昨年、新宿ロフトで開催された"sleepy.ab 〜新譜録音経過報告行脚〜"でお披露目された数々の新曲がようやく新作『neuron』となって、私達の手元に届けられた。
メンバー脱退、制作ストップ、バンドの存続の危機等の様々な苦悩を乗り越え生まれた本作品は、今までにない確かな自信と手応えを感じているという。そんな彼らの意気込みに是非触れて欲しい。(新宿ロフト:樋口寛子)
今まで出してきた作品の中でも、凄く自信を持てるようになったものが作れた
── 遂に新譜『neuron』が発売されましたね。私が初めて聴いたのは昨年11月に開催した“新譜録音経過報告行脚”ツアーが始まる前でした。
成山:樋口さんはかなり初めの頃に聴いてもらいましたね。
── 『neuron』を人前で初めて演奏したのは、その時になるんですか?
成山:そうですね。メンバーも新しいメンバーで初お披露目でしたし、緊張しましたね(笑)。
── あのツアーの初日は新宿ロフトでしたね。あの日のお客さんの反響はどうでしたか?
成山:あの時はお客さんも複雑な心境を抱えて見ている方もいたし、僕たちもそうだったし。強ばった顔をしていた印象がありますね。でも、演奏が進んでいくほど、どんどん顔の表情が柔らかくなってきた印象がありました
── ステージ上からよく見ていますね(笑)。
成山:割と冷静ですよ。ステージ上では(笑)。
── 昨年の“新譜録音経過報告行脚”ツアーのあり方は凄い良いなと思いました。
成山:今回のアルバムはそういった意味で手応えがありました。新曲がツアーに間に合った事もあり、『neuron』から4〜5曲は演奏する事が出来たし、聴いてくれるお客さんにも「こういうアルバムなんだな」と聴かせる事が出来ました。ライブでの手応えを感じられたし、今回凄い良いのかもと思いましたね。
── 音源を頂いてから本当に良く聴かせてもらっています。制作時間はじっくりと掛けた感じだったのですか?
田中:制作的には長かったよね。
成山:何回かレコーディングも飛ばしたしね。その間にメンバーの脱退もあったりしてたので。
田中:『アンドロメダ』をシングルで出した時に録ったのが『darkness』、『アンドロメダ』、『Lost』、『lump』、『torus』でした。そこから1年ぐらい、1回目のレコーディグから空いてしまったんです。
成山:脱退もありつつ、制作的にもストップさせて、バンド自体の存続を考えました。ずっと4人で10年近くやってきた事もあったので、続けられるかどうか含めて。制作もその頃辺りからスピードが落ちていて、行き詰まっていたしね。
── 苦難を乗り越えてリリースを迎えた今の心境はどんな感じですか?
山内:レコーディングが1年間空いたりして、sleepy.abはどう進んでいったら良いのかを沢山考えた答えが今回のアルバムだと思っているので、今まで出してきた作品の中でも、凄く自信を持てるものが作れたなと思っています。
成山:話し合いながら作っているのですが、山内に「最近ギターが面白くないよ」と言ったこともありましたね。彼はプロデューサー業の方に熱心になってきてるふしがでてきて(笑)。例えば『Mother Goose』だったりがそうですけど、割と大人しい印象なんですよね。だけど、山内のギターもsleepy.abの良さだったりするので、ちょっとイカレた感じが欲しいなという事もあって。それに対して、山内は言葉では言わないんですけど、自分のメロディを作って、歌って、エフェクターもかけまくって、「もしかしたら歌う気か?」と思える位のヤル気を見せてきて(笑)。自分もその上に付け足して、山内が作ってきた『euphoria』とか『undo』は完全に山内のメロディで、『Lost』は2人で分けて作ったりして。
山内:その作業が大きかったですね。誰がどのパートを作ったとかって実際に聴く人は関係なくて、良いものは良いに決まっているんです。でも、いつの間にか役割が分担されていたりしたんですけど、今回はそういうのがどんどんと無くなって健全になりましたね。
成山:自由になりました。脱退はマイナスナイメージがあると思うけど、プラスに変えるしかないんです。ずっと4人にこだわってやってきたけど、3人になった事で何でもやって良いかっていう(笑)。だから、当時、1年後のレコーディングは、バンドサウンドというものに決め込まずに制作してきました。
── 今までの旧譜も新譜も北海道で録音していたのですか?
成山:ボーカル以外は。ボーカルだけ東京で録りますね
── 北海道と東京では、録音する時の音も変わりそうですね。
成山:湿度がないし、ドラムの音が1番関係あるとエンジニアさんが言っていました。札幌は、イギリスとかに近い音になると思います。
── 同じ日本でも全然違うんですね。
成山:湿度は全然違いますね。梅雨がないし。
── また『neuron』で「脳内宇宙」をアプローチしたきっかけはなんだったのですか?
成山:元々『アンドロメダ』という曲が出来て、歌詞にある「アンドロメダみたい」という言葉が降って来た時に「宇宙」のイメージが浮かんできたんです。でも、「宇宙」をテーマにというよりは、「宇宙」という言葉が大きく広い意味を持っていると思ったので、何やってきても「宇宙だね」と言うようになって(笑)。あの言葉があったから、どんどんアルバムのイメージが広がってきて。
── 資料のライナーノーツを見ていると、「宇宙」というワードが沢山出てきていますね。
成山:宇宙の図鑑をよく見るようになって。それにアンドロメダ星雲の図が、脳の神経細胞の写真が全く同じで、これは面白い! とロマンみたいなのを感じたんです。そこで「人間の中に宇宙があるよ」って盛り上がって。そこで脳内宇宙という言葉が生まれて、それに繋いだ言葉が、和訳すると“神経細胞”という意味の『neuron』なんです。
── 深いですね。
成山:深そうで浅いのかもしれませんけど(苦笑)。それがうまくリンクして、「宇宙」という言葉から「脳内宇宙」という言葉がハマり、魂が入っていったんです。
── アレンジも「宇宙」のイメージからどんどん広がっていったという。
成山:イメージしやすかったですよね。「宇宙」と言っても1作目からそういった節はあると思うんですけど、そこに特化した感じですね。
山内:まとまる感じがするというか。