岐点になるような作品だと思う。とは言え、僕らの場合は音の感触やアプローチに多少の差があるぐらいで、基本の軸から大幅に離れることはないけどね。
──マックショウのシンプルでストロング・スタイルのロックンロールはずっと不変であると。
KOZZY:やっぱり、こんな時代だからこそ真っ直ぐなロックンロールが必要なんだよ。それを最近強く感じるね。今回のレコーディング中も福島の第一原発から放射性物質で汚染された地下水が海へ流出しているなんてニュースを聞いたり、未だに被災地の復興が遅々として進まない現状を知るにつけ、暗澹たる気持ちになるよね。レコーディングの作業がぼちぼち全部終わるかって頃に北海道の『JOIN ALIVE』っていうフェスにマックショウで参加して、その翌日に岩手県の大槌町に出向いて、スリー・アミーゴスとして『おおつちありがとうロックフェスティバル』に参加したんだよ。今の大槌町は市街地のほとんどが津波の浸水区域で、未だに家や店を建てることができないし、鉄道も不通のままでね。でも、地元の人たちはだいぶ気持ちに整理がついていて、とても明るい。僕らが逆に励まされるようなところがあってさ。その中で僕らができることと言えば、人が楽しいと感じてもらえることを精一杯やる。そういうシンプルなことに尽きるんだよ。ライブをやることで少しでも役に立てているのを大槌町でも実感できたしね。こうして今もずっと音楽をやり続けていられること自体が幸せだし、だからこそみんなに喜んでもらえるような“どストライク”のロックンロールを作り出すことに大きな意味があるんだと思う。人を楽しませることをすべての基本にした上で、自分たちの納得する音を頑に作り続ける。それが僕らの変わらない在り方なんだよね。