2012年、ライブハウス界隈でジワジワと盛り上がりを見せているSAKANAMONが、満を持して12月5日に1st.フルアルバム『na』でメジャーデビューを果たす。「"na"(菜)は、おかず、肴、という意味を表す言葉」で、聴く者の日常を彩るスパイスになるはずだ。
世の中を斜めから見たような独特の歌詞の世界観と、中毒性のあるポップなサウンド、そして何が起こるか予測不可能なライブ。一度彼らにハマってしまったら、なかなか抜け出せない。10月26日に新宿ロフトで開催した自主企画"肴者世界"は、予想を裏切り(!!)見事ソールドアウトを叩き出し、今後が期待されるバンドだ。
今回はメジャー1st.フルアルバム『na』の話を中心に、メンバー3人にお話を聞いた。(interview:樋口寛子/新宿ロフト+やまだともこ)
多くの転機があって今に至る
── 今回はメジャーデビューおめでとうございます。実感としてはどうですか?
藤森元生(Vo/Gt):実感はあまりないです!
── レコーディングする環境が今までと変わったとかは?
森野光晴(Ba):それが全然変わってないんです。スタジオもエンジニアの方も今までと一緒で。インタビューの本数が増えたり、関わってくれる人数が増えたので、そういう面では違うなと思いますが、制作自体はそんなに変わった気はしないですね。
── メジャーデビューは、ひとつの目標ではあったんですか?
森野:デビューするぞ! という感じでもなかったんですけど、1人でも多くの人に聴いてもらいたいという思いがずっとあったので、それがよりわかりやすい形になったかなと思います。
── 2009年に今のメンバーになって3年が経ちましたが、最初は「楽しい」というところからバンドを始め、いつぐらいから真剣にやっていこうという意識になっていったんですか?
森野:何回かあるんですけど。最初にバンドを組んで1年ぐらいは学生ノリでやっていたんです。それで、2009年ぐらいに「プロを目指して本気でバンドをやろう」という話をして、それなら辞めるって前のドラムが辞めて、きむさん(木村浩大)が入った時が最初に意識が変わったタイミングでしたね。そこからが長くて。なかなかお客さんが増えないし、どうしたらお客さんが入るのかもわからないし、声をかけてくれたレーベルとはうまくいかず、どうしようかなというのが2〜3年続いて、けっこうやさぐれてました(笑)。ロフトに初めて出たのもこの頃でしたね。その後、今の事務所に声をかけてもらい、CDを出せるってなったのが第2回目の変わったタイミングです。シフトがもう一段上がったというか。やっぱりCDを出せるということが大きかった。CDを出したら聴いてくれるお客さんがちょっとずつ増えてきて、少しずつライブの動員も増えたんです。それで、意識が変わっていったんじゃないかと思っています。まだ昨年の9月とかの話ですけど。
木村浩大(Dr):僕はSAKANAMONに誘ってもらった時に、これが仕事になればいいなとはずっと思ってました。インディーズでCDをリリースして、バンドでやっていくってこんなに大変なんだなっていうのを感じたし、これをずっと継続させるってすごいなって思いましたけど。僕は加入した時と、CDリリースの時の2回きっかけがありました。
藤森:僕はその辺に関して、特に思ってないかもしれないです。自分の音楽をたくさんの人に聴いて欲しいという思いで動いているだけで、それが叶って嬉しいなという状態がずっと続いてます。
── 2人が引っぱってくれてるのかもしれませんね。
藤森:うーん…。
森野:…なかったらないでいいよ。
藤森:いやあるんだけど…。
森野:そういうことをあまり器用に考えられるタイプでもないので。だからこういう曲が作れるというのも、よく言えばあって(笑)。藤森くんが気持ちよく曲を作れるようにするのが、僕らの仕事なのかなと思ってます。
── 今回のジャケットの写真は、ギアを入れる感じをイメージ出来なくもないですよね。
森野:藤森くんの希望としては、抽象的で一見しただけでは意味がわからないような感じで、その中にポップさとか、ロックバンドらしさを出したいと。その融合地点はどこなのかという話をして、デザイナーさんが作ってくれたんです。
── このジャケットには仕掛けがあると聞いてますが。
森野:そうなんです。
藤森:ろくな仕掛けじゃないですけど(笑)、僕は好きです。
── どんな仕掛けかは、買った人だけのお楽しみですね。ところでメジャーデビュー1発目の作品で『na』とは、とてもインパクトあるタイトルを付けましたね。
森野:今まではアルバムのタイトルが『浮遊ギミック』とか『泡沫ノンフィクション』と、漢字とカタカナの組み合わせだったけれど、それをやめようという話は前々からしていたんです。『na』は、おかずや肴という意味もありますけど、1st.アルバムのタイトルに『na』ってつけるバンドはあまりいないんじゃないかなって。
藤森:あと、お客さんがいいこと言ってたよね。
森野:SAKANAMONという文字の中心が“na”だから、SAKANAMONの中心にあるアルバムだって。
木村:ものすごい深読みしてくれてます(笑)。
森野:けっこうさらっと決まったんですよ。
藤森:話し合いはもうこりごりだったし(苦笑)。
森野:今回『マジックアワー』も曲名に悩んだし、インディーズの時の作品もタイトルや曲順で相当悩みましたから。