今作ではメンバーそれぞれが作曲を担当
── 今作は、メンバーそれぞれが作曲を手掛けていますけど、『ニューオーリンズ殺人事件』の作曲者にサポートドラマーの武並さんの名前があったことに驚きました。
渡會:僕の一番お気に入りの曲で、今までのFoZZtoneには流れてない血だと思います。最初は武並さんに「『ニューオーリンズ殺人事件』という曲を書いてきてください」ってネタみたいな感じで言ったんです。そしたら本当に書いてきてくれたので、歌詞を書いてメロディーを付けたんです。武並さんはジャズとかも得意な方で、コード理論をわかってるんです。今までジャズコードはにわかの知識で使っていたんですけど、武並さんが本物のジャズコードを使ってきたので、これだけ元がしっかりしているなら、俺たちは何をやっても良いなというところもあったんです。
── 芯がしっかりしているし、色気を感じる曲ですよね。菅野さんの作った曲(『1983』)はストレートなロックサウンドという印象でした。
渡會:彼は安定のクオリティーというか、何をやらせてもフワッとしたものを持ってくるんです。しかも、そんなに伝え上手な人間じゃないんですけど、今回は「R.E.Mっぽい感じでやりたいんだよね」と言われて、まぁ、あの曲は全然そんなことないんですけど(笑)、そこから歌メロが決まり、「雑なギターをかぶせる感じで良いよね」って言ったら「そうそう」って言って、3テイクぐらいで録り終わりました。ひねらずに、レコーディングも練習を一切しない。もともと「なるべく練習しないでくれ」って言ったんです。3回以上やったらうまくなるから。
── 味が出なくなっちゃうと。
渡會:絶対に下手なほうがいいって。なんだかんだ上手い演奏にはなってますけど、そういう意味でアルバムの中で若さは保てているかなと思います。
── なんでタイトルは『1983』なんですか? 生まれた年ではないですよね。
渡會:村上春樹の『1Q84』みたいな、数字のタイトルってかっこいいなと思って。今年2013年だから10年前だと“2003”でちょっとかっこ悪いね。20年前だと“1993”。なんか『夏の日の1993』みたいだね。じゃあみんな30代だし、30年前にしようってことで『1983』。生まれた年でもないですし、なんにもひっかかってないんです(苦笑)。
── 今回メンバーそれぞれ作曲を手掛けてますが、作詞は全部渡會さんですよね。歌詞は曲が出来てから付けるんですか?
渡會:自分で作った曲以外、歌詞は全部後で付けます。
── みなさんにこういう曲が欲しいということは伝えるんですか? それともそれぞれが持ってきた中から選んでいくんですか?
渡會:FoZZtoneがはっきりしているのは、竹尾にこんな曲でとお願いしてもあまり聞いてくれないんです。だから、先に何でも良いから作ってくれって。デカイ感じの曲とか速い感じの曲とか、ひとつの単語で説明出来るオーダーはしますけど、それでも一切無視してくるところもあるので、あまり気にしてないですね。プリプロに入る前の普段のスタジオの中でそういうやりとりはしておいて、あがってきた中で選んでいって、同時進行で自分の曲を作っていきました。竹尾が作った曲に激しいものが多かったら、ゆっくりなのを何曲か作ろうということはいつも話しているんですけど、早い段階で竹尾が『BABY CALL ME NOW』というバラードを作ったので、僕は基本テンポを気にせず作って、キャノンと武並さんにはこんな感じの曲というお願いをして。武並さんはそれに120%応えてくれますが、キャノンは応えられる時と応えられない時があるんです。最初『1983』はパフュームの『チョコレイト・ディスコ』みたいな曲でと言ったんですけど、出来上がったら全然違いました(笑)。
── そうですね。ちょっとリンクしなかったです(笑)。今話に出た『BABY CALL ME NOW』はジンワリと胸に染みる曲というか。
渡會:ジェフ・ベック&ロッド・スチュワートの『People get ready』を感じさせる曲になりましたね。ギターがサビみたいな曲にしようというイメージは最初からあったんです。でも、この曲こそもしかしたら10年前はやらなかったかもしれないですね。シンプルな構成で歌とギターが主張しているので、自信がないと出来ないというか。竹尾は、スローな曲をライブでは楽しそうに弾きますけど、レコーディングは躊躇するんです。それでこれまでレコーディングしなかったという曲は何曲かあります。